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Fin Tech、Ed Techなど様々な「X-Tech」が注目され、それぞれの業界で導入されています。X-Techとは「既存事業とAI等先端ITとの組合せで、既存事業に新たな価値やイノベーションをもたらすサービス」のことです。このX-Techが企業法務の分野でも注目され、導入が開始されています。それが「リーガルテック」です。
リーガルテックは、企業の法務担当者や総務担当者の業務効率化にどのような影響を与えるのでしょうか。
目次【本記事の内容】
リーガルテック(Legal Tech)とは、「Legal」と「Technology」を掛け合わせた造語のことです。先端ITを活用した法律関連サービスを指します。
企業の法務担当者や総務担当者にとっては業務効率化を図れるサービスであり、企業法務の外部専門家である弁護士、社会保険労務士、弁理士などにとっては顧問先へ付加価値を提供できるサービスとされています。
企業法務の仕事は、非定型業務が多く省力化が難しいのが特徴です。
例えば業務委託契約を行う場合、経営リスクを防止するため、業務委託先の企業情報収集、許認可・登記の確認、契約書レビュー(契約内容の適正性チェック)などを、人が1つ1つ入念にしなければなりません。この業務特性が企業法務の業務効率化阻害要因になっています。
ところが、例えばリーガルテックを活用した「契約書レビューサービス」を利用すれば、法務担当者や総務担当者はこれまで人海戦術に頼っていたこの作業を省力化でき、もっと労働生産性の高い重要な業務に専念できるようになります。
リーガルテックは1970年代に米国でその概念が生み出され、間もなくリーガルテックサービスが開発されました。
米国で最初に開発されたリーガルテックサービスは「全米判例データベースサービス」でした。
日本などが採用している制定法主義と異なり、米国では過去に下された同種の訴訟判決を最も重要な法源とする判例主義を採用しています。このため民事訴訟を起こす際は、勝訴の可能性を判断するため過去の膨大な判例の中から訴訟の参考となる判例を探し出し、その争点を分析しなければなりません。これには多大な時間とエネルギー、コストを擁します。この問題を解決するため、全米の裁判所の判例をデジタル化したデータベースが開発されたのでした。
このように、当初は法律事務所向けサービスが大半でしたが、1990年代以降、インターネットが普及するとリーガルテックを活用した企業法務向けサービスが次々と開発されました。欧米では現在、判例検索の省力化、訴状作成や訴訟手続きの省力化、契約書作成の省力化、などを目的としたサービスがリーガルテックサービスの主流になっています。
また、海外では現在、欧米を中心に700-1000社のリーガルテック事業者が法律事務所や企業にサービスを提供しており、その市場規模は約1.8兆円と推測されています。
一方、日本では2015年頃からリーガルテック事業者が誕生し、現在は20社程度が、法律情報提供や弁護士を紹介するサイト運営、登記申請書や定型的契約書作成支援、適法性を担保した契約書テンプレート提供、チャットによる法律相談など、主に企業向けのサービスを提供しています。市場規模もまだ300億円程度と推測されています。したがって、日本ではリーガルテックサービスの普及がやっと緒に就いたばかりです。今後の企業法務向けサービスの拡充・高度化が注目されるところです。
FRONTEOの『リーガルテックAI白書』(2019年秋刊行予定)の刊行に向けた事前調査によると、リーガルテックに対する企業法務関係者の認知度は大企業が58%、中小企業が32%。このうちリーガルテックサービス導入済みの企業は大企業が17%、中小企業が12%となっています。
わずか3、4年前に始まった新しいサービスにしては、認知度も導入率も高いといえます。これは企業法務関係者の業務効率化ニーズの高さの反映といえそうです。
現在、企業法務向けサービスとしては電子契約、契約書作成・管理、契約書レビュー、契約手続き、特許・商標登録出願、法律相談・弁護士検索サイト、法令・判例データベースサービスなどが提供されています。
このうち、企業法務関係者の認知度が高く、企業法務の業務効率化・コスト削減や訴訟リスク予防に効果があるとされているのが電子契約サービスと契約書レビューサービスといえます。
・電子契約サービス
電子契約サービスとは、現在紙の書類で行っている契約手続きや契約書の保管を、インターネット上で電子的に処理するサービスです。
現在の契約手続きは基本的に次の手順で行われています。
(1)契約内容の合意
(2)契約書の作成
(3)契約書印刷(自社・相手先の2部)
(4)製本
(5)署名捺印、印紙貼付
(6)封入(自社・相手先の2部)、郵送
(7)相手先が契約書の内容を確認して署名捺印
(8)相手先が契約書2部のうちの1部を返送
(9)返送されてきた契約書の相手先の署名捺印を確認して保管
紙の書類の場合、これだけの手間がかかるので、契約書印刷から契約書の保管を終えるまで1カ月程度の時間を要するのが普通です。しかし電子契約の場合、契約書印刷から契約書保管までの時間を1週間以下に短縮できるといわれています。相手先が契約書を受け取ったか、契約書に署名捺印したかなどの確認もリアルタイムにできます。
また電子契約は、定期借地・建物賃貸借契約、投資信託契約約款など一部の契約を除き、人材採用時の雇用契約書から秘密保持契約書まで幅広い契約業務に適用できるとされています。
なお、電子契約導入のメリットとして、次の2点が挙げられます。
●業務効率化
契約書印刷、製本、郵送、保管など人手処理の省力化
●コスト削減
印刷・製本、印紙、切手、封筒、契約書保管、人件費などのコスト削減
・契約書レビューサービス
「完璧に処理して当たり前。1つでも処理ミスがあるとたちまち経営リスクが発生する」と、法務担当者や総務担当者の頭痛のタネになっている業務の1つが契約書レビュー(リーガルチェック)です。この問題解決に有効なのが契約書レビューサービスといわれています。
契約書レビューサービスとは、AIが契約書を読み込み、契約書の契約期間・条件を始めとする契約書書式の不備、違法事項、自社が不利益を被る事項、用語の誤り・混同・不統一、文言の誤り、曖昧表現などをAI が探し出し、マークまたは自動修正するサービスのことです。
現在の人手による契約レビューに比べチェックミス・漏れを防止できるので、契約書の品質や完成度が高まるとされています。
今後は日本でもリーガルテックサービス市場の成長と共に、リーガルテックサービス事業者の増加、新しいサービスの開始やサービスの拡充・高度化などが予測されます。
しかし、ユーザ側の企業は事業特性、企業法務の業務効率化・コスト削減ニーズ、リーガルリスク予防ニーズなどにより自社が必要とするサービスは異なってきています。法務担当者や総務担当者は企業法務の業務効率化を一日も早く実現するために、自社に適したサービスとサービス事業者の研究をすぐに始めると良いでしょう。
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