ガソリン暫定税率が廃止されたら社用車のコストはいくら下がる？企業の経理・総務が今すぐやるべき対応策

2025年11月の廃止を目指す「ガソリン暫定税率廃止法案」が国会に提出され、企業にとっても無視できないテーマとなっています。

社用車を多く保有する企業にとって、この税率は燃料費の大きな負担要因です。
もし廃止されれば年間数十万～数百万円規模の削減効果が期待できますが、一方で不成立となれば現状維持です。
さらに、原油価格の変動など外部要因も影響するため、「成立した場合」「不成立の場合」の双方に備えた柔軟な管理が求められます。

本記事では、暫定税率の基本から削減効果の試算、さらに経理・総務部門が今すぐ取り組むべき戦略的な車両管理までを解説します。

そもそも「ガソリン暫定税率」とは？

ガソリン暫定税率とは、本来のガソリン税に上乗せされている「時限的な増税分」を指します。
導入は1974年、当時の道路整備財源を確保するための“暫定措置”でしたが、実際には半世紀近く維持されてきました。
現在も1リットルあたり25.1円が課税されており、ガソリン価格の約1〜2割を占める大きな要因となっています。
つまり、表向きは「一時的」な措置でありながら、事実上恒久化されてきた制度です。

ガソリン価格の内訳（本体価格＋ガソリン税＋暫定税率＋消費税）

ガソリン価格は単なる燃料の市場価格だけでは決まりません。
まず、元となる「本体価格」があり、これに対してガソリン税が課されます。
さらにそのガソリン税には、現在も維持されている「暫定税率」が上乗せされており、最後に消費税が加わる仕組みです。

たとえば、ガソリンの本体価格が110円の場合、ガソリン税（本則分）28.7円、暫定税率25.1円が加わり、小売価格はすでに約164円。
ここに消費税が加算されるため、最終的な価格は180円前後となります。
つまり、私たちが給油所で支払う価格のうち、約4割は税金にあたるのです。

この構造を理解することで、暫定税率の廃止がどれほど大きなインパクトをもたらすかが明確になります。

暫定税率（1リットルあたり25.1円）が占めるインパクト

ガソリン暫定税率は、1リットルあたり25.1円という金額で固定されています。
一見すると小さい額に見えますが、日常的に利用する社用車や配送車にとっては膨大な負担です。

例えば、燃費10km/Lの車両が月に1,000km走行する場合、必要な燃料は約100L。
そこに暫定税率分をかけると月間2,510円、年間では約30,120円の追加コストになります。
10台、50台といった規模で保有していれば、その影響は数十万円から数百万円に跳ね上がります。

経理や総務にとっては、暫定税率が単なる「税制の一部」ではなく、企業の利益に直結する経費項目であることを理解し、正確に把握しておくことが重要です。

廃止法案の現状と成立の可能性（2025年8月時点）

2025年8月時点で、「ガソリン暫定税率廃止法案」は与党内外で議論が続いており、同年11月を目標に国会審議が行われています。
しかし、成立の可能性は依然として五分五分と見られています。
廃止を推進する立場からは「物価高対策」「国民負担の軽減」が強調され、一方で反対派は「道路整備財源の確保」や「代替財源の不透明さ」を理由に慎重姿勢を崩していません。

経営者や管理部門にとって重要なのは、成立・不成立どちらのシナリオも想定し、柔軟に備えることです。
政治動向を待つだけではなく、リスクシナリオを具体的にシミュレーションしておくことが、経費予測や予算編成の信頼性を高めます。

コスト削減シミュレーション｜暫定税率が廃止された場合の経費削減効果

暫定税率廃止による最大のメリットは、燃料費の直接的な削減です。
先ほどの例を用いると、月間1,000km走行・燃費10km/Lの社用車1台あたりで年間30,120円の削減効果があります。

仮に20台を保有する企業であれば、約60万円。
100台規模の運送会社なら、年間で約300万円もの経費削減につながります。
さらに、燃料費が下がれば、物流委託費や製品輸送コストも軽減され、間接的な利益改善効果も期待できます。

企業によっては、このコスト削減分を他の投資（システム導入、福利厚生の充実など）に充てる戦略も可能になります。
経理や総務は、こうした数字を基にシナリオ別の試算を用意し、経営層への提案資料として活用することが求められます。

社用車1台あたりの年間コスト削減額（ケース別）

法案の行方に左右されない戦略的車両管理

ガソリン暫定税率が廃止されるかどうかは不透明ですが、企業がいま取り組める「社用車管理の最適化」は明確に存在します。
ここでは、総務・経理担当者が実践できる3つのステップを紹介します。

ステップ①：現状の燃料使用量とコストを「見える化」する

まず必要なのは、各社用車がどれだけ燃料を使い、どれだけ経費を圧迫しているかを正確に把握することです。
ガソリン代は「小さな支出が積み重なり、大きな固定費」となりがちです。
Excelや会計システムから抽出した給油データを集計し、車両ごとの走行距離、燃費、年間コストを一覧化することで、どの車が非効率なのかが明確になります。
ここで提供した【試算シート】を使えば、暫定税率廃止が与えるインパクトを一目で確認できます。

ステップ②：コスト削減余地の大きい車両・部門を特定する

データを整理すると、車両や部門ごとに燃料コストの「ムダ」が見えてきます。
例えば、

• 長距離移動が多く、年間給油量が突出している部門
• 燃費性能の悪い旧型車両
• 個別利用が多く、稼働率が低い車両

といった要素は、最適化の優先対象です。
これらを洗い出すことで、「廃止後のメリットを最大化する車両管理策」を検討する土台ができます。

ステップ③：制度の変動に左右されない“長期的な管理策”を導入する

暫定税率の有無にかかわらず、燃料費を抑える方法は多岐にわたります。
例えば以下の施策です。

• 車両入替え：低燃費車やEV（電気自動車）へのシフト
• カーシェア導入：利用頻度の低い車両を削減し、複数部署でシェア
• 燃費改善教育：社員にエコドライブを徹底し、無駄なアイドリングや急発進を抑止
• 管理システム導入：ICカード給油やGPSを活用し、不正利用や過剰利用を防止

これらは法案の可否にかかわらず有効であり、制度変更リスクを低減しつつ、継続的なコスト削減に直結します。

総務・経理担当者が今すぐ着手すべきチェックリスト

ガソリン暫定税率の廃止法案が成立するかどうかは不透明ですが、企業としては「どちらに転んでも対応できる準備」が必要です。
ここでは、総務・経理担当者が今から着手できるチェックリストをまとめました。

1. 燃料コストの現状把握
   社用車ごとに「月間走行距離・燃費・給油額」を整理し、年間の燃料費を算出する。
2. 暫定税率廃止後の影響試算
   本記事の試算シートを活用し、廃止された場合のコスト削減額をシミュレーションする。
3. 高コスト車両の特定と対策案の検討
   燃費の悪い旧型車や稼働率の低い車両をリストアップし、入替え・シェア化の可能性を検討。
4. 制度の行方に備えたシナリオプラン作成
   「廃止された場合」「現状維持の場合」の両パターンで、来期の経費計画を事前に策定する。
5. 経営層への報告と意思決定のサポート
   試算結果と対応案を整理し、経営層にわかりやすく提示することで、投資判断を後押しする。

まとめ

2025年11月を目途に提出された「ガソリン暫定税率廃止法案」は、成立すれば燃料費負担の軽減につながりますが、不成立の場合は現行制度が維持されます。
いずれにしても、社用車を保有する企業にとって燃料費は避けられない固定費であり、管理部門がいかに先手を打って対応できるかが利益確保の鍵を握ります。

経理・総務担当者に求められるのは、法案の動向を待つことではなく、「制度の変化に影響されない車両管理体制」の構築です。
現状の燃料使用を正確に把握し、試算によって削減余地を明らかにし、持続的な管理策を導入することが大切です。




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