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口頭で伝えた採用内定を取り消したいが...:専門家の回答は?

公開日2019/08/07 更新日2019/08/08
口頭で伝えた採用内定を取り消したいが...:専門家の回答は?

今回の相談は「口頭で出した採用内定を取り消すことができるか」です。「口は災いのもと」とも言いますが、勢いで内定!と伝えてしまうと、あとあと面倒なことになることがあります。口頭で内定を伝えてしまったら、どのような責任が発生するのでしょうか?そもそもの「内定」の意味と合わせて社会保険労務士の宮崎誠先生が回答してくれてますので参考にしてください。

Q:面接時に口頭で言った「採用内定」の効力はありますか。

社長が最終面接でつい「内定」と言ってしまうことがあるのですが、もっと良い人が見つかりやっぱり採用したくないということが度々あります。

口頭の内定にはどの程度の効力があって、またそれを取り消す方法はありますでしょうか?ご本人への伝え方など、ご教授いただけますと幸いです。

A:結論から言うと、できません。

決して不可能ではありませんが金銭による解決になるかと思います。本件を考える上ではそもそも内定とは何か?契約の成立時期は何時なのか?という点が重要です。

内定とは、応募の誘引に対し応募し、双方の合意に基づき、始期付解約権留保付労働契約が成立した状態です。この始期付解約権留保付労働契約は、一般的には「4月1日から労務の提供を開始し、仮にこの日までになんらかの事情があれば本件契約は解約される」というものです。

ですから、契約の成立時期は、双方の合意があった時に成立すると考えます(民法522条)。

労基法等では労働条件を通知しなければならない旨や、有期契約労働者に対し労働契約書の締結を義務付けていますが、これらがない(口頭のみ)場合でも、使用者側に対し何らかの罰がある可能性はあるものの、契約の成立を否定することはありません。

つまり、口頭のみでも労働契約は有効に成立しているものと私は考えます。

さて、この場合の解約方法ですが、内定の場合であっても正当な理由の無い内定取り消しは解雇権の濫用として無効とされます。

ではどの様な場合が正当なのか? これについては判例があります。「大日本印刷事件 最高裁二小 昭54.7.20判決」によると、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られるとされています。

簡単にご質問の件を照らし合わせて言うならば、他に良い人が見つかった程度のことが、重大な経歴の詐称と同等程度のものなのかということです。これについては、雇う側の見通しの甘さであって「雇われる側に何の落ち度も無い」と、少なくとも私は考えます。

もっとも、「口頭だからなんの証拠も無いから良いじゃないか」と言うのであれば、それはそれで立証が困難となるので有利には働くかもしれませんが、今のご時世、悪い噂は一気に広がります。今後の採用活動になんらかの悪影響を及ぼす可能性も考慮してください。

最後に余計なお世話かもしれませんが、社長は当然ながら社を代表する、影響力の非常に大きな存在です。ですので、ご自身の発言の重さを今一度考え直し、迂闊なご発言は控えられた方が良いのではないかと思います。

宮崎 誠(社会保険労務士)先生の回答

「解雇権の濫用」と「解約権留保付労働契約」について

応募者に採用内定を伝えるということは、宮崎誠先生が指摘するように、口頭であれ文書であれ、労働契約が成立したと考えるのが一般的です。

ただし、その労働契約は「解約権留保付労働契約」になります。新卒の場合、4月から就労となるケースがほとんどで、内定から就労まで期間が空くことになります。その間に、採用がNGとなるような事実が発覚した場合には、内定を解約ができるというものですが、そこには、誰もが認めるような合理的な理由が必要となります。

内定取り消しが認められる合理的な理由

合理的な理由とは、たとえば、卒業ができない、提出書類に虚偽記載があった、犯罪に関係したなど、第三者からみても明らかなものでなければなりません。合理的理由と判断されなければ、解雇権の濫用の適用となり、内定取り消しは無効となります。

内定取り消しについて法的に整備されるようになった背景には、新卒一括採用という日本独特の風習があります。企業にとっては、早い時期に内定を伝え、他社への求職活動をセーブすることで、自社の人員を確保することができます。

そのため、採用予定人員より多めに内定を出し、卒業目前に内定を取消すという会社が増え、その違法性が社会問題化しました。就職戦線が売手市場の今は、その逆のケースが頻発しているようですが、いずれにしても、今回のケースは、解雇権の濫用に該当するケースのように思われます。

まとめ

合理的な理由が無く内定を取消されることは、求職者にとっては重大なことです。そのため、採用する側の恣意的な判断で行われることのないように、法によって一定の制限が設けられているわけです。

「採用内定の取消」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性については、厚生労働省のHP、また、「採用内定取消しの裁判例」は、独立行政法人労働政策研究・研修機構のHPにあるので、そちらも参考にされるとよいでしょう。

厚生労働省

独立行政法人労働政策研究・研修機構

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