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企業の不祥事が連日のように報道されており、コンプライアンスという言葉の重要性が高まっている現状にあるといえます。
「コンプライアンスって法律を守ることでしょ、うちの会社は大丈夫」と思っていても、その基盤は意外と脆いかもしれません。
なぜなら、コンプライアンスは単に法令を守るだけでなく、社内規則や社会の倫理観を含めた、より広い価値観を守るための概念だからです。
そこで今回は、コンプライアンスを構成する法令・社内規則・倫理観の3原則を遵守するための、実践的なガイドを提供いたします。
3原則の解説の前提として、なぜコンプライアンス遵守は難しいのか、コンプライアンスが機能しない根本原因を探っていきます。
コンプライアンスが機能しない原因の一つとして、管理職や社員の当事者意識が欠如していることが挙げられます。
法令や社内規則を遵守する重要性について、企業を構成する個々人が自分ごととして捉えていないことが、コンプライアンス違反を生む要因になっているのです。
コンプライアンスが適切に機能しない原因の一つとして、経営層と現場の意識の乖離が考えられます。
経営層が現場の状況を十分に把握しておらず、実態に即さない方針に基づいて経営を行ってしまうと、コンプライアンスに違反するリスクが増大します。
逆に、経営層がコンプライアンスを重視したとしても、現場の社員がコンプライアンスについてきちんと理解していなければ、同じく違反に繋がる可能性が高まるのです。コンプライアンスが機能しない原因として、短期的な利益を優先してしまう企業風土があります。
コンプライアンスを推進することは、企業にとっては必ずしも短期的な利益に直結するものではありません。
しかし、短期的な利益の回収を優先し、コンプライアンスに関する取り組みを後回しにしてしまうと、重大なコンプライアンス違反が発生して大打撃を受けるリスクがあるのです。
コンプライアンスの全体像を正しく理解するための視点として、コンプライアンスの3原則について解説します。
コンプライアンスは一般に法令遵守と訳されますが、単に法律や条例を守るだけでなく、より広い意味を持った概念である点がポイントです。
企業が自ら定めた社内規則や、社会通念としての倫理観を遵守することも、コンプライアンスに含まれます。
要約すると、コンプライアンスは法令・社内規則・倫理観の3つを遵守することといえるでしょう。
そしてこれらの3つの概念は、一般にコンプライアンスの3原則と呼ばれます。
コンプライアンスの3原則である法令・社内規則・倫理観は、それぞれ独立したものではなく、相互に関連する関係にあります。
たとえば、パワハラは相手の尊厳を踏みにじる点において、倫理観に反する行為といえます。
しかし、パワハラは単に倫理観に反するだけでなく、場合によっては社内規則や法令にも違反する場合があります。
ハラスメントを防止する社内規定がある場合、パワハラは倫理観だけでなく社内規則にも反します。
そして、職場での度重なるパワハラによって社員が体調を崩して入院した場合などは、労働契約法等の法令に違反する行為にもなるのです。
法令:社会全体で共通に守るべき最低限のルール
社内規則:企業が独自に定めた行動基準
倫理観:社会通念や人としての正しさに基づく判断
コンプライアンスの3原則について、具体例と対策とともに解説します。
コンプライアンス3原則の①は、国が定める法律や地方自治体が定める条例など、法令を遵守することです。
具体例としては、労働基準法が禁止する違法な長時間労働を防止する、個人情報保護法に基づいて情報漏洩が行われないようにする、下請法が禁止する不当な買いたたきをしないなどがあります。
法令遵守のための具体的な対策としては、以下の方法が考えられます。
コンプライアンス3原則の②は、就業規則や各種規定など、企業が自社で定めたルールを遵守することです。
具体的には、経費精算規定を遵守して不正請求を防止する、情報セキュリティに関する規定に基づいて情報の持ち出しを防ぐ、服務規程を徹底して不当な副業を禁止するなどです。
社内規則遵守を徹底するためのポイントは、以下の通りです。
コンプライアンス3原則の③は、企業倫理や社会規範など、社会における共通的なルールを遵守することです。
法律や規則にはなくとも、企業や従業員は社会の一員として、社会規範に則った常識的・良識的な行動が期待されます。
そしてそれらを遵守することが、企業が社会からの信頼を獲得することにつながるのです。
具体的には、各種ハラスメント・SNS等での不適切な発言・過剰な接待などは、企業倫理や社会規範に反する行為といえます。
これらを防止するためには、企業理念や行動規範を全社員に浸透させること、経営トップが自らの言葉でメッセージを発信すること、内部通報制度の構築などが重要です。
コンプライアンスの3原則を効果的に組織に根付かせるための実践ロードマップとして、管理部門が明日から取り組める4ステップを解説します。
コンプライアンスを組織に根付かせる最初のステップは、経営者がトップメッセージを発信することです。
企業の経営トップがコンプライアンスの重要性を認識したうえで、それを自らの言葉で表現して発信することで、社員がコンプライアンスを自分ごととして捉えるようになります。
次に、コンプライアンスを効率よく推進するための体制を構築することが重要です。
推進体制を構築するための具体的なポイントは、以下の通りです。
次のステップは、コンプライアンスについての規定・マニュアルを整備したうえで、それを全社に周知徹底することです。
まず、コンプライアンスに関する会社の理念や方針を策定したうえで、それを具体的な行動指針としての規定やマニュアルに落とし込みます。
マニュアルを作成する際のポイントは、読者の理解を助けるために、具体的な事例を提示したり、違反防止のためのチェックリストを作成したりすることです。
規定・マニュアルを作成したら、イントラネットや社内報などを活用しつつ、全社への周知徹底を行いましょう。
次に、経営層・管理職・一般社員など、階層別のコンプライアンス研修の計画と実施を行います。
それぞれの階層の役割や責任を踏まえた研修を実施することで、コンプライアンスに対する根本的な理解を深めるためです。
階層別の研修の基本的なポイントは、以下の通りです。
経営層:コンプライアンスに沿った経営の重要性に焦点を当てる
管理職:リスク管理と部下への指導をどのように行うかに焦点を当てる
一般社員:法令・社内規定・職務倫理の遵守に焦点を当てる
コンプライアンスの相談・通報窓口とは、企業で行われたコンプライアンス違反について、社員が相談や通報を行える窓口です。
企業内で通報できる仕組みを整えることで、コンプライアンスに反する行為の早期発見や、効果的な再発防止につながります。
モニタリング(内部監査)とは、相談・通報窓口が適切に機能しているかを確認したり、通報内容にきちんと対応しているかを評価したりする仕組みです。
モニタリングの仕組みを整えることで、窓口の形骸化を防止できるだけでなく、コンプライアンスへの取り組みに実効性を持たせることができます。
コンプライアンスに関するよくある質問について回答します。
この部署がコンプライアンスを担当しなければならないという決まりはありませんが、法的知識が不可欠なことから、法務部が担当するのが一般的です。
企業規模が大きい場合に経営トップ直下の独立部署を設置したり、規模が小さいために総務や経理が担当したりなどのケースもあります。
中小企業がコンプライアンスを始めるにあたっては、ハラスメント対策・情報漏洩の防止・就業規則の整備など、具体性の高い作業から開始するのがおすすめです。
上記を具体的な規則やマニュアルに落とし込んだうえで、従業員への周知徹底や、内部通報制度の構築に着手します。
両者の関係を一言で表すと、ハラスメントはコンプライアンス違反の一種であるといえます。
コンプライアンス違反とは、要するに法令・社内規範・社会規範等に違反する行為です。
そしてハラスメント行為は一般に、法令・社内規範、社会規範等に反します。
以上の関係から、ハラスメントはコンプライアンス違反の一種といえるのです。
コンプライアンスについて従業員の意識を高める研修方法としては、実際にあったコンプライアンスの違反事例を盛り込むことが考えられます。
具体例を用いて研修をすることで、臨場感と危機感が生まれ、社員が自分事としてコンプライアンスを捉えやすくなるからです。
また、研修の内容としてグループディスカッションを盛り込んだり、研修の最後に理解度テストを行ったりすることで、コンプライアンスに対する社員の理解度を高めることができます。
コンプライアンスを遵守しなかった場合、企業にとっては法令違反や信用の失墜など、大きなリスクを負うことになります。
逆に、コンプライアンスを遵守するための効果的な体制を構築することができれば、顧客や社会からの信頼を獲得して、企業価値を高める大きなチャンスにもなり得ます。
よって、コンプライアンスの3原則を遵守することは、企業にとって単なる守りのリスク回避ではなく、企業の持続的な成長を支えるための、攻めの経営基盤であるといえるでしょう。
コンプライアンス遵守の体制を構築するには、管理部門がその中核を担ったうえで、効果的な制度と、その制度をきちんと守る心の両輪によって、取り組みを推進していくことが重要です。
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