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給与まわりの勘定科目は、基本を知っていても従業員区分や支給内容によって科目が変わるため、仕訳では判断に迷うケースが少なくありません。
この記事では、まず給与に関わる勘定科目の基本を整理し、後続の使い分けや仕訳処理をスムーズに理解できるよう解説します。
給与に関連する勘定科目は、従業員区分や支給内容の性質によって明確に使い分ける必要があります。
ここでは、日常の給与処理で特に登場する勘定科目を、実務で迷いやすいポイントとともに説明します。
時間外手当、資格手当、役職手当など、雇用契約に基づき月次で支給される手当は、原則として「給与手当」に含めます。
売上歩合制の支給であっても、雇用関係がある限り給与として扱われるため、報酬系の支払いと混同しないよう注意が必要です。
取締役や監査役などの役員に対する報酬は、「役員報酬」として社員の給与とは区別します。
パート・アルバイトなど短時間勤務者への支払いは、通常「雑給」で処理します。ただし、勤務時間ではなく「雇用契約の区分」で判断します。
短時間勤務でも正社員として雇用している場合は「給与手当」となります。
派遣社員に関する支払いは、給与ではなく派遣会社への「人材派遣料」で処理します。
一方、業務委託契約に基づく外部人材への支払いは「外注費」となり、こちらも給与とは明確に区別します。
派遣や業務委託は、人件費ではあるものの給与支給ではないため源泉徴収の扱いも異なります。
契約形態を正しく把握することが、勘定科目の判断に直結します。
通勤手当は給与と混同されがちですが、一定額までは非課税扱いとなり、給与ではなく経費(旅費交通費)として計上します。
会社が負担する社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など)は、「法定福利費」で計上します。
従業員負担分と混在させないことが最も重要なポイントで、従業員負担分は会社が一時的に預かっているだけのため「預り金」や「未払金」で処理します。
また、社会保険料の改定や労働保険料の年度更新など、時期特有の調整も発生するため、正確な計上タイミングを意識した運用が求められます。
経理では、この流れを正しく仕訳に落とし込むことが求められます。ここでは日常業務で頻出する基本パターンを、実務で注意すべきポイントとともに整理します。
締め日と支払日が異なる企業では、月末に当月分の給与を計上し、翌月に支払う処理が一般的です。
例:パート給与30,000円・通勤交通費1,000円を月末に計上する
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 雑給 | 30,000円 |
未払 給与 |
31,000円 |
|
旅費 交通費 |
1,000円 | ||
翌月の支払日に、計上していた未払給与を実際に支払う際は、次のように処理します。
例:前月末に未払計上していたパート給与20,000円を、翌月の支給日に現金で支払った場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
|
未払 給与 |
20,000円 | 現金 | 20,000円 |
支給日に給与を費用計上し、同時に支払う場合の仕訳です。
例:アルバイト給与30,000円を支給と同時に預金振込
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
|
雑給 (または給与手当) |
30,000円 |
普通 預金 |
30,000円 |
給与計算で控除される金額は、会社が「従業員から預かっている」ため負債科目で処理します。
例:給与200,000円から、所得税10,000円・住民税20,000円・社会保険料30,000円を控除して未払給与として計上
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
|
給与 手当 |
200,000円 |
未払 給与 |
140,000円 |
|
源泉所得税 預り金 |
10,000円 | ||
|
住民税 預り金 |
20,000円 | ||
|
社会保険料 預り金 |
30,000円 | ||
給与日前に従業員へ資金を渡した場合は「貸付金(立替金)」で処理し、給与として費用計上しません。
前貸し時
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
|
従業員 貸付金 |
30,000円 | 現金 | 30,000円 |
現金で返済された場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 30,000円 |
従業員 貸付金 |
30,000円 |
給与から天引きで回収する場合(給与50,000円を支給)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
|
給与 手当 |
50,000円 |
従業員 貸付金 |
30,000円 |
|
普通 預金 |
20,000円 | ||
給与は「販売費及び一般管理費」「売上原価」のいずれに入れるか企業ごとに異なり、預り金の科目分類も同様です。
仕訳と会計ソフトの設定が一致しているかを定期的に確認すると誤りを防げます。
従業員ごとの給与額を仕訳で細分化する必要はなく、「管理部門と人事側で内訳が把握できていれば合算仕訳で問題なし」というのが実務上の一般的な運用です。
給与から天引きされるお金には、税金・社会保険・会社が代行して処理する積立金など、複数の種類があります。
これらは「会社が従業員の代わりに預かっているお金」であるため、費用ではなく負債(預り金)として会計処理を行います。
ここでは、日常の給与計算でよく登場する控除項目の概要と、実務で意識すべきポイントを整理します。
給与から差し引く所得税は、従業員の給与額・扶養状況・保険料控除などをもとに算出され、会社がとりまとめて税務署へ納付します。
年末調整によって最終的な税額が調整されるため、給与計算で控除した金額はあくまで「仮の税額」という位置づけになります。
給与から天引きした時点では費用化せず、納付までの間は預り金として管理します。
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健康保険・厚生年金・雇用保険などの従業員負担分は、法律で定められた料率に基づき給与から控除します。
対象となる従業員の要件や保険料率は毎年見直されるため、計算ソフトの設定が最新であるかを確認することが重要です。
控除後は会社負担分と合算して納付するため、納付までの間は「社会保険料預り金」として区分します。
住民税は前年の所得に基づいて計算され、通常は「特別徴収」として会社が毎月の給与から天引きします。
自治体から通知される税額に基づいて控除するため、源泉所得税とは異なり年間を通じて金額が固定されるケースが多いことが特徴です。
転職・退職のタイミングでは徴収方法が変わることがあるため、人事労務との情報共有が欠かせません。
会社が従業員に代わって預かる金額は税金や社会保険料に限りません。
財形貯蓄や社内イベントの積立金、社宅利用料の一部負担など、企業が独自に運用する制度でも天引きが行われます。
これらも性質としては「従業員から預かった資金」であるため、預り金として処理します。
制度ごとに処理方法が異なるため、会計ソフトの科目設定を明確にしておくとミスが防げます。
社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険の会社負担分)や労働保険(労災保険・雇用保険の一部)には、企業が負担する金額が含まれています。
これらは従業員負担分と異なり、会社の費用として処理する点が特徴です。
実務では 「従業員負担分(預り金)」「会社負担分(法定福利費)」「納付時の処理」 を区別しておくと、決算や年度更新の際に混乱を防げます。
会社が負担する社会保険料は、まとめて「法定福利費」として費用計上します。 健康保険・厚生年金の会社負担分に加え、雇用保険料の会社負担分や子ども・子育て拠出金もここに含まれます。
給与計算では従業員負担分と会社負担分を同時に算出しますが、仕訳では両者を明確に分ける必要があります。
従業員負担分を法定福利費に含めてしまうと、費用が過大計上されるため注意が必要です。
社会保険料の納付は、従業員負担分(預り金)と会社負担分(法定福利費)をまとめて支払うのが一般的です。
納付時にはそれぞれの科目を取り崩し、現金・預金から支出することで、会社として負担すべき実費だけが費用として残ります。
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、年度をまたいで「概算」と「確定(清算)」を行う仕組みが特徴です。
年度当初に概算保険料を納付し、翌年度の年度更新で前年度の実績に基づく清算を行います。
経理と労務で給与総額や保険料率の情報を共有しておくと、年度更新の作業がスムーズになります。
給与の勘定科目と仕訳は、毎月必ず発生する一方で、従業員区分や支給内容に応じて判断が細かく分かれます。
科目の使い分けを誤ると、月次決算や年度更新の負担が増すだけでなく、税務調査や監査で指摘を受ける要因にもなります。
本記事で整理した基本的な考え方を日々の処理に落とし込み、給与計算担当者・経理担当者のあいだで情報を統一することが、安定した給与業務の第一歩です。
まずは、自社の処理ルールと仕訳方法がこの記事の内容と一致しているかを確認し、必要に応じて運用の見直しから始めてみましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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