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【社労士執筆】なぜ企業不祥事は繰り返されるのか――内部通報だけでは防げない理由

公開日2026/03/05 更新日2026/03/04 ブックマーク数
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【社労士執筆】なぜ企業不祥事は繰り返されるのか――内部通報だけでは防げない理由

近年、多くの企業で内部通報制度の整備が進み、公益通報者保護法の改正への対応やガバナンス強化の観点から導入自体は一般的になりました。

しかし、制度を整えていても不祥事や労務トラブルが発生するケースは少なくありません。
現場では「制度があったのに防げなかった」「もっと早く気づけなかったのではないか」という声も多く聞かれます。

その背景には、内部通報制度の役割に対する誤解があると思われます。

内部通報制度は重要な仕組みですが、不正を未然に防ぐというより、問題を発見する“最後の安全装置”として機能することが多く、制度だけに依存した不正防止には限界があります。

重要なのは、問題が表面化する前の“兆候”を日常業務の中で捉えることです。
筆者の前職の信託銀行でのコンプライアンス実務の経験からも、不祥事の多くは事前に小さなサインが現れています。

本記事では、内部通報制度の役割と限界を整理したうえで、人事・総務・法務など管理部門が実務の中で実践できる「不正兆候管理」の考え方と具体的な対応を解説します。

[ 目次 ]
玉上 信明(たまがみ のぶあき)様
執筆者

執筆者

社会保険労務士玉上事務所 所長
社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士玉上事務所 所長
社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー
玉上 信明(たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。
2015年同社定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。
人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。

内部通報制度が整備されても不祥事が起こる理由

内部通報は問題発生後に機能する制度

内部通報制度は、実務上は「事後対応型」の制度です。

多くの場合、通報が寄せられる時点では問題がすでに発生しており、場合によっては深刻化しています。

つまり内部通報は最後の命綱という位置付けに近い制度です。

この点を理解せず、内部通報制度だけに未然防止の役割まで期待してしまうと、現場とのギャップが生まれます。
重要なのは通報が来る前に兆候を察知する仕組みです。

企業不祥事の多くは「兆候」が存在している

近年の企業不祥事の多くは、突然発生しているわけではありません。
多くの場合、現場では以前から何らかの違和感が感じられていました。

例えばプルデンシャル生命や中古車販売大手のビッグモーターの問題では、現場レベルでは以前から不適切な業務の存在が指摘されていたと報じられています。

また会計不祥事として知られる東芝のケースでも、強い業績プレッシャーや組織文化が問題の背景にありました。

こうした事例に共通するのは次の点です。
・現場には違和感が存在していた
・問題情報が共有されなかった
・管理部門が兆候を十分に把握していなかった

つまり多くの不祥事は突然起きたのではなく、時間をかけて形成されているのです。

内部通報制度が「使われない」企業の特徴

制度があっても実際には使われない企業は少なくありません。
その理由は明確です。

従業員は次のような不安を抱えています。
•人事異動や評価への悪影響(報復的な異動や評価)
•職場内での孤立(「裏切者」というレッテル・仲間外れ)
•キャリアへの悪影響(上層部からにらまれる)

これらの懸念が払拭されない限り、人は通報を躊躇します。
制度を作るだけでは心理的安全性は確保されません。これらの懸念を理解していない企業では、内部通報は有効に使われないでしょう。

通報が届く時点で経営リスクは拡大している

通報が寄せられる頃には、すでに問題が深刻化しているケースが多く見られます。
すなわち、顧客対応の混乱、業績・財務への影響、社内秩序の低下、企業価値の毀損や社会的信用の低下などです。

つまり、通報を待つだけの経営では対応が遅れてしまうのです。
内部通報制度の本来の目的は、従業員が現場で感じた違和感や疑問を、中間管理職を経由せずに経営層へ直接伝えられる仕組みにあります。
だからこそ、その趣旨に沿った制度設計と適切な運用が求められます。

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