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経済産業省が2018年4月に公開した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」によると、法務部門を統括する取締役(チーフリーガルオフィサー:CLO)を設置している企業はアメリカが100%だった一方、日本ではごく一部の企業に留まるとの調査結果が出ました。
日本企業の法務部門はアメリカに比べて規模が小さく、弁護士有資格者の比率も低いとされています。この記事では、日本とアメリカの法務部門の違いを説明します。
目次【本記事の内容】
2007年10月に発覚した神戸製鋼所のアルミ・銅製品の品質データ改ざん以降、エアバッグのタカタ、東洋ゴムなど日本の産業を支える製造業の不正が次々と明るみに出ました。世間一般に法令順守の意識が広まり、企業は消費者や官公庁、株主などから社会的責任に対する要求が急速に高まりました。
更にSNSが発達したことにより、レピュテーションリスクも高まっています。2021年3月には、ヴァレンティノが着物の帯を想起させる生地の上にモデルを立たせた広告を配信し、SNSでネガティブな投稿が相次ぎました。
企業は法律問題をクリアにするだけでなく、消費者へ十分な説明をして不安を解消する必要があります。顧客データを多くの企業が手軽に使えるようになった今、コンプライアンスへの対応がこれまで以上に重要になっています。
アメリカ企業は最高経営責任者であるCEOが、意思決定をする前に法務、財務、人事、戦略などを担う責任者にアドバイスを求めます。CLOと法務部はその意思決定を前に進めるためにはどのような課題があり、それをクリアするには何が必要なのかを検討します。ここがイノベーションを生みやすいポイントです。
日本の法務部門の場合、新たな事業やリスクに対する姿勢が慎重になりがちです。これは、CLOが不在だということと無縁ではありません。部門を代表する発言権を持った役員が欠けているために、法務部が法的なチェックする機能だけに特化してしまうのです。リスクをとりたくないので意思決定にも消極的になります。後述するように、法務部と経営陣の距離が遠くなっていることも問題の一つです。
法務部が会社としてとるべきではないリスクに対して屈してしまうこともあります。これは経営陣に対して強い態度をとることができないためです。
社会が目まぐるしく変化する中、法令順守は当然の前提として、企業は法的なスキルを活かして新たなビジネスの創出を行わなければなりません。日本の法務部も時代の変化とともに、在り方を変える必要がありそうです。
経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」で実施したアンケートに日本とアメリカの法務部の違いが良く出ています。
日本企業の法務部門の職員数は、平均18.9人。法務部に従事する職員のうち、弁護士有資格者の割合は17.4%でした。採用方針で法律事務所での実務経験のある弁護士を採用すると答えた企業は12.0%に留まっています。
アメリカの法務部門の職員数は金融業を除いて40~80名が平均的な水準です。弁護士有資格者の割合は全体の7割弱。法律事務所での実務経験のある弁護士を採用するとしている企業は63.0%でした。
法務部の弁護士有資格者の割合は世界平均で64%となっており、日本の低さが目立ちます。アメリカは法律事務所などで経験を積んでから法務部に移るケースが多く、日本と比較して入社時の段階で知識や経験にも差が生じていると考えられます。
日本で法務部門が経営陣から意見を求められる頻度は「毎日」が3.2%に留まりました。「週数回」は18.9%となっています。アメリカは「毎日」と「週数回」を合わせて7割弱です。アメリカの法務部門は経営陣からアドバイスを求められるケースが非常に多く、法務部との距離感が近くなっています。
また、日本では交渉に法務部門が参加しないと答えた会社が9.9%あるのに対し、アメリカでそのような回答は見られませんでした。アメリカでは意思決定や交渉の場において、法務部が重宝されているのがわかります。
重要案件に対して法務部による内容の変更について、日本は「変更可」が9.4%、「案件によって可」が30.7%に留まりました。アメリカは「変更可」、「案件によって可」で100%となっています。経営陣に対して強く意見をいうことができない法務部の立ち位置を端的に表しています。
法務部門は会社にとって2つの機能を持っています。会社を守るガーディアンとしての機能と、法的支援を提供して事業が円滑に進むように取り計らうパートナーとしての機能です。日本の法務部は外部の弁護士との連絡役になり、この機能を十分に果たせていないケースが目立っています。法務部は経営陣に寄り添い、問題を解決するためにどのような課題があるのか、どうやって解決するのかを考えるアメリカ式が今後は求められていくかもしれません。
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