【税理士執筆】税務調査で指摘されやすいポイントと対応策を経理向けに解説

税務調査は、企業の税務申告の正確性を確認するために税務署が実施する重要なプロセスです。経理担当者にとっては、税務調査に備え、適切な帳簿管理や経理処理を行うことが求められます。

しかし、税務調査では思わぬ点が指摘されることがあり、事前の準備が不十分な場合、追徴課税のリスクも高まります。特に、交際費や仮払金、役員報酬などの経理処理が不適切と判断されるケースが多く、細心の注意が必要です。また、調査時の対応によっては、企業の信用にも影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、税務調査の基本や企業が求められる対応、指摘されやすい経理処理、事前の対策方法について詳しく解説します。税務調査への対応力を高め、企業の税務リスクを最小限に抑え、健全な経営を実現しましょう。

▼代表プロフィール

末松 和真（すえまつ かずま）

税理士法人FLAGS
代表社員・税理士・ (株)FLAGSホールディングス 代表取締役

税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。

税務調査の基本と企業が求められる対応

税務調査は、税務署が企業の税務申告の正確性を確認するために行うもので、通常「任意調査」として実施されます。調査では、帳簿や証憑の確認、取引の実態調査、経営者や経理担当者へのヒアリングが行われます。

企業が求められる対応

税務調査において、企業の対応次第で調査結果が変わることもあるため、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

1. 帳簿・証憑の整理
過去数年分の帳簿や請求書、領収書、契約書を適切に整理・保存し、求められた際にスムーズに提出できるようにしておきます。特に、交際費や仮払金、役員報酬に関する証憑は整備が必要です。

2. 適正な経理処理の実施
交際費と広告宣伝費の区別が曖昧だったり、長期間未精算の仮払金が残っていたりすると指摘を受けやすくなります。日頃から経理処理を見直し、税務上適正な処理を行いましょう。

3. 調査対応マニュアルの整備
経理担当者が調査時の対応方法を理解し、適切に説明できるように、事前に対応マニュアルを作成しておくと安心です。調査官の質問に対する回答方針や提出する資料の範囲を明確にしておきましょう。

4. 税理士との連携
調査前に税理士と連携し、問題点を洗い出しておくことで、指摘リスクを軽減できます。また、調査当日は税理士が同席することで、専門的な質問にも適切に対応でき、企業の負担を軽減できます。

税務調査は企業にとって避けられないものですが、日頃から適切な経理処理を行い、事前準備を整えることで、調査時の負担を軽減し、税務リスクを最小限に抑えることが可能です。

税務調査が入りやすい企業の特徴とリスク要因

税務調査の対象になりやすい企業には、共通する特徴があります。税務署は、申告内容に不審な点がある企業や、不適切な経理処理の可能性がある企業を重点的に調査する傾向があります。以下、特に注意すべきポイントを紹介します。

1. 売上や利益が急増している企業
売上や利益が急激に増加すると、申告漏れや経理ミスの可能性が疑われます。特に、前年と比較して大幅な増減がある場合、売上計上の適正性や経費の過剰計上がないか確認されやすくなります。

2. 現金取引の多い業種
飲食業、小売業、建設業などは、売上除外や経費の水増しリスクが高いため、調査対象になりやすいです。現金管理が不透明になりやすいため、正確な帳簿管理が求められます。

3. 交際費・役員報酬が高額な企業
交際費や役員報酬が高額な場合、それが適正に計上されているかを税務署が重点的にチェックします。個人的な支出を交際費としたり、事前確定届出給与の適用漏れがあると、指摘を受ける可能性が高まります。

4. 申告内容に不整合がある企業
前年と比べて売上や経費の変動が不自然な場合、税務署の関心を引きやすくなります。例えば、売上が増えているのに利益率が大幅に低下していると、経費の過剰計上を疑われることがあります。

5. 過去に税務調査で指摘を受けた企業
過去の税務調査で問題を指摘された企業は、再調査の対象になりやすいです。税務署は一度問題があった企業を継続的に監視し、適正な申告が行われているか確認します。

これらのリスク要因を理解し、適切な経理処理を行うことが重要です。特に、帳簿の整理、証憑の保存、申告内容の整合性チェックを徹底し、税務リスクを最小限に抑えましょう。

指摘されやすい経理処理（交際費・仮払金・役員報酬）

税務調査では、特に交際費・仮払金・役員報酬の経理処理が厳しくチェックされます。これらの処理に不備があると、損金不算入や修正申告を求められる可能性があるため、適切な対応が必要です。

1. 交際費
交際費と広告宣伝費の区別が曖昧な場合、税務調査で指摘されやすくなります。例えば、顧客向けの贈答品や接待費が広告宣伝費ではなく交際費とみなされると、損金算入の制限を受けることになります。さらに、社内の飲食費でも、福利厚生費として認められるものと交際費に該当するものの判別が必要です。また、取引先との会食費用については、領収書や参加者の記録が不十分だと否認される可能性があるため、適切な管理を行いましょう。

2. 仮払金
仮払金は一定期間内に精算されることが原則ですが、長期間未精算の状態が続くと、私的流用の疑いを持たれたり、経費計上ミスを指摘されたりすることがあります。特に、従業員や役員の個人的な支出が仮払金として処理されている場合、税務署の調査対象になりやすいです。これを防ぐために、精算ルールを定め、定期的に仮払金の状況をチェックすることが重要です。

3. 役員報酬
役員報酬の取り扱いには厳格なルールがあり、特に「事前確定届出給与」の適用漏れが問題視されます。届出をせずに賞与を支給すると、損金算入が認められず、法人税の負担が増える可能性があります。また、役員報酬の増減には株主総会や取締役会の承認が必要であり、議事録が適切に作成されていないと指摘を受けることがあります。

さらに、役員賞与は原則として損金不算入であるため、支給方法には十分注意が必要です。
これらの経理処理は税務調査で特に注目されるため、日頃から証憑整理や社内規程の見直しを行い、適正な管理体制を整えることが重要です。経理担当者は、常に適切な処理を心がけ、税務リスクを最小限に抑えましょう。

税務調査前に見直すべき帳簿・証憑の整理方法

税務調査に備え、以下のポイントをチェックし、帳簿や証憑を整理しましょう。

1. 領収書・請求書の整理：発行者名・日付・金額を確認し、適切にファイリング。
2. 取引記録の整備：売上・仕入・経費の記録が正確か確認。
3. 銀行取引との整合性：通帳記録と帳簿の記載が一致しているかチェック。
4. 内部監査の実施：定期的に帳簿を確認し、不備を防ぐ。
これにより、税務調査時のリスクを低減できます。

税務調査時の経理担当者の対応ポイントと適切な説明の仕方

税務調査では、経理担当者の対応が調査結果に大きく影響します。不要な指摘を避けるため、以下を意識しましょう。

1. 冷静な対応
調査官の質問には冷静に対応し、聞かれたことに的確に答えましょう。曖昧な回答は避け、事実に基づいて簡潔に説明することが重要です。

2. 正確な説明
経理処理の妥当性や取引の実態を正確に伝え、不明点は「確認後に回答します」と伝えましょう。取引の背景や経理処理の理由を整理しておくとスムーズです。

3. 不要な情報提供を避ける
求められた資料のみを提出し、関係のない情報を提供しないよう注意が必要です。不用意な資料提出は、新たな指摘を招く恐れがあります。

4. 税理士との連携
税務の専門家である税理士と事前に打ち合わせを行い、調査官への説明内容を整理しておきましょう。調査当日は税理士が同席することで、負担が軽減されます。

5. 証憑や帳簿の整備
調査では、交際費・仮払金・役員報酬など指摘されやすい項目の証憑が求められます。整理を徹底し、説明できる状態にしておきましょう。

適切な対応を心がけることで、税務調査の負担を軽減し、税務リスクを最小限に抑えることができます。日頃から税理士と連携し、正確な経理処理を行いましょう。

まとめ

税務調査は企業の経理業務において避けて通れないものですが、適切な準備と対応によってリスクを最小限に抑えることが可能です。税務調査が入りやすい企業の特徴や指摘されやすい経理処理を理解し、事前に帳簿や証憑を整理することが重要です。

特に、売上や経費の計上、交際費や仮払金の管理、役員報酬の適正性など、指摘を受けやすいポイントを把握し、適切に対応することが求められます。

また、税務調査時の経理担当者の対応次第で調査の結果が大きく左右されるため、冷静かつ正確な説明を心がけることが大切です。税理士と連携し、日頃から適切な経理処理を行うことで、税務リスクを回避し、企業の健全な経営を維持しましょう。

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