公開日 /-create_datetime-/

最近、ブラック企業でよく行われている固定残業代という賃金形態をご存じでしょうか。今や国を挙げて働き方改革に取り組み、労働環境の改善を目指している日本ですが、固定残業代を悪用して労働者に過酷な労働を強いるブラック企業が未だに横行しています。今回はこの固定残業代について注目し、そもそもどのような仕組みなのか、何が問題なのかについて詳しく解説しましょう。
目次【本記事の内容】
現在も多くの日本企業で行われているという固定残業代とは、残業をするしないにかかわらず、毎月一定の固定金額を従業員に対して残業代として支払うという仕組みのことです。
大きく分けて、「基本給組み込み型」と「手当型」の2種類があります。
① 基本給組み込み型の固定残業代
毎月定額の残業代を、基本給もしくは歩合給の中に組み込んでしまうという賃金形態です。求人情報などでは、「基本給40万円、60時間分の残業代込み」、「基本給25万円、ただしそのうち3割は残業代とする」などと紹介されています。
②手当型の固定残業代
毎月定額の残業代を、「手当」という名目で支払っていくという仕組みです。毎月固定で支払われるものとされ、残業時間の長短にかかわらず、必ず所定の額が支払われます。
原理的にいうと、固定残業代は従業員が一切残業をしなかったとしても、毎月同じ額が支払われる給与です。また、固定残業代分を超えて残業した場合は、労働に見合った給与を支払う義務が企業側に発生します。これだけみると労働者側に有利な制度で、企業側には利点が無いようにもみえますが、実態としては全くそうではないのです。
もし企業側が固定残業代として定めているものが実質的には残業代ではなく、基本給の一部を無理やり固定残業代と名称を変えているだけとしたらどうでしょうか。つまり、本来基本給+残業代として支払うべきものを、基本給の中に残業代も含んでいるとみなしてしまうのです。ブラック企業といわれる企業の多くは、このような雇用者側にとって都合の良い解釈で固定残業代という言葉を利用するようです。
この場合、企業側に一方的な利得が発生します。もともと基本給として支払うつもりだった給与の中に、実は残業代も入っていたと釈明できるわけです。これだと、従業員に残業をさせても、残業代を別途支払う必要はありません。
例えば、同じ労働者が勤務する企業から毎月固定で40万円の給与を受け取っている事例を想定してみよう。このとき「A社」は基本給だけで40万円受け取っているのに対して、B社では基本給30万円+固定残業代10万円を受け取っているとします。
一見すると、どちらの企業でも給与が40万円支払われているという点で、条件は大きく変わらないようにもみえるでしょう。
しかし、残業代の扱いが両社の間ではまるで違います。A社の場合、従業員が残業をした場合、基本給とは別に残業代が支払われます。一方、B社の場合、すでに固定残業代が支払われているので、別途残業代が支払われることはありません。
労働基準法の規定では、1週40時間、1日8時間(休憩時間を除く)を超えて働かせる場合、2割5分以上の割増賃金(法定休日の労働には3割5分以上)を残業代として支払うことが義務付けられています。固定残業代を導入している企業は、そのような割増賃金はすでに基本給と一緒に支払っていると主張できるのです。
ただ、固定残業代を導入していたとしても、不当な労働を強要していないのであれば、法的に問題ありません。例えば、固定残業代として支払われている分以上の残業をした場合、その超えた分についてきちんと労働の対価を支払っている場合です。
しかし、ブラックと呼ばれる企業における実態は悪質であり、どんなに残業させたとしても、固定残業代以上を支払わないということが横行しています。働いている労働者には「固定残業代として、皆さんに残業代は支払っています」などと言い張り、不当なほど安い固定残業代で、100時間以上残業させるということがザラに行われているのです。
固定残業代を支払っているという理由で、労働者に過酷な長時間労働を強いるという実態は、冷静にみるとまるで子供騙しのようなからくりといえます。しかし、実際にこのような手法がブラック企業ではまかり通っているのです。
企業側は悪質な固定残業制度を用いることで、費用としての残業代を最小限に抑えることができます。残業代の支払いを抑えた分については、顧客に提供する製品やサービスの低価格化につなげるブラック企業が多いです。
しかし、悪質な固定残業代というやり方でライバル企業に対して価格面の競争優位性を確保したとしても、長続きしないのは明らかでしょう。労働者に過酷な労働を強いることになるため、有能な人材ほど心身をすり減らす前に別の企業に転職します。長い目でみれば企業のコア・コンピタンス(自企業の核となる能力)を低下させるでしょう。
求人情報をみて、例えば「固定給40万円」といった掲載をみると、求職者の中には好待遇であると印象を受ける人もいるかもしれません。しかし企業の中には、その固定給の中に固定残業代を含ませていて、過酷な残業労働を強いているケースもあります。法改正により、求人の際の給与表記に固定残業代の有無などを明記するようになってきているものの、すべての企業に認知が進んでいないようです。
そのため、転職活動を行うビジネスパーソンは、面接時などに、双方の理解に相違がないかご自身で給与体系の実情などをしっかりと企業側に確認する必要があります。また、経営者・管理者の方には、自社がそのような不当な労働を強いていないかを改めてチェックすることをおすすめします。
ブラック企業とレッテルを張られないように、労働環境の健全性をきちんと確かめておくことが、ひいては離職率の低下や有能な人材の確保につながるでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
契約書チェック(契約審査)の重要性とチェックを行う際のポイント
オフィスステーション年末調整
ラフールサーベイ導入事例集
労働契約と業務委託契約の違いとは?契約書に記載すべき重要ポイントを解説
健康経営ソリューションとして 社宅・社員寮が果たす役割
衆院選の争点 「内需拡大の推進」41.8%政党支持率は、大企業と中小企業で違いも
研究開発費及びソフトウェアの会計処理 第3回 自社利用のソフトウェアの定義と会計処理等(企業会計と税務会計の違い)
新聞図書費とは?経理が押さえておきたい対象経費と仕訳の基本
旬刊『経理情報』2026年2月20日号(通巻No.1768)情報ダイジェスト①/税務
「区分記載請求書」とは?インボイス制度の「適格請求書」との違いを解説
家賃補助と社宅・社員寮、自社に最適な住宅補助制度の選び方
「チェックリスト付き」電子契約サービスの失敗しない選び方
郵便物の電子化による部署別 業務効率化事例
【新卒採用トレンド】優秀な人事は押さえている!新卒採用3大トレンド
社員と会社の両方が幸せになる生活サポートとは?
新型コロナ破たん、1月は一転して150件割れ
旬刊『経理情報』2026年2月10日号(通巻No.1767)情報ダイジェスト②/会計
棚卸評価損の仕訳とは?計算方法・仕訳例・評価方法をわかりやすく解説
月次決算のやり方と迅速に進めるためのポイント
2026年1月の「人手不足」倒産 36件 春闘前に「賃上げ疲れ」、「人件費高騰」が3.1倍増
公開日 /-create_datetime-/