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新入社員の早期離職の実態について「3年3割」という表現を耳にすることがあります。安定志向の若者が増えているともいわれる一方で、依然として3年以内に3割が離職することに疑問を感じている人もいることでしょう。
新入社員が離職するのは、主にどのような原因によるのでしょうか。また、若年者の離職を防ぐために企業はどのような対策を講じていけばよいのでしょうか。さまざまな調査結果から見えてくる企業の課題について解説します。
はじめに、新入社員が入社3年以内に3割離職するのは事実かどうかを整理しておきます。令和3年現在、入社3年を迎えた平成30年卒生の離職率は下記の通りです。
・5人未満:56.3%
・5~29人:49.4%
・30~99人:39.1%
・100~499人:31.8%
・500~999人:28.9%
・1,000人以上:24.7%
事業所規模が大きくなるにつれて、3年以内の離職率が低くなっていることが確認できます。従業員数100~499名の事業所で離職率はおよそ3割であり、これより従業員数が少ない事業所では3割以上、多い事業所では3割を切っているのです。
離職率は過去15年間ほぼ横ばいで、大きな変動はみられません。つまり、昨今の若者がとくに「辞めやすい」わけではなく、「安定志向で辞めない」ともいえないことが分かります。
3年3割離職は決して誇張された表現ではなく、新卒社員の離職状況を的確に表した言葉と考えていいでしょう。
では、新卒をはじめとする若年層の社員はなぜ仕事を辞めてしまうのでしょうか。下の図は、新卒正社員を対象に仕事への満足度を調査した結果です。

引用元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』
男女ともに「雇用の安定性」に対して満足度が高い一方で、「賃金」「人事評価・処遇」「教育訓練・能力開発」に対する満足度が低いことがうかがえます。
この結果を踏まえると、新入社員が抱きやすい不満には次の傾向があることが推測できるでしょう。
・入社したものの、給与水準が想像以上に低い
・能力や成果を正当に評価されていない
・能力やスキルを伸ばす機会に恵まれていない
上記のような不満を募らせていった結果、3年以内に辞めていく新卒社員が少なくないと考えられるのです。とくに賃金については、終身雇用が実質的に成立し得なくなった現代において、向こう10年・20年というスパンで給与が上がっていくことにメリットを感じない若者が増えていると推察されます。
コストをかけて採用・教育した新卒社員が3年以内に辞めてしまうのは、企業にとって大きな痛手です。多くの企業が若年層の離職を防ぐためにさまざまな対策を講じています。
下記は、若年正社員の定着のために講じてきた企業の主な対策として得た回答です。
【若年正社員の定着のために実施している対策(複数回答)】
・本人の能力・適性にあった配置:53.5%
・採用前の詳細な説明・情報提供:52.0%
・教育訓練の実施・援助:49.5%
・労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励:37.8%
・職場環境の充実・福利厚生の充実:36.6%
・仕事の成果に見合った賃金:36.0%
・仕事と家庭の両立支援:28.4%
・昇格・昇任基準の明確化:25.1%
若年正社員が最も不満を感じている「賃金」への対策を講じている企業は36.0%、「昇格・昇任」の基準を明確化した企業はわずか25.1%となっています。
新入社員が最も不満を抱きやすい賃金の改善は決して十分とはいえない一方で、「意思疎通」や「人員配置」に腐心している企業が多い実態が浮かび上がってくるのです。
新卒社員からみた場合、最も不満を抱えている点に対処してもらえないと映っても致し方ない状況といえます。自社が講じている離職対策が若年層のニーズに応えるものになっているのか、改めて問い直す必要があるでしょう。
年功序列・終身雇用は過去のものとなりつつあります。勤続年数とともに給与が上昇する仕組みになっていたとしても、入社3年以内に離職を検討する若年社員を慰留する材料にはならない可能性が高いのです。
新卒初任給を今すぐ大幅に引き上げることが難しいようなら、教育訓練の充実を図り「この会社で働いていくことでスキルアップできる」と実感してもらう必要があるでしょう。また、昇進や昇給の基準を明示し、努力が実を結ぶ評価体系になっていると伝えていくことが重要です。
新入社員が求めているのは、職場でのコミュニーション向上などの表面的な対策とは限りません。より本質的に今後のキャリアを見据え、人材価値を高められる環境を求めている若者は決して少数派ではないのです。
新卒社員が3年で3割離職してしまうのは、「我慢が足りない」「ストレスに弱い」といった理由ではなく、「人材価値を認めてくれる会社かどうか」をシビアな目で見極めた結果とみることができます。賃金・評価制度・教育制度には、いずれも「価値を認める」「期待を寄せる」といった要素が含まれていることは見過ごせない点といえるでしょう。
第二新卒をはじめ、20代の転職市場が活性化しつつある今、企業に求められているのは「いかにつなぎ止めるか」よりも「認め、育てていく」姿勢といえるのではないでしょうか。

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