詳細はこちら
サービスロゴ

もらえる!

Present!

カスハラ法案が国会提出!企業のカスハラ対策は必須の時代に!

公開日2025/05/07 更新日2025/05/02 ブックマーク数
1

カスハラ法案が国会提出!企業のカスハラ対策は必須の時代に!

小野 純様

▼この記事の筆者

小野 純

社会保険労務士法人ソリューション
特定社会保険労務士

一部上場企業退社後、社労士資格取得。2003年社会保険労務士小野事務所を開業。2007年に上位資格である特定社会保険労務士の資格を取得し、個別労働紛争解決業務対応事務所となる。2017年法人化。
 企業顧問として「社員研修」「就業規則」「労働・社会保険手続」「労務相談」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開。近年ではブレイン社より社労士向け研修用DVDも多数発売されている他、民間資格である「雇用クリーンプランナー」顧問としてYouTube動画多数 https://www.youtube.com/@koyou-clean

(1)カスハラの定義と職場に与える影響

 カスハラとはカスタマーハラスメントの略で、厚生労働省では下記のように【顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)】とされています。

(参考)令和元年6月、労働施策総合推進法等の改正で「職場におけるパワハラ防止のための事業主の措置」を踏まえた、令和2年「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が策定。この中で【顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)】に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取組を行うことが有効である旨が定められました。つまり、もともとはパワハラ防止が会社に義務付けられた際、併せて「カスハラの防止も望ましい」とされました。

 上記のようにカスハラについては以前から問題視されていたわけですが、本国会では「カスハラ問題についての国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化」する旨の法案が提出されている他、令和7年4月1日では東京都をはじめとした自治体における「カスハラ防止条例」が施行されるなど、企業におけるカスハラ対策は待ったなしの状態になっています。

カスハラの定義について国の指針では【顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為】とされ、【雇用する労働者が就業環境を害されることがないように】とされています。
この「著しい迷惑行為」について東京都の条令では、「刑法等に基づき処罰される可能性や、民法に基づき損害賠償を請求される可能性がある」とされていますので、「行き過ぎた迷惑行為自体がカスハラでNG」と理解すべきでしょう。

カスハラについて整理すると

1. クレーム内容にそもそも妥当性がない
2. 妥当性はあるが行き過ぎた要求がある
3. 妥当性の有無に関わらず暴行・脅迫等行き過ぎた迷惑行為がある

といったものが考えられます。
 このようにカスハラについての定義づけが進められる一方で、会社はそれを受ける職場への悪影響も考慮する必要性があります。

図1 過去3年間のハラスメント相談件数の傾向(ハラスメントの種類別)

過去3年間のハラスメント相談件数の傾向

 上記は約5年前の調査結果ですが、カスハラはパワハラ、セクハラ、に続き3番目に多いという結果になっています。
このようなハラスメントは従業員の離職増加につながりますので、会社が対策を立てなければ労働力不足にますます拍車をかけることになります。

また、これらの従業員が顧客等に対応するためにはかなりの時間を要している例が多いため、その時間分の人件費は会社が負うことになるほか、商品の交換や慰謝料の対応など、会社の金銭的な負担も見逃せません。

 このようにカスハラ対策は会社における喫緊の対策課題となりつつあります。

(2)会社には何が求められるのか

 前段のように、会社は法的にも労務管理的にもカスハラ対策が必要となっているわけですが、このカスハラは他のハラスメントとは異なる問題を2つ抱えています。
1つは、企業や業界によって「カスハラとは何なのか」という定義や基準自体が異なってくるという事情と、もう1つは相手が「顧客等」であるということです。

 前者について例えば一般的なカスハラについてのイメージといえば、商店で購入した商品に瑕疵がないにもかかわらずクレームで新品交換を要求したり、レストランで接客態度が不満で過度な謝罪や値引きを強要したり、といったイメージを持つ方も多いことと思いますが、一般的な事務系の事業所ではクレームの内容も要求も全く異なることになるはずです。
また、後者について相手は顧客等ですから、少しでも対応を間違えると顧客ではなくなってしまう可能性も十分にあります。

 このような対策として小職が最初にお勧めしているのが「自社におけるカスハラの明確化」についてです。
カスハラは業種・業態によって対象が異なるはずですので、「まずは話し合って自社におけるカスハラを決めましょう」

対策①カスハラの明確化

<業種別による想定例(あくまで筆者イメージです)>

交通インフラ(バス、電車、タクシー等)での想定例
・定刻通りに来なかった
・遅れたせいで予定に間に合わなかった(金銭要求等)
・ドライバー・車掌の態度(不愛想)や対応に不平・不満・改善を要求
・忘れ物をしたが出てこないのは管理不足
・乗り心地が悪い、混雑しすぎている
・始発が遅い、最終が早すぎる
・車いすが使えない
・車両が古い、バリアフリーにしろ…

医療機関での想定例
・待ち時間が長かったせいで症状が悪化した
・病気やけがの治りが遅いのを医療機関のせいだ
・医療制度や負担額への不満をぶつける
・医師の態度が大きすぎる
・看護師の対応(注射、点滴、薬剤塗布、等)が悪い
・過度な効力や不要と思われる薬剤支給を強く要求
・診察も受けずに薬剤の支給のみ強く要求
・医師や看護師の態度が高圧的で質問ができない
・HPと実際が違いすぎている…

ITでの想定例
・納期の無理な前倒し
・度重なる仕様変更
・仕様変更でも契約金額の値上げは認めない
・(納品後の)値下げ要求
・納品後に変更要求
・技術者の態度や対応に不平・不満・改善を要求
・一度納品したにも関わらず(使わないので)返金要求
・製造中止後の再生産指示
・代替部品でのコストダウン要求
・保証期間終了後の無償修理要求
・休日出勤の強要…

 上記のようにカスハラは業種業態で大きく異なることがご理解いただけることと思います。

対策②顧客等の対応

 顧客ですので、正しい対応を心掛ける必要はありますが、基準もなく安易にそれを聞き入れてしまうことは、後々問題になることも多々あります。
また、対応を共通化しておかないと「Aさんは対応してくれたのにBさんは対応してくれなかった」など不信感を抱かれることにもなりかねません。
そうならないためには後段の「カスハラ対応マニュアル」を社内で整備しておくのも有効です。

(3)カスハラ対策を成功させるコツ

 カスハラ対策を成功させるためには、あらかじめ下記のような事前準備をした上で、体系立てていくと良いでしょう。

<事前準備例>
A カスハラ防止のTOP宣言
B 自社におけるカスハラ明確化(2)で実施済み
C 相談体制の構築(相談窓口の設置、担当者の任命、教育、役割)
D 検討グループの設立
・発生時の対応手順の検討
・対応方法(困難時の対応)
・解決調整
・再発防止

  上記手番を経て、下記のような体制整備と対応手順を決定していきます。

<想定例…飲食店を複数展開している事業者>

一次対応 フロア従業員(クレーム内容と要求等を確認)
一般的な対応で未解決、かつ、カスハラに該当と判断
相談担当窓口または店長に報告+ヘルプ要請
二次対応  相談担当スタッフまたは店長等が複数人数で対応
              ↓(さらに不調 or 重大事案)
本部に報告・連絡・相談

また、二次対応に対応できるスタッフや店長等が不在の場合、以下のような社内書式をあらかじめ準備しておき、一次対応者が今回の経緯を記録、今後の対応を二次対応者に委ねるといった手法も考えられます。

報告シート

(4)従業員向けの研修にはこれが有効!

 従業員向けの研修には、参加した各人が実際の場面を想定し、目の前で起きたカスハラにどう対応するか、を各人自身で考えさせ、対応方法について仲間と話し合って決める「受講者参加型のグループ討議」が非常に有効です。

 ポイントは事前に【①実際に起こりそう ②対応がそこそこ難しい】レベルの想定問題をあらかじめお題として決めておくことです。

 手法としては島型のテーブル配置にして、いくつかのグループに分けておき、グループ内でリーダー、発表者、タイムキーパー、等の役割分担を定め、制限時間内にグループ内で協議、結果をグループごとに発表させるというものです。

 これにより各人が真剣にテーマに向き合い、仲間と共に考え、協力してカスハラ問題を乗り越えるという実践的なシミュレーションを行うことができます。
小職の経験では、カスハラとは何ぞや…という説明では眠そうにしていた者が、このグループ討議になった途端に目の色が輝き、討議後の会話でも盛りあがるという光景を幾度となく目にしています。

 ちなみにグループ討論のカギとなるサンプル事例を参考までに記載しておきます。

事例検討1
【(当社のレストランでの場面です)
お客様にフロア担当の従業員がスープを配膳した際、従業員の鈴木さんは勢い余ってスープが少し受け皿にこぼれてしまいました。
鈴木さんはすぐに謝罪しましたが、お客様は「乱雑すぎる。プロ意識が足りない」と叱責しました。
鈴木さんは重ねて謝罪しましたが、お客様はさらに大声を張り上げ、周囲のお客様も注目する状況になってしまいました】

質問(以下を考えて答えよ)
・上記の状況で店側はどう介入すべきか?
・このような事態を未然に防ぐためには何が必要か?

【検討時間 約6分】

(5)まとめ

 今回のカスハラは今後、企業に対して「従業員からの相談体制の整備」や「防止策の実施」「従業員への教育」等が課されることになると思われます。
各自治体でも条例化が始まっていますので、ぜひ今回の内容を参考にして自社におけるカスハラ体制の体制整備、従業員研修、等を行っていただきたいと思います。

参考資料
カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)
カスタマーハラスメント対策リーフレット(厚生労働省)
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
カスタマーハラスメント防止条例(東京都)
カスタマーハラスメント対策ガイドライン(東京都)


ニュースを読んでポイントGET!(公開日の翌日13時前限定で取得可能)

おすすめコンテンツ

人気記事ランキング

キャリア記事ランキング

新着動画

関連情報

マネジーポイントを貯めると各種ポイントと交換できたりカタログギフトとも交換可能です。また今なら初回特典として1400ポイントをプレゼント!

マネジーの会員登録はこちら