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有給休暇を年5日取得できなかった場合、人事はどう対応すべきか

公開日2026/01/07 更新日2026/01/06 ブックマーク数
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有給休暇を年5日取得できなかった場合、人事はどう対応すべきか

有給休暇の年5日取得義務が施行されて以降、「取得できなかった場合、企業はどう対応すべきか」「人事として何をしておく必要があるのか」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。

取得管理を誤ると法令違反や罰則、労務トラブルにつながるおそれがあります。

本記事では、年5日取得義務の基本から罰則、管理ポイント、注意点、実際の対応例までを整理し、人事が取るべき実務対応を解説します。

[ 目次 ]

年次有給休暇の「年5日取得義務」とは

年次有給休暇の年5日取得義務は、2019年4月1日から施行されました。
これは、2018年に成立した働き方改革関連法を受け、企業の労働環境を整備する目的で、「時間外労働の上限規制」や「客観的な労働時間管理」とあわせて導入された制度です。

有給休暇は本来、取得理由を問わず従業員が自由に取得できる権利ですが、実務の現場では職場の雰囲気や周囲への遠慮から、取得が進まない状況が続いていました。

こうした課題を踏まえ、2019年の労働基準法改正により、年次有給休暇の時季指定義務が新たに設けられました。
これにより、企業は年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、毎年5日については確実に取得させる責任を負うことになります。

なお、従業員が自主的に年5日以上の有給休暇を取得している場合、企業が取得時季を指定する必要はありません。
この制度は、あくまですべての対象者について「年5日以上の有給休暇取得」を確保するための仕組みとして位置づけられています。

参考:厚生労働省│年5日の年次有給休暇の確実な取得

取得義務の対象となる従業員

年5日の有給休暇取得義務は、雇用形態を問わず、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての従業員に適用されます。
正社員だけでなく、一定の条件を満たすパート・アルバイトも対象となる点に注意が必要です。

フルタイム労働者の場合、入社から6か月間継続して勤務し、直近1年間の出勤率が8割以上であれば、年10日の有給休暇が付与され、取得義務の対象となります。

一方、所定労働日数が少ないパート・アルバイトについては、勤務日数に応じて付与日数が段階的に定められており、次の条件を満たす場合に年10日以上が付与されます。

・週4日勤務:継続勤務3年6か月以上
・週3日勤務:継続勤務5年6か月以上
※いずれも、直近1年間の出勤率が8割以上であることが要件です。

年5日取得できなかった場合の罰則

年次有給休暇は、労働基準法で保障された労働者の権利です。
そのため、年5日の有給休暇取得義務をはじめ、法令に反する対応を行った企業に対しては、罰則が設けられています。

違反した場合は30万円以下の罰金

労働基準法では、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、毎年5日以上の有給休暇を取得させることが使用者に義務付けられています(労働基準法第39条7項)。

企業は、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、対象となる従業員に5日分の有給休暇を取得させなければなりません。

従業員の請求や計画年休で5日分の取得が確保できない場合には、企業が取得日を指定する「使用者による時季指定」により、取得を確保する必要があります。

罰則が適用される主なケース

年5日の有給休暇取得義務に違反した場合、次のようなケースで罰則が科される可能性があります。

従業員に年5日の有給休暇を取得させられなかった場合

対象となる従業員について年5日の有給休暇取得が確保できなかった場合、労働基準法第39条7項違反として、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

就業規則に定めがないまま時季指定を行った場合

使用者による時季指定は、就業規則にその方法や対象者を定めたうえで行う必要があります。
労働者が10人以上いる事業所では、就業規則の作成・届出が義務付けられており、休暇に関する事項も必ず記載しなければなりません。

規定がないまま時季指定を行った場合、労働基準法第89条違反として、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

なお、企業が時季指定を行えるのは、あくまで年5日の取得が未達成の場合に限られます。
すでに従業員の請求や計画年休により3日取得している場合、企業が指定できるのは残りの2日のみであり、5日すべてを指定できるわけではありません。

従業員が指定した時季に有給休暇を与えなかった場合

従業員が有給休暇の取得時季を指定した場合、企業は原則として拒否できません。
企業に認められているのは、業務の正常な運営を妨げる場合に取得日を変更できる「時季変更権」のみです。

正当な理由なく取得を認めなかった場合、労働基準法第39条違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

罰金は「従業員1人ごと」に計算される

これらの罰金額は、違反した従業員1人あたりで算定されます。
たとえば、6人の従業員について年5日の有給休暇取得義務に違反した場合、30万円×6人として罰金額が計算される可能性があります。

もっとも、罰則は刑事罰であり、違反があれば直ちに科されるものではありません。 実務上は、まず労働基準監督署による行政指導が行われ、是正に向けた改善指導が行われるのが一般的です。

人事が有給休暇を適切に管理するためのポイント

年5日の有給休暇取得義務により、人事にはこれまで以上に正確な付与・取得管理が求められています。取得漏れや管理ミスを防ぐため、押さえておきたいポイントを確認しましょう。

有給休暇の付与基準日をそろえる

入社日を基準に有給休暇を付与すると、従業員ごとに基準日が異なり、管理が煩雑になりがちです。
そのため、毎年4月1日などに基準日を統一する運用を採用する企業も多くあります。

ただし、基準日を統一することで法定より不利な扱いにならないよう注意が必要です。 入社時に一定日数を前倒し付与するなど、不利益が生じない制度設計を行いましょう。

有給休暇の管理をシステム化する

有給休暇を手作業で管理していると、取得漏れや集計ミスが起こりやすくなります。
勤怠管理システムや労務管理ソフトを活用すれば、取得状況の把握や年5日未達成者の管理が容易になり、法令対応と業務効率化の両立が可能です。

計画的付与制度を活用する

有給休暇が取りにくい職場では、計画年休制度の活用も有効です。
年5日を超える部分について、労使協定を締結することで、企業が計画的に取得日を割り振ることができます。

制度を機能させるためには、ルールの明確化とあわせて、休暇を取得しやすい職場環境づくりが重要です。

人事が知っておくべき年5日取得義務の注意点

年5日の有給休暇取得義務を確実に履行するためには、どの休暇がカウント対象になるのか、ならないのかを正しく理解しておくことが重要です。
実務上、特に誤解が生じやすいポイントを整理します。

繰り越し有給は年5日取得義務に含まれない

年5日取得義務の対象となるのは、当該年度に新たに付与された年次有給休暇です。
前年度から繰り越された有給休暇は、取得日数が残っていたとしても、年5日取得義務のカウントには含まれません。

前年からの繰り越し分があっても、年5日取得義務は当該年度に新たに付与された有給休暇を基準に判断する必要があります。
付与日ごとに取得状況を把握できるよう、一覧で管理しておくと実務負担を軽減できます。

特別休暇では年5日取得義務を代替できない

夏季休暇やリフレッシュ休暇などの特別休暇は、年次有給休暇とは別の制度であり、原則として年5日取得義務の代替にはなりません。
特別休暇を取得させていても、有給休暇として5日以上取得させる必要があります。

例外的に、理由を問わず自由に取得でき、取得時季の制限もないなど、有給休暇と同等の性質を持つ特別休暇については、取得日数に加算できるとされています。
ただし、厚生労働省は、従来の特別休暇を廃止して有給休暇に振り替えるような運用は、制度の趣旨に沿わないと示しています。

取得できなかった場合でも義務は消えない

従業員が「忙しいから」「必要ないから」と有給休暇の取得を希望しない場合でも、企業の年5日取得義務が免除されることはありません。
企業には、法令を遵守する立場として、取得状況を把握し、必要に応じて業務調整や時季指定を行う責任があります。

実務上は、就業規則に年5日取得義務を明記し、制度の趣旨を丁寧に説明したうえで対応することが重要です。

時間単位年休は5日取得のカウント対象外

時間単位で取得できる有給休暇(時間単位年休)は、柔軟な働き方を支える制度ですが、年5日取得義務の「5日」には含まれません。
時間単位年休をいくら取得していても、別途、日単位で5日の有給休暇を取得させる必要があります。

年次有給休暇制度の本来の目的は、まとまった休暇による心身の回復にあります。そのため、時間単位年休は年間5日分を上限としつつ、年5日取得義務とは切り分けて管理することが求められます。

実際に問題になった対応例

年5日の有給休暇取得義務に違反した場合、直ちに罰則が科されるとは限りませんが、是正勧告に従わない、悪質と判断される運用が続くと、書類送検に発展するケースもあります。
ここでは、実際に問題となった代表的な対応例を紹介します。

時季指定を行わず取得管理をしていなかったケース

年10日以上の有給休暇が付与される従業員について、年5日の取得状況を把握せず、時季指定も行わなかったことが問題となった事例があります。
当該企業では、経営状況の悪化を理由に、有給休暇の取得を事実上認めない運用が続いていました。

労働基準監督署から是正勧告を受けた後も改善が見られなかったため、会社および代表者が労働基準法第39条違反で書類送検されました。
従業員から有給休暇の申請があっても受理せず、欠勤扱いとして処理していた点も、違法性を高める要因となりました。

このケースでは、年5日の取得を確保するために必要な「取得状況の管理」や「時季指定の検討」といった基本的な対応を怠っていた点が、重く判断されたといえます。

有給休暇の取得申請に応じなかったケース

従業員からの有給休暇取得申請に応じず、実質的に有給休暇を一切取得させていなかったことが問題となった事例もあります。
このケースでは、複数の従業員が有給休暇の取得を申し出ていたにもかかわらず、会社側がこれを認めず、結果として1日も取得できていませんでした。

有給休暇は、原則として労働者が取得時季を指定する権利を持っており、企業が一方的に拒否することはできません。
正当な理由がないまま申請を退ける行為は、労働基準法第39条違反に該当し、事業場の責任者を含めて書類送検されています。

このように、「忙しい」「人手が足りない」といった理由だけで有給休暇の取得を認めない運用は、法令違反と判断されるリスクが高い点に注意が必要です。

まとめ

年次有給休暇の年5日取得義務は、対象となる従業員に対して企業が確実に取得を実現させる責任を負う制度です。
未取得が発生すると、罰則の対象となる可能性があるだけでなく、取得管理の不備や不適切な運用が続けば、是正勧告や書類送検といった重大なリスクにつながる可能性もあります。

そのため人事は、基準日・付与日数・取得状況を正確に把握できる体制を整えたうえで、システム活用や計画年休などを組み合わせ、取得が進まない場合は時季指定も含めて適切に対応することが重要です。
あわせて、繰越分や特別休暇、時間単位年休など「カウントの誤解」が起きやすい点も整理し、制度を形骸化させない運用ルールを明確にしておきましょう。

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