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仕事とプライベートのバランスを保ち、健康で豊かな生活を送る「ワークライフバランス」。
一般的には、ベンチャー企業よりも人材が豊富で経営も安定傾向にある大手企業の方が、ワークライフバランスを実現しやすいというイメージがあるのではないでしょうか。
大手企業は残業を少なくしても仕事が回るが、ベンチャー企業は社員全員がハードワークをしないと経営が成り立たない。そんな風に思われている方も少なくないようです。実際、約4~5年前まではそうした風潮がありました。
しかし最近は、個々の企業により差はあるものの、ワークライフバランスを実現して、社員が生き生きと働いているベンチャー企業が増えてきています。
その背景には、以下のようなことがあると考えられます。
・採用難でワークライフバランスが取れないと採用できない
日本社会は現在、人材不足が深刻化しており、市場では採用難が続いています。その中で、特に管理部門においては働き手の大手志向が強く、ベンチャー企業は人材確保が厳しい状況になっています。
売り手市場でより働きやすい環境を選べる条件下では、わざわざ残業が多い会社を選ぶ人は少なく、ハードワークを求めていては人材採用はできません。実際に、従業員に過度な残業を強いていない企業の方が、ベンチャーの中でも採用が成功しているという傾向が見られます。
・業務効率化に熱心に取り組んでいる
限られた人材で成果を出さなければならないベンチャー企業の方が、大手企業より業務効率化に熱心に取り組んでいることも多いです。
近年のベンチャー企業のマネジメント層では、昔ながらの長時間労働を基本とした働き方ではなく、生産性を重視した短時間労働で成果を出す方が評価されることも増えています。
特に、IPO準備をしている企業は上場審査時に労基法をしっかりと守った運営ができているかを厳しくチェックされるので、三六協定内の残業時間におさえることに敏感になっていることも多いのです。
・新しいシステムやツールを活用して無駄な時間の削減に努めている
ベンチャー企業では、新しいシステムやコミュニケーションツールを積極的に導入する傾向が強いです。
特に、ベンチャー企業のマネジメント層は、成果を出すための環境作りに重点を置いていることが多く、そのためのテクノロジーやオフィスへの投資に前向きです。(オフィスへの投資とは、フリーアドレス化やオフィス内の配置工夫など。)
具体的にはリモートワークを認めたり、slack、chatworkといったコミュニケーションツールや社内SNSなどを活用したりして、働く場所や時間に裁量が持てるようにするケースが増えています。決まった勤務場所にいなくても短時間で質の高いコミュニケーションを取り、業務を遂行できる環境の創出が進んでいるのです。
在宅勤務やフルフレックスもベンチャー企業では比較的一般的な制度として浸透してきています。
結果として、通勤や移動、不必要なコミュニケーションに使われていた無駄な時間が節約され、ワークライフバランスを実現しやすくなっています。
・社内コミュニケーションが速い
コミュニケーションについては、組織規模が大きく複雑化しやすい大手企業より、社員数が少なく意思決定者との距離が近いベンチャー企業の方がスピーディーに行えることが容易に想像できます。社内の情報共有にかかる時間が少ないので、同じ量の仕事でも速く進められて業務時間を短縮することができるのです。
稟議書などの必要がなく、口頭で相談して、その場ですぐに回答が得られるという仕事の進め方をしている企業も少なくありません。
また、1つの仕事に多くの人の手が関わる大手企業では、あらゆるプロセスにおいて、管理のための進捗確認やチェックを設けていますが、ベンチャー企業は比較的性善説に基づいて運営していることが多く、管理やチェックに工数がかからないことが多いです。(ここに人手や時間を費やせないという実情もあります。)
以上のような背景から、最近では管理部門でも労働時間を減らし、ワークライフバランスを実現させられるベンチャー企業が増えているようです。ただし、少数精鋭タイプのベンチャー企業の場合は、業務上のトラブルや急なM&Aなどのイベントで受ける一人当たりのインパクトが大きく、また急な同僚の退職などで一時的な残業過多が発生するケースもありますので注意は必要です。
人生が100年時代になり、価値観も多様化する中、ワークライフバランスを重視する労働者は益々増えることが予想されます。
MS-Japanに来られる求職者の方が挙げられる転職理由も「残業が多い」という声が多くなっており、現在の職場が大手企業であるかベンチャー企業であるかに限らず、残業時間が少ない環境を求める傾向は強まっています。
会社の規模に関わらず、優秀な人材を確保するためには、社員のワークライフバランスを考えた労働管理の必要性が高まっていくことでしょう。
まとめ
今や会社の質は「大手」「ベンチャー」という括りでは語れなくなっています。
企業規模に関わらずそれぞれの企業の体質や取り組みに注目し、個別にしっかりと見極めることが労働者には求められています。
「ハードワークでは人が採れない」「労基を守らないと上場できない」「限られた人材で、最短で成果を出す必要がある」という現実に直面しているベンチャー企業は、厳しい状況の中でも生き残るために、さまざまなシステムやテクノロジーを駆使して、労働環境の改善に努めています。その結果、ワークライフバランスの実現を可能にしているところも出てきていますので、そうした企業に目を向けてみてはいかがでしょうか。
(文/MS-Japan働き方研究所 中川 英高)
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