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企業が従業員の福祉向上と働きやすい職場環境を実現するための重要施策、福利厚生費。
この記事では、法定福利費から法定外福利費まで、会計処理から税務判断までをわかりやすく解説します。
「どこまでが福利厚生費で、どこからが交際費になるのか」「個人事業主でも計上できるのか」など実務担当者が直面する疑問に答えながら、最新のトレンドも踏まえた包括的なガイドをお届けします。
福利厚生費とは、企業が従業員の生活をサポートし働きがいを高めるために負担する費用の総称です。
法令で支払いが義務付けられている「法定福利費」と、企業が独自に実施する「法定外福利費」の2種類に大別されます。
福利厚生費の最大目的は「従業員満足度の向上+人材定着率の改善+企業イメージの強化」の三拍子を同時に実現すること、つまり企業の成長エンジンに直結する投資なのです。
特に2025年には、持続可能で多様性に配慮した福利厚生が一層評価されるようになっており、企業の社会的責任としての側面も強化されつつあります。
単なる法定福利厚生だけでなく、企業独自の魅力的な福利厚生制度が求められる時代です。
福利厚生費を理解するうえで、まずは法定福利費と法定外福利費の違いを明確にしておきましょう。
| 区分 | 法定福利費 | 法定外福利費 |
|---|---|---|
| 定義 | 法律で定められた福利厚生費 | 企業が任意で提供する福利厚生費 |
| 必須性 | 強制的 | 任意 |
| 課税 | 全額損金算入可 | 要件を満たせば損金算入可 |
| 例 | 社会保険料、労働保険料 | 住宅手当、食事補助、慶弔見舞金 |
法定福利費は労働法規によって企業に支払いが義務付けられた費用です。
主に以下の6種類があります。
| 区分 | 主な給付内容 | 会社負担割合(概算) |
|---|---|---|
| 健康保険 | 医療給付・出産手当 | 約5 %(都道府県単位保険料率10 %の半額) |
| 厚生年金保険 | 老齢・障害・遺族年金 | 約9 %(18.3 %の半額) |
| 雇用保険(一般の事業) | 失業給付・育児休業給付 | 0.9 %(失業等給付 0.55 %+二事業 0.35 %) |
| 労災保険 | 業務災害補償 | 0.3 %〜(業種により変動) |
| 介護保険(40〜64歳) | 介護給付 | 約0.8 %(全国一律1.59 %の半額) |
| 子ども・子育て拠出金 | 保育施策財源 | 0.36 % |
社会保険料は事業主負担部分・従業員控除部分ともに「不課税仕入れ」に該当します。
仕訳科目は6項目すべて「法定福利費」で統一し、賃金台帳の法定控除欄と突合させてください。
法定福利費を計上する際の基本的な流れは次のとおりです。
注意点としては、算定基礎となる報酬月額に漏れがないか定期的にチェックし、保険料率の改定情報も把握しておく必要があります。
また、短時間労働者や契約社員など、社会保険の適用範囲についても正確に把握しておくことが求められます。
法定外福利費には様々な種類があり、企業が独自に従業員の福利厚生を目的として支出するものです。
企業の規模や業種、従業員の構成などによって、導入される制度は大きく異なります。
法定外福利費には、主な例として以下のものが挙げられます。
これらの法定外福利費は、従業員の満足度向上と定着率向上に大きく寄与するため、戦略的に設計することが重要です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 100,000円 | 現金 | 108,000円 |
| 仮払消費税 | 8,000円 | ||
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 500,000円 | 普通預金 | 550,000円 |
| 仮払消費税 | 50,000円 | ||
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 5,000円 | 現金 | 5,400円 |
| 仮払消費税 | 400円 | ||
法定外福利費を計上する際には、以下の点に注意が必要です。
国税庁が定める福利厚生費の要件を理解することは、税務処理の観点から非常に重要です。
適切な要件を満たさなければ、福利厚生費として認められず、給与課税や交際費等として取り扱われるリスクがあります。
福利厚生費として認められるには、以下の3つの基準を満たす必要があります。
これらの基準を満たさない場合、従業員側では給与として課税され、源泉所得税や社会保険料の負担が追加されることになります。
一方、法人側においては交際費や役員給与として認定され、損金不算入となることで法人税の負担が増える可能性があります。
実務上の対応としては、支給に関する基準を就業規則や社内規程として文書化し、あわせて領収書や参加者名簿などの証憑を適切に保存しておくことが重要です。
特に、役員のみが利用する高額な施設や豪華な旅行などについては、交際費または役員給与として否認されるリスクが高く、慎重な運用が求められます。
また、たとえば深夜勤務者への弁当支給といったケースでは、1食あたり300円以下であれば所得税基本通達36-24により非課税扱いとされるなど、具体的な上限基準も定められているため、これらを遵守したうえで福利厚生費として計上することが求められます。
福利厚生費の金額基準については、以下の表が参考になります。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 社内飲食 (社内パーティーなど) |
社会通念上相当額 (具体的上限なし。一般的には 5,000 円程度が目安) |
| 食事補助 (1か月あたり) |
3,500円まで |
| 社員旅行 | 4泊5日以内かつ社会通念上相当額 (実務目安10万円前後) |
| 慶弔見舞金 | 社内規程の範囲内 |
| 花見・忘年会など | 社会通念上相当額 |
| 定期健康診断 | 全額非課税・損金算入可 |
飲食関連の支出は福利厚生費(従業員向け)と交際費等(得意先等向け)の境界が曖昧になりやすい領域です。
判定は ①参加者の範囲と②金額・頻度の妥当性で整理できます。
| 参加者 | 原則区分 |
|---|---|
| 従業員のみ(※役員を含む) | 福利厚生費(交際費等から除外) |
| 得意先など社外参加者を含む | 交際費等 |
注意点として、社内向けであることを装っていても、社外の人物が一人でも加わるとその支出全体が交際費扱いとなるため、参加者の範囲を明確に把握しておくことが重要です。
また、従業員のみが対象であっても、役員だけで高額な飲食を行った場合などは、たとえ福利厚生費として処理していても、社会通念上妥当性を欠くと判断され、結果的に交際費等に振り替えられる可能性があります。
したがって、飲食費を福利厚生費として処理する際には、支出の目的や対象者、支給額の妥当性について、税務署からの指摘を受けないよう、客観的な根拠と記録を残しておくことが望まれます。
福利厚生費としての飲食には明確な数値上限はありませんが、国税当局は「通常要する費用」かどうかを実態で判断します。
実務では次の水準が安全圏とされます。
| 判定項目 | 実務目安 |
|---|---|
| 1人当たり金額 | 概ね1万円以内 |
| 開催頻度 | 年2~3回程度まで |
| 対象範囲 | 全社または部署単位 |
| 食事補助(社員食堂・弁当代) | 従業員負担後の会社補助分が月額3,500円以下 |
誤解しやすい点として、社内飲食費は交際費とは異なり、50%損金算入制限の対象外であり、全額を損金算入することができます。
ただし、参加者に社外の関係者が含まれる場合は、その飲食費全体が交際費等に該当し、資本金1億円超の法人においては、そのうち50%しか損金算入できなくなる点にも注意が必要です。
最近では、従来の「モノ」中心の福利厚生から、従業員の健康や働き方の多様性を重視する「ヒト」中心の福利厚生へとシフトしています。
特にコロナ禍以降、リモートワークの普及や健康管理の強化、多様な働き方の支援が注目されています。
近年、多様な福利厚生の形態が注目を集めています。
特にカフェテリアプランは、従業員に選択の自由を提供することで人気があります。
これは、従業員が自分に合った福利厚生を選びやすくするため、有効です。
健康支援系の福利厚生は、従業員の健康を維持し、業務パフォーマンスを向上させるために重要な役割を果たします。
例えば、健康診断の充実やフィットネスジムの法人契約、オンラインでの健康相談サービスが挙げられます。
また、ウェアラブルデバイスを用いた健康管理や、メンタルヘルス支援の強化もトレンドとなっています。
企業はこれらの健康支援系福利厚生を導入することで、従業員の長期的な健康をサポートし、組織全体の活力を高めることができます。
現代の企業における多様な働き方を支援する施策として、リモートワークの促進やフレックスタイムの導入が注目されています。
これらの制度は、従業員の生活スタイルに合わせた柔軟な働き方を提供することで、個々のニーズに応じた労働環境を整えることが可能です。
リモートワークは、特にコロナ禍以降急速に普及しました。
これにより通勤時間の削減や働く場所の自由度が向上し、従業員のワークライフバランスが改善される効果があります。
また、フレックスタイム制度は、従業員が業務を遂行する時間を柔軟に設定できるため、育児や介護などの個人的な事情に応じた働き方を実現できます。
現代の職場では、自己啓発と能力開発の支援が非常に重要視されています。
このような施策は、従業員のスキルアップを促進し、企業全体の成長にも寄与します。
具体的な取り組みとしては、社内外の研修プログラム、資格取得支援、そしてメンター制度などがあります。
福利厚生費は、法人の節税対策に有効な手段です。
福利厚生費は経費として計上することで「損金」となり、収入から差し引かれて利益が減少します。
その分、支払うべき税金も少なくなります。
また、福利厚生費は原則として非課税であるため、従業員にとってもメリットがあります。
福利厚生費が節税対策になるのは、損金として算入でき、法人税の負担を軽減しやすくなるためです。
たとえば、月額5万円の家賃補助を支給する場合、年間60万円を経費とし、法人税の節税につなげることができます。
福利厚生費として計上できれば、企業にとっては損金の扱い(非課税対象)となり、また従業員にとっては、福利厚生としてサービスを受けても給与扱いにならないため、所得税の負担増はありません。
したがって、企業にとっても従業員にとっても節税になります。
A1: 福利厚生費(社内飲食)に法定の金額上限はありません。
ただし「全従業員が参加できる」「社会通念上妥当な額」であることが条件です。
金額の目安として 1 人 5,000 円以下が取り上げられるのは 社外接待 時の交際費判定(1 人 1 万円基準の特例)の参考数値であり、福利厚生費の必須要件ではありません。
一方、従業員への食事補助 は「(1) 従業員が半額以上自己負担 (2) 会社負担額が月 3,500 円以下(税抜)」なら給与課税されず福利厚生費となります。
A2: 国税庁のウェブサイトに掲載されている所得税基本通達36-24や法人税基本通達9-7-16で確認できます。
また、税制改正があった場合は、最新の情報を確認することをお勧めします。
A3: 福利厚生費は従業員の福祉向上を目的とした支出で、交際費は事業に関係する者との親睦や接待を目的とした支出です。
対象者や目的によって区分されます。
A4: はい、青色申告を行っている個人事業主であれば、事業との関連性が明確で適正な金額であれば計上可能です。
ただし、常時雇用する従業員の存在が大前提です。
A5: はい、会社の規模に関わらず、要件を満たせば福利厚生費として認められます。
ただし、少人数の場合は特に公平性や業務関連性の証明が重要になります。
A6: 全従業員一律で同額クーポンを付与し、会社名義で一括精算(または領収書を集約)すれば福利厚生費処理が可能です。
個別精算で領収書が集まらない場合は、交際費あるいは給与として扱われるリスクがあります。
A7: 家賃補助を“手当”で支給すると給与課税です。
非課税にするには「社宅方式」を採用し、従業員から家賃相当額の 50%以上 を徴収(役員は所定計算式)する必要があります。
補助が 50%超や役員限定の場合は給与課税となります。
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A8: 交際費は課税仕入10%、給与振替時は消費税対象外。
帳簿・申告の二重修正を忘れずに行う必要があります。
福利厚生費は、単なる経費ではなく、従業員のモチベーション向上や人材定着、企業ブランディングに直結する戦略的な投資です。
法定福利費はもちろん、法定外福利費についても、会計処理や税務判断の正確さが求められると同時に、支給内容や金額が適正であるか、社会通念上の妥当性を満たしているかといった観点が極めて重要になります。
特に近年は、健康支援・柔軟な働き方・自己啓発など「人を支える」制度への注目が高まっており、従業員の多様なニーズに対応できる設計が企業の競争力を左右します。
経理・人事部門としては、社内規程の整備や証憑管理の徹底とあわせて、税制や通達の最新情報にも常に目を配りながら、制度の適切な運用を心がけましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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