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管理部門担当者が最低限押さえておくべき働き方改革関連法の概要

公開日2018/09/13 更新日2018/09/13

2018年6月29日、政府が今国会の最重要課題として位置付けていた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が成立した。

この法律は、日本の労働法制度における課題とされていた「正規社員・非正規社員の処遇の差」、「長時間労働」、「単線型のキャリアパス」について抜本的な改革を行うことを目的として、①労働基準法、②じん肺法、③雇用対策法、④労働安全衛生法、⑤労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)、⑥労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、⑦短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」という。)、⑧労働契約法という主要な労働関連法令を網羅的に改正するものであり、「戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革」といわれている。

働き方改革関連法の成立により、各企業は、残業規制や非正規労働者の均等待遇・均衡待遇などの新たな規制を受けることになる一方で、高度プロフェッショナル制度の創設やフレックスタイム制の清算期間の柔軟化などにより、人事制度設計における選択肢も拡大することになる。

働き方改革関連法が労務管理実務に与える影響は極めて大きく、各企業の人事・法務担当者においては、後述第2の同法の施行日までに、その対応を検討する必要がある。

働き方改革関連法の全体像・施行日

働き方改革関連法による主要な改正の全体像は、下図のとおりである。


これらの改正の施行日は、①は公布日(2018年7月6日)②は2019年4月1日③は2020年4月1日である。

ただし、以下の基準に該当する中小事業主については、②のうち時間外労働の上限規制の強化は2020年4月1日、割増賃金率の猶予措置の廃止は2023年4月1日、③のうちパートタイム労働法及び労働契約法の改正は2021年4月1日までそれぞれその適用が猶予される。

働き方改革関連法の概要1 長時間労働の是正・労働時間規制の見直し

(1) 時間外労働の上限規制の導入

現行労働基準法では、労働者代表との間で労使協定(いわゆる三六協定)を締結すれば、当該労使協定に定める上限を超えない範囲で法定労働時間を超えて労働させることが認められている。この労使協定に定める上限については、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年12月28日労働省告示)においてその限度時間が定められていたが、当該基準は告示に過ぎないため、法的強制力は有していなかった。

働き方改革関連法は、当該基準の内容を労働基準法に明記することにより法的強制力をもたせると共に、当該基準を満たす労使協定が締結された場合であっても原則として超過することができない残業時間の上限を新たに定めた。

(出典:厚生労働省HP

(2)フレックスタイム制の清算期間の柔軟化

現行労働基準法では、フレックスタイム制の清算期間の上限は1か月とされていたが(労働基準法32条の3第2号)、働き方改革関連法では、その上限が3か月まで延長された。

(3)年次有給休暇の付与義務の新設

現行労働基準法では、使用者は、労働者が請求した場合に年次有給休暇を付与すべきものとされていたが(労働基準法39条)、働き方改革関連法では、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、原則として毎年時季を指定して年次有給休暇を付与しなければならないものとされた。

(4)高度プロフェッショナル制度の新設

働き方改革関連法では、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省で定める業務に従事する労働者のうち一定の年収要件を満たす労働者につき、年間104日の休日を取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議及び届出等を要件として、労働時間、休憩、休日及び深夜労働に関する規定を適用除外とする特定高度専門業務・成果型労働制度(高度プロフェッショナル制度)が導入された。

(5)割増賃金率の中小事業主猶予措置の廃止

現行労働基準法では、時間外労働時間が60時間を超える場合の割増賃金率は150%以上とされていたが、中小企業主については当分の間はその適用を猶予するものとされていた(労働基準法37条1項ただし書、138条)。働き方改革関連法では、かかる適用猶予措置が廃止された。

(6)産業医・産業保健機能の強化

働き方改革関連法では、産業医を選任した事業者は、①産業医に対し、労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定める情報を提供すること、②産業医の勧告を受けた場合には、当該勧告の内容その他厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告すること、③産業医の業務に関する事項として厚生労働省令で定める事項を、作業場への掲示等の方法により労働者に周知することなどが義務付けられた。

また、労働安全衛生法又はじん肺法に基づく措置に関連して、労働者の心身の状態に関する情報の目的外使用の制限、管理措置その他の取扱いに関する規律も新たに定められた。

さらに、これまで明確な規定が設けられていなかった労働時間の把握義務が明文化されると共に、①新たな技術・商品・役務の研究開発業務に従事する労働者、②高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対して、医師による面接指導および当該医師の意見に基づく健康確保措置を講じる義務が新たに定められた。

(7)勤務間インターバル制度の普及促進等

働き方改革関連法では、労働者の健康福祉を確保するために、終業から始業までの時間の設定(勤務間インターバル制度)に関する努力義務が定められた。

また、現行の労働時間等の設定の改善に関する特別措置法では、事業場単位で設置された労働時間等設定改善委員会に限り、その決議について労使協定に代替する効力が付与されていたが(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法7条)、働き方改革関連法では、代替休暇・年次有給休暇の時間単位取得・年次有給休暇の計画的付与に関しては、全部の事業場を通じて一の委員会(労働時間等設定改善企業委員会)の決議についても労使協定に代替する効力が付与された。なお、これに伴い、これまで設けられていた一定の要件を満たす衛生委員会について労働時間等設定改善委員会とみなす規定が廃止された。

働き方改革関連法の概要2 非正規従業員の処遇改善(同一労働同一賃金)

(1)均等待遇・均衡待遇の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

現行のパートタイム労働法および労働契約法においても均等待遇・均衡待遇の確保に関する制度が定められていたが、働き方改革関連法では、それぞれ以下のとおり変更が行われた。

(2)待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

働き方改革関連法では、(1)の均等待遇・均衡待遇が確保されていない場合には労働者が実効的に争うことができるようにするため、使用者の説明義務が新たに設けられた。

すなわち、使用者は、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の雇入後速やかに、その待遇の内容等を説明しなければならず、また、当該労働者から求められた場合には、通常の労働者との間の待遇上の差異の理由等についても説明しなければならないものとされた。

(3)行政による履行確保措置および行政ADRの整備

さらに、働き方改革関連法では、(1)均等待遇・均衡待遇の履行を確保するため、行政による履行確保措置に加え、労働者が無償で争えるようにするための行政ADR(裁判外紛争解決手段)を整備するための改正が行われた。

(文/TMI総合法律事務所 弁護士 近藤圭介)


記事提供元

TMI総合法律事務所「働き方改革サポートデスク」
TMI総合法律事務所では、働き方改革に関するニーズに応えるため、人事労務に精通した弁護士約20名による「働き方改革サポートデスク」を立ち上げました。弁護士によるリーガル支援から、働き方改革に対応した人事制度構築まで、ワンストップの支援を提供します。働き方改革に関するご相談は「働き方改革サポートデスク」にて受付中。

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