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監査法人でのキャリアを重ねる会計士の中で、「海外子会社の監査で移転価格文書に触れ、税務の奥深さに気づいた」「監査スキルは汎用性が高い半面、このままで専門性は身につくだろうか」と考える方もいるのではないでしょうか。
そのような会計士にとって、有力な選択肢の一つが「国際税務」です。
企業のグローバル化は待ったなしで進み、BEPS(税源浸食と利益移転)に代表される国際的な租税回避への視線も厳しさを増す中、会計と税務、そして国際感覚を併せ持つ専門家の需要はかつてないほど高まっています。
一方で、会計士のキャリアの傾向として「税務申告書を作成した経験がない」「英語での交渉には自信がない」といった不安から、最初の一歩を踏み出せない方が多いのも事実です。
この記事では、転職支援の現場で得たリアルな情報をもとに、国際税務の仕事の魅力、転職市場での本当の評価、そしてキャリアを成功させるための具体的な方法を解説します。
なおこの記事は二部構成になっています。こちらの記事は前編です。
会計士が国際税務の世界で担う役割は、単なる「税金の計算」や「申告書の作成」ではありません。
その本質は、企業の経営戦略そのものに深く関与し、グローバルな合意形成をリードするダイナミックな仕事です。
例えば、海外子会社との取引価格をどう設定するか(移転価格税制)は、グループ全体の利益配分や資金効率に直結する重要な経営マターです。
また、無形資産や知的財産をどの国に配置するかの意思決定にも、税務の視点は不可欠です。
これらの業務は、財務諸表の数字の裏にある「ビジネスの実態」を深く読み解き、論理を組み立てる必要があり、まさに会計士の監査経験で培った分析力が活きる領域です。
単なるルール適用者ではなく、企業の価値創造に貢献するビジネスパートナーとして、知的好奇心が刺激されるフィールドだと言えるでしょう。
会計の延長線上にありながら、より経営の根幹に近い場所で専門性を発揮できる点が、この業務の最大の魅力です。
国際税務の花形とも言える「移転価格」や「BEPS」対応の現場は、高度な専門性と調整力が求められる最前線です。
この業務は、各国の税法やOECDガイドラインに基づき、グループ内取引の妥当性を証明する文書を作成することから始まりますが、そのプロセスは非常にクリエイティブです。
例えば、文書化対応一つとっても、本社の経理・財務部門だけでなく、海外子会社の担当者、現地の法律事務所、さらには事業部門の責任者など、多様なバックグラウンドを持つステークホルダーとの連携が不可欠です。
文化や言語、立場の違いを乗り越え、「ロジックで相手を納得させ、一つの着地点を見出す」という高度な交渉・調整経験は、他では得難いスキルとなります。
また、税務当局との事前確認(APA)や相互協議といった、数年がかりのプロジェクトを主導する経験は、単なる税務知識を超えた、真のグローバルビジネスパーソンとしての実力を証明するものとなるでしょう。
正解のない問いに対して、自ら仮説を立て、情報を収集し、最適解を導き出す。
このプロセスにこそ、国際税務の醍醐味があります。
国際税務へのキャリアチェンジにおいて、採用担当者は候補者の何を評価しているのでしょうか。
もちろん国際税務の知識を蓄えておくことは重要ですが、それ以上にポテンシャルを判断するための次に紹介する3つの実務スキルが重視されています。
第一に、「論点整理力とロジカルライティング能力」です。
国際税務の成果物は、レポートやポジションペーパーといった文書が中心です。
複雑な事実関係と法令を整理し、誰が読んでも理解できる筋の通った文章を作成する能力は極めて重要です。
第二に、ビジネスレベルの「英語力」。
TOEIC900点というスコア以上に、「海外拠点と英語で会議をリードした経験」が評価されます。
目安として800点前後あれば土台には乗りますが、翻訳ツール頼みでは実務は難しいでしょう。
そして第三に、監査経験だけでは測りにくい「社内調整・巻き込み力」です。
税務は一人で完結せず、他部署を納得させ、協力を引き出す力が不可欠です。
これら3つのスキルを自身の経験と結びつけて語れることが、採用を勝ち取る鍵となります。
後編では、国際税務経験を持つ会計士が転職市場でどのように評価されるのか、そして職務経歴書や面接での具体的なアピール方法について詳しく解説します。
後編は、管理部門・士業特化型転職エージェント「MS-Japan」のサイトにて公開中です。
下の「続きを読む」からご覧ください。
記事提供元
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