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帝国データバンクの調査によれば、「新型コロナウイルス関連倒産」が全国で205件(2020年6月2日現在)発生しています。倒産企業の業種はホテル・旅館、飲食店、アパレル・雑貨小売店など生活関連業種が上位を占めています。
しかし、今後は新型コロナウイルスに起因した経済活動萎縮の影響で倒産企業は建設業、運輸業、製造業など幅広い業種に波及する可能性があり、新型コロナウイルス関連倒産件数の急上昇が懸念されています。
そのような中、取引先が倒産すると連鎖倒産を始め自社も大きな経営危機に見舞われる可能性があります。この経営危機を回避するため、経営管理のオールラウンダーである総務担当者が最低限知っておかなければいけない倒産の手続きについてお伝えします。
倒産とは、一般に「債務超過や債務弁済不能などで経営が資金的に行き詰まり、事業活動継続が困難になった」状態を指します。倒産は「法的倒産」と「私的倒産」に大別されます。
このうち、法的倒産は裁判所が関与する再建型の「会社更生」と「民事再生」、清算型の「破産」と「特別清算」の4つに類別されます。
一方、私的倒産は裁判所が関与しない「銀行取引停止処分」と「任意整理」に類別されます。
銀行取引停止処分は、手形・小切手の不渡りを同一手形交換所管内で6カ月以内に2回引き起こした場合に下される処分のこと。この処分を受けると、手形交換所加盟金融機関と当座取引や貸出取引(融資申込)ができなくなることから、金融機関や事業取引先から倒産と認定されます。
また任意整理は、債務超過や債務弁済不能に陥った企業が債権者との任意の話し合いで債務整理をすることです。
このほか、中小企業が事業活動を停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がないと管轄の労働基準監督署長が倒産認定をした場合は、「事実上の倒産」と呼ばれます。
ここでは法的倒産の手続きの基本的流れと、債権者(倒産企業の取引先)にとってのメリット・デメリットを解説します。
会社更生とは、会社更生法に基づく法的倒産手続きのことです。
会社更生法は第1条で「窮境にある株式会社について,更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により,債権者,株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し,もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする」と定めています。
資金繰りに行き詰まった株式会社が、裁判所の選任した更生管財人の監督下、債権者等の利害関係者の多数の同意の下に更生計画を策定し、これを遂行することにより、利害関係者の利害を適切に調整し、当該株式会社の事業再建を図る仕組みです。
会社更生は倒産の社会的影響が大きい株式会社(実質的に大企業)に適用される倒産手続きです。債権者や株主の権利も制約できるので、会社更生を機に合併、増資・減資など当該株式会社の抜本的組織改革を容易に行えるのが特徴です。
ただし、倒産手続きが開始されると既存の株式はすべて無価値になり、代表取締役は退任することになり、債権者はそれまでの取引関係がリセットされることになります。
①裁判所への会社更生手続き申請
②裁判所による財産保全命令と更生管財人選任
③裁判所の会社更生手続き開始決定
④更生管財人による会社更生計画案作成と裁判所への提出
⑤債権者等「関係人集会」での会社更生計画案議決
⑥裁判所による会社更生計画認可
⑦更生管財人による同計画実行
⑧会社更生手続き終了
裁判所に会社更生が認可されると合併、増・減資、定款変更、取締役総入れ替えなど、既存組織では不可能だった組織改革が可能になる。
それにより当該株式会社には様々なニーズが新たに生まれるので、債権者には新しいビジネスチャンスが発生する可能性がある
・優先権がある債権も会社更生手続きに従わなければならないので、債権者の権利行使が制約される
・会社更生手続きを開始すれば当該株式会社の倒産が公になるので、債権者も連鎖的に信用不安に晒される可能性がある
民事再生とは、民事再生法に基づく法的倒産手続きのことです。
民事再生法は第1条で「経済的に窮境にある債務者について,その債権者の多数の同意を得,かつ,裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により,当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする」と定めています。
民事再生は、資金繰りに行き詰まった法人が、裁判所の監督下で自主的に事業再建を図る仕組みです。このため、事業再建は基本的に代表取締役や理事長を始めとする既存経営者が続行するのが特徴です。
また、大企業以外の法人の事業再建を目的にした倒産手続きなので、中堅・中小企業、旧有限会社、合同会社、医療法人、学校法人などがその対象になります。
①裁判所への民事再生手続き申請
②裁判所による財産保全命令と監督委員(裁判所に委任された民事再生手続きの現場監督人)選任
③債権者に対する当該法人の民事再生説明会開催
④裁判所による民事再生手続き開始決定
⑤債権者による債権の裁判所届出
⑥裁判所に対する当該法人による届出債権の認否書提出
⑦当該法人による民事再生計画案作成と裁判所への提出
⑧「債権者集会」での民事再生計画案議決
⑨裁判所による民事再生計画認可
⑩当該法人による同計画実行
⑪民事再生手続き終了
・比較的短期間で事業再建ができるので債権者は債権回収計画を立てやすい
・債務者は優先権のある債権回収を拒否できないので、同債権回収は基本的に保護される。しかし同債権を無理に回収すると、民事再生手続きが頓挫する可能性がある
・基本的に経営者の入れ替えがないので、債権者は既存取引関係を継続できる
民事再生手続きを開始すれば当該法人の倒産が公になるので、債権者も連鎖的に信用不安に晒される可能性がある
破産とは,破産法に基づく法的倒産手続きのことです。
資金繰りに行き詰まった法人が、裁判所の選任した破産管財人が当該法人の財産を調査・管理・換価処分し、その資金を債権者に弁済または配当する仕組みです。
破産手続きにより当該法人は消滅します。財産も債務もすべて清算されるので、基本的な法的倒産手続きといえます。
①裁判所への破産申立て
②裁判所による破産手続き開始決定
③裁判所による破産管財人選定
④破産管財人による当該法人財産の調査・管理・換価処分
⑤破産管財人による債権者集会開催(債権者への換価処分状況説明会)
⑥破産管財人による債権者への換価処分資金配当
⑦破産手続き終了(当該法人が消滅し、法務局の法人登記も閉鎖)
換価処分資金は法律に基づき債権者へ公平に分配され、債権者の債権回収未収分は貸倒損失処理(損金算入)ができる
債権者は任意の債権回収ができず、また債権の一部しか回収できない
特別清算とは、会社法に基づく法的倒産手続きのことです。
破産と異なり、株主総会の会社解散決議を経て通常の会社清算手続きを行っている株式会社が対象になります。
会社法は第510条で「裁判所は清算株式会社に清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある時、または債務超過の疑いがある時は、第514条の規定に基づき、申立てにより当該清算株式会社に特別清算の開始を命ずる」と定めています。特別清算の申立ては清算人の他、債権者、監査役、株主などもできるとされています。
①裁判所へ特別清算申立て
②裁判所による特別清算開始決定
③清算人による債権の調査と負債額の確定
④清算人よる債権者との協定案作成と裁判所への協定案提出
⑤裁判所主催の債権者集会での協定案決議と裁判所の認可
⑥清算人による協定実行
⑦裁判所の特別清算手続き終了決定(これにより当該法人が消滅し、法務局の法人登記も閉鎖)
裁判所への手続きを比較的柔軟に行えるので、債権者は自社の債権額を短期間に確定できる。また協定案に対しては反対もできるので、債権者の意見が反映される可能性がある
会社清算手続き中の株式会社にしか適用されないので、倒産手続きの対象が限られる
ある日、突然取引先が倒産した場合、総務担当者は社内関連部署を総動員して当該取引先の事業継続の有無、代表者の所在、自社債権額、他の債権者の動きなどを迅速に把握し、自社債権の保全措置を取る必要があります。また当該取引先がどんな法的倒産手続きを取るかにより自社の債権回収方針も異なってきます。この取引先倒産対応を臨機応変に処理する上でも、総務担当者の法的倒産手続きに関する基礎知識は不可欠といえます。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁等にご確認ください。
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