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会社や個人事業主が、自社の記帳手続きや税務申告手続きなどを依頼するときに、やや紛らわしいのが、税理士事務所と会計事務所、どちらにすればいいのか、です。さらに税理士法人という区分もあります。それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、前提としておかなければならないのは、会計事務所、税理士事務所、税理士法人のいずれも、「税理士」が運営ないし所属しているオフィスであるという共通点があるところです。
会計事務所は、その名称から公認会計士が経営している事務所ではないかと誤解される場合もあります。ただ、会計事務所も税理士が運営しているのです。
もっとも、公認会計士は無試験で税理士業務も行えますので、税理士登録している公認会計士が会計事務所を運営しているケースもあります。また、中には「○○会計士事務所」を名乗っているところもあり、そこでは公認会計士が運営していますので、紛らわしさがぬぐえないのも確かです。
「法人」は、一般的な人間と同様、そのオフィス自体で権利や義務の主体になることができます。たとえば、税理士法人が不動産を所有したり、支払いの債務を負ったりする場合もありえます。
一方で「事務所」は法人化されていない組織であり、事務所そのものが権利や義務の主体となることはできません。たとえば、事務所の運営に必要な不動産の所有権や賃借権は、事務所の代表税理士が個人で握っている場合が大半です。
また、事務所は法人格のない組織ではありますが、税理士がひとりで運営している場合もあります。この場合は、事務所と代表税理士が実質的に一体化した社会的存在になっているといえます。
会計事務所、税理士事務所、税理士法人のいずれも、税理士の業務を執り行う本拠として機能しています。それぞれの事務所や法人に勤務しているスタッフも、所属している税理士の業務をサポートするために働いています。つまり、会計事務所、税理士事務所、税理士法人の三者とも、業務内容としては大差ありません。
税理士の仕事の基本となるのは税務業務です。他の事業者が行うべき税務申告の代行業務を、報酬を得て行えるのは、登録済みの税理士にしか許されていません。つまり、税理士の独占業務であり、アイデンティティともいえる中心的な任務といえるでしょう。
会社からの依頼を受けて法人税の申告を行い、あるいは個人事業主や申告が必要な社会人からの依頼を受けて、所属税の申告を代行します。また、こうした独占的代行業務に必要な書類作成などを行ったり、税務相談を受けたりすることがあります。
また、会社から依頼を受けて、従業員の年末調整(その年度の所得税に関する処理)を代行している税理士も多いです。納税の義務は日本国憲法でも明記されており、納税から無縁でいられる事業者は存在しません。つまり、税理士は会社や個人事業主の経済活動、ひいては日本国の存立を支えている重要な役割を果たしているのです。
いわゆる「会計業務」も、簿記に関する知識や技能に精通した税理士にとって重要な任務のひとつです。会社や個人事業主が、納税の基礎とする会計帳簿への記帳代行を行ったり、決算書類である財務諸表(貸借対照表・損益計算書)の作成を進めたりします。記帳の基礎となる領収書や振替伝票の収集・整理・保存なども、税理士による記帳代行業務の一環です。
また、従業員への給与計算を会社の経理部や人事部に代わって行うこともあります。
現代では会計ソフトでコンピュータ処理することができるため、複雑な複式簿記が求められる青色申告も、ソフトの指示に従って簿記に関する基礎知識がない人が行うことが可能になりました。しかし、自分自身で記帳する担当者に対して、会計ソフトの基本的な使用方法を指導したり、わからない操作での質問に答えたりすることも、大切な税理士業務のひとつとなっています。
また、近年では経営コンサルティング業務も、税理士にとっての重要な位置づけとなっています。大企業向けには専門の経営コンサルティングファームが存在しますが、中小企業向け、あるいはコンサルティングファームがない地方の企業向けには、税理士が経営相談を受けることが増えているのです。
また、資金繰りに関する相談や、金融機関から融資を受けるにあたっての相談を受け付けることもありますし、融資判断の重要な資料である事業計画書の作成についてアドバイスしたり、税理士自らが金融機関との交渉に臨んだりすることもあります。
このほか、新規起業家に対する創業支援、あるいは事業承継、保険など、企業活動のお金まわりに関する相談を税理士が総合的に引き受けるようにもなっています。
いずれも、税理士が運営していますし、いずれも法人化されていない事務所です。会計事務所でも税務は行いますし、税理士事務所でも会計業務を請け負います。つまり、会計事務所と税理士事務所の間に本質的な違いはなく、実質的に同じです。
会計に詳しくない人に対してであれば、会計事務所よりも税理士事務所のほうが、運営している資格者が税理士であると伝わりやすいメリットがあるといえるでしょう。一方で、会計業務の代行を外注したい企業にとっては、「会計事務所」というネーミングのほうが注目されるかもしれません。
しかし、会計に詳しい人に対しては、いずれも同じ業務内容だとわかっていますので、結局はどちらの名称を使っていても大差ないでしょう。
いずれも税理士が運営している点は文字通り共通していますが、税理士事務所(あるいは会計事務所)は法人格のない比較的小規模の税理士組織であり、税理士法人は比較的規模の大きな税理士組織であるという違いがあります。
税理士事務所は、いわゆる個人事務所として、税理士ひとりでも開業できます。一方で、税理士法人は税理士2人以上が所属していなければなりません。その点でも、税理士の本拠としての規模の違いが見て取れます。
税理士法人では、国際税務や税務訴訟のサポートなど、その人的規模の大きさを活かした複雑かつ専門性の高い、あるいはマンパワーを要する業務を引き受けることができます。その一方で、どの税理士に担当してもらえるかわからないところは、クライアント企業にとっては不安材料かもしれません。その点、税理士事務所では最終的に所長税理士に担当してもらえる確実性が特徴ですし、税理士の主要業務以外でも派生した業務も併せて担当してもらえる可能性があります。
「○○税理士事務所」という名称は、公的な登録がない単なる屋号です。他の税理士事務所と区別する役割しか果たしません。その一方で、「○○税理士法人」の名称は、法務局に正式に商業登記されていますので、その法務局が管轄する地域において、その名称を独占的に使用できます。後になって同一地域に同一の名称で開業しようとしている税理士法人に対して、名称変更や本拠地移転を促す機能があるのです。
一人の税理士は、税理士事務所をひとつしか作れませんが、税理士法人では、本拠であるオフィスのほかに、別の地域に支店(従たる事務所)をいくつも作ることができます。つまり、同一の運営体系の上でチェーン展開することができますので、税理士法人の名称が一種のブランドになっていくことにも繋がります。
税理士事務所・会計事務所・税理士法人のいずれも、税理士が運営している点では本質的な違いがありません。ただ、税理士法人は比較的規模が大きく、全国で支店展開している場合がありますので、その規模感を活かして専門性や事務処理負担が高い業務も請け負っています。
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