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決算書類作成の元となる試算表は、決算前に自社の経営状況をチェックできる重要な経理書類です。一見難しそうな書類なので作成はベテランに頼りがちです。しかし、ポイントさえ知っていれば、経理初心者でもそれほど難しいものではありません。
試算表とは、決算書類作成の前に、仕訳帳から総勘定元帳へ勘定科目データが正しく転記されているか否かをチェックするための月次集計表のこと。
試算表は貸方・借方の合計を集計した「合計試算表」、貸方・借方の残高を集計した「残高試算表」、貸方・借方の合計と残高を集計した「合計残高試算表」の3種類に分かれています。
合計試算表は、総勘定元帳の勘定科目ごとに借方の合計と貸方の合計を記入した試算表です。合計試算表は、転記ミスや仕訳ミスの発見には適していますが、残高が分からないのが難点です。
残高試算表は、勘定科目の各残高を記入した試算表です。貸借対照表や損益計算書の作成には適していますが、残高しか記入していないので転記ミスや仕訳ミスを発見しにくいのが難点です。
合計残高試算表は、各勘定の合計と残高の両方が一目瞭然なので、勘定科目の全体的な把握に適していますが、作成に手間・暇がかかるのが難点です。
月次決算をしなくても、月次で作成する試算表があれば月次決算の代わりになり、次のように当月の財務状況把握が可能になります。
1.売上高の状況
当月の売上高について、前月比や前年同月比との増減、予算達成度などをチェックできます。また売上高を商品別・部門別・取引先別・店舗別などに区分していれば、さらに詳細な売上チェックが可能になり、問題点の発見が容易になります。
2.損益の状況
当月の損益について、前月比や前年同月比との損益の増減、予算達成度などをチェックできます。また、損益を商品別・部門別・取引先別・店舗別などに区分していれば、例えばどの商品やどの取引先の売上が低下しているのか、どのような経費が増加しているかなどのチェックが可能になります。これにより利益が出ている場合でも、それが販促活動によるものなのか経費削減によるものなのかなどの原因究明が容易になります。
3.キャッシュフローの状況
当月の現金・当座預金の残高について、前月比や前年同月比との利益の増減をチェックできます。また売上債権(売掛金や受取手形)の増減、借入債務(買掛金や支払手形)の増減などのチェックも可能になります。これにより売上債権と借入債務のバランスを保つなど、キャッシュフロー適正化の早期対策が容易になります。
このように、試算表は財務健全化の指標として必要なのはもちろん、資金調達のシーンでも必要になります。
例えば銀行から融資を受ける際、銀行から融資審査書類の1つとして試算表の提出を求められるからです。
つまり、運転資金や設備投資資金を貸し付ける銀行側は、数年分の決算書と直近数カ月分の試算表を時系列で照合・分析することで貸付先の財務状況を的確に把握でき、貸し倒れリスクのレベルを判断できるのです。
一方、銀行融資を受ける企業側も、融資申し込み前に数年分の決算書と直近数カ月分の試算表を時系列で照合・分析することで自社の経営課題を把握でき、その対策を銀行側に説明することで必要な資金の満額融資の可能性が高まるのです。
試算表を作成する際のポイントが「残高科目」と「損益科目」の2つです。この2つは混同しやすいので、正確に知っておく必要があります。
残高科目は、自社に資産がどれだけあるのかの指標です。
◎残高科目の借方残高が資産
◎残高科目の貸方残高が負債
になります。
借方残高には現金・当座預金残高、取引先の売掛金残高などが記入されます。貸方残高には銀行等からの借入金残高、取引先に支払う買掛金残高等が記入されます。
借方残高より貸方残高が多い場合は、自社の負債が資産を上回っている状況なので、キャッシュフロー改善が急務なことを示しています。
一方、損益科目は自社がどれだけ儲けているかの指標です。
◎損益科目の貸方残高が売上収益
◎損益科目の借方残高が売上コスト
になります。
貸方残高には売上高、受取手数料、受取利息などが記入されます。借方残高には仕入金、支払手数料、支払利息などが記入されます。
貸方残高よりも借方残高が多い場合は、売上が赤字になっている状況なので、コスト圧縮が急務なことを示しています。
また、試算表作成における貸借対照表項目として気を付けるべきなのが、出入りの多い勘定科目です。
出入りの多い勘定科目とは、一般には現金・当座預金、売掛金、受取手形、買掛金、支払手形、繰越商品などを指します。これらは事業活動の中核を財務的に示す勘定科目であり、キャッシュフローや資産に対する影響度が高いので、月次での入念な変動チェックが重要です。
さらに、資金の借り入れが多い場合は短期・長期借入金のチェック、固定資産(設備・備品・車両等)の出入りが多い場合は固定資産各科目の金額チェックなども重要です。
同じく、試算表作成における損益計算書項目として気を付けるべきなのが、各種利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益等)の目標達成度です。
一般に売上高と売上原価のボリュームチェックで、売上総利益の目標達成度や原価率の適正度の検証ができます。
この他、人件費、設備管理費、販売管理費、流通管理費などの勘定科目のチェックで、経費の増減や営業損益を把握できます。有価証券売却損益、金融の受取利息・支払利息のチェックで経常損益の把握もできます。
このように、試算表は月次というリアルタイムに近い状態で、自社の財務状態の全容をほぼ把握できます。それだけに企業にとって試算表作成は、極めて重要な経営管理業務でもあるといえます。
合計残高試算表の作成に際しては、
①減価償却費は月割で概算計上しているか
②支払いの確定している賞与は概算計上しているか
③退職金がある場合は受給申告書を保存しているか
④月末未払費用で損益に大きな影響のあるものを未払計上しているか
⑤前月対比の確認において科目の不揃いがないか・あるべき経費が抜けてないか
⑥原価率に異常はないか
など、企業によっては10項目以上のチェックが不可欠になります。
この項目チェックを正確かつ効率的に行うために便利なのが、合計残高試算表の専門家テンプレートです。
経理初心者でも分かりやすいテンプレートなので、導入を検討すると良いでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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