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近年、気候変動によって日本の夏は過酷さを増しており、毎年のように職場での熱中症による死亡事故が報道されています。
年間で約30人が亡くなり、約1,000人以上が4日以上仕事を休んでいます。
こうした状況を受け、政府は2025年6月から職場の熱中症対策を罰則を設けて義務化しました。
企業は実効性のある取り組みが強く求められています。
今回の法改正は単なるルール変更ではありません。
命を守るための「即時対応体制」を全ての企業に義務付けるものです。
▼この記事を書いた人
玉上 信明(たまがみ のぶあき)
社会保険労務士玉上事務所
所長
社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー
三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。
2015年同社定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。
人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。
公式ブログ:toranekodoranekoのブログ
公式YouTube:玉上信明
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100013068423836
「助かったはずの命を、熱中症で失わせない」——それが今回の法改正の趣旨です。
厚生労働省によれば、近年の熱中症死亡事故の原因は、初期症状の見逃しや対応の遅れです。
実にその割合は103件中100件にのぼっています 。
本来であれば救えた命も、体制や対応の不備により救えなかったという現実が明らかになっています(図表1)。
そのため、「死亡させない」「重症化させない」ために、適切な初動対応を行う体制整備が企業に義務づけられました。
2025年6月1日からは改正された労働安全衛生規則が施行され、違反した場合には刑事罰が科される可能性もあります。
(図表1)

出典:厚生労働省|職場における熱中症対策の強化について
改正労働安全衛生規則では、以下の措置が罰則付きで企業に義務づけられました。
熱中症のおそれのある労働者を早期に見つけ、迅速適切に対処して重篤化を防止するための
「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」です。
具体的には次の対応が求められます。
「熱中症の自覚症状がある者」「症状を感じさせる者を見つけた者」がすぐ報告できる連絡体制や事業場ごとに責任者を定め、従業員等関係者に周知すること。
報告を受けるだけでなく、職場巡視、バディ制(複数人での共同作業)、ウェアラブルデバイス等の活用、双方向の定期連絡などで、熱中症の症状がある作業者を積極的に把握するよう努めること。
作業からの離脱、身体冷却、水分・塩分補給、必要な医療措置や搬送先、緊急連絡網など、場面ごとの手順書を作成し、従業員等関係者に周知すること。
法改正の対象は、業種も規模も関係ありません。
熱中症の発生リスクが高い作業を行う場合に適用されます。
後述のWBGT値が28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業ならば、すべて該当します。
周知すべき対象は従業員に限らず、一人親方など熱中症のおそれのある作業に従事する者が幅広く含まれます。
違反時には刑事罰も科されます。
事業者が必要な措置を講じなかった場合は6カ月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されることがあります。
(労働安全衛生法第22条、27条、119条、労働安全衛生規則第612条の2)
この改正は、命を守るための「即時対応体制」を国が企業に求めているのです。
「罰則付きで法的義務」となった背景には、これまで救えなかった命を救うための、切実な要請と捉えるべきです。
違反時は労働基準監督署による是正指導や労災認定、企業の社会的責任が問われるでしょう。
安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けることも覚悟しなければなりません。
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