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新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府から外出自粛や一部業種の営業自粛の要請が行われ、各企業や自治体では時差出勤やテレワークの導入などさまざまな試みをしながら、経済活動や行政対応などを続けています。
これまで、国は労働時間を削減し、休みを取得しやすい職場環境の実現に向けてさまざまな施策を進めてきましたが、あまり進展はみられませんでした。しかし、厚生労働省から「新しい生活様式」も発表されたり、今回のコロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、テレワークや時差出勤などが一気に普及する可能性があります。
実際に、トヨタ自動車は今回の経済活動の縮小を機に「在宅勤務拡大に対応するネットワーク基盤強化やツールの整備」「生産性向上に資する働き改革と在宅勤務ルールの確立」を行うと宣言しています。
そこで、国のこれまでの「働き方」「休み方」改革の取り組みや企業などへの支援制度についてまとめます。
目次【本記事の内容】
政府による長時間労働の削減、休日取得率の向上に向けた取り組みが本格化したのは2014年です。当時、働き過ぎによる過労死が社会問題としてクローズアップされており、その年の暮れには「ブラック企業」が新語・流行語大賞にノミネートされました。そうした社会情勢の中、政府は厚生労働省や内閣府を中心に働き方や休みの取り方の改革に着手しました。
その後、政府は2016年に働き方改革担当大臣を置き、「働き方改革実現推進室」を設置するなど時間外労働の削減や有給休暇の取得促進などの施策に取り組んできました。
もちろん働き方改革は労働時間や休日の取得だけでなく、賃金水準の引き上げやアルバイト・パートの待遇改善、外国人労働者の受け入れなど多岐にわたるのですが、もっとも喫緊の課題はやはり労働時間の削減でした。
これは過労死の問題が放置できないところまできていたのが原因です。それまでの法律では、残業時間の上限が決められていませんでした。決して野放しだったわけではなく、日常的に長時間労働が行われている企業には行政指導が行われましたが、違反しても罰則がなく、指導に従わない「ブラック企業」は少なくありませんでした。
こうした現状を改めるため、2018年に「働き方改革関連法」が制定され、2019年から順次施行されています。
この法律では、残業時間に上限を設けて、月60時間を超える残業への割増賃金率も引き上げ、違反した企業への罰則を定めました。また、年5日の有給休暇を取得させることや、すべての従業員の労働時間を客観的に把握することなどを企業に義務づけました。
働き方、休み方を変えていくには、制度の整備はもちろん、企業や働く人の意識も変えていかなくてはなりません。
これまで、日本は休まず働くことが美徳とされてきました。こうした日本人の勤勉さが日本経済の成長を支えてきたのは間違いないのですが、それによって、多くの人が健康を損なってきたのも事実です。今の日本で、人々の健康や命の犠牲の上に成り立った成長は許されません。
また、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の発達によって、労働環境は大きく変わりました。それまで、人が時間と手間をかけて行っていた作業を機械やロボットがやってくれるようになったのです。単純な作業では、スピードと正確性の点で人間は機械にとうていかないません。
これによって、人は創造や発想、温かな対応など、より人間らしい能力が求められるようになりました。こうした力は、心にゆとりがなければ発揮することができません。つまり、企業にとっても、従業員に十分休みを取ってもらうことがメリットとなる時代となったのです。
法の規制が強化されたから、長時間労働を命じると罰則が強化されたから、と企業としてのリスク管理の観点から働きを考えるのではなく(そうした観点も忘れてはなりませんが)、従業員を休ませることは企業にとってもメリットになるという意識を持つと、働き方改革も進めやすくなるのではないでしょうか。
企業が働き方改革を進めやすいように、国もさまざまな支援を行っています。そのうち、厚生労働省が働き方や休み方への意識の啓発や、地域・各企業の取り組みの紹介などを行うため、2015年に開設したのが「働き方・休み方改善ポータルサイト」です。
ポータルサイトでは、働き方や休み方の改善を進めるための支援制度やセミナーなどを紹介しているほか、会社や個人の取り組みについて自己診断もできるようになっています。労働時間管理や特別休暇の制度について他社の事例を数多く紹介しているので、参考になります。
また、大企業とは違って対策が難しいとされる中小企業に対しては、厚生労働省と中小企業庁が「働き方改革支援ハンドブック」を発行して、働き方改革の必要性を訴え、支援策などを紹介しています。
テレワーク導入や省人化、生産性向上のためのIT導入や設備投資には補助金や助成金の制度がありますし、中小企業の悩みのためである人手不足には専門家による相談窓口も設けられています。働き方を変えたくても人手不足や設備の問題でなかなか取り組むことができないという経営者は、ハンドブックを参考に一度相談してみてはいかがでしょうか。
社会が豊かになり、人々は日々の生活を安定させるだけでなく、社会に貢献したい、創造性を発揮したいなどと考えて働くようになりました。会社に対して、報酬の額だけでなく働きがいを求めるようになったのです。
そうした働く人たちの意識の変化を考えると、働き方や休み方を見直し、働きがいのある職を用意しなければ優秀な人材を確保できない時代になったといえます。
政府が求める働き方改革に対し「法律をクリアするにはどうすればいいか」と知恵を絞るのではなく、優秀な人材をいかに確保するか、豊かな人生を送るためにどう働くのか、という視点で働き方や休み方を考えてみてはいかがでしょうか。
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