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財務省が公表した今年度の「国民負担率」は48%になる見込みです。前年を上回り過去最大の負担率となります。高齢化に伴う社会保障の負担増などで、国民負担率は上昇傾向が続いています。一体、この先、どうなっていくのでしょうか。
「国民負担率」とは、国民の所得に占める税金や年金、健康保険、介護保険、社会保険料などの負担の割合で、公的負担の重さを国際的に比較する指標の一つです。
国民負担率は、「税負担と社会保険料負担の合計」を「国民所得」で割って算出します。税金や社会保険料の負担が増えるか、あるいは国民所得が減少することで、国民負担率が増加することになります。
つまり、分母の所得が増えれば負担率は下がり、分子の税金・社会保険料が増えれば、負担率も上がるという構図です。ちなみに、昭和45年度の国民負担率は24.3%でした。半世紀を経て国民の負担は約2倍に膨らんだことになります。
ところで、給与所得者は社会保険料が給料から天引きされていますから、毎年のように社会保険料が値上げされていても、それほど負担を感じていないのかもしれません。
しかし、超高齢社会となった日本の社会保険制度は、かなり厳しい状況となっており、社会保険料の負担額は、ますます増えていくことが予想されています。
その分、所得が上がっていけばいいのですが、日本の給与水準は、30年間もの長きにわたって上がっていないのが実情です。春闘による賃上げ交渉も大詰めを迎えて、多くの企業が賃上げ実施の姿勢を示していますが、国民負担率を下げるほどの賃上げ額とはならないようです。
さて、税金や社会保険料の負担が少なければ、その分、個人の懐事情もあたたかくなり、誰もが低い方がいいと思うはずです。
しかし、国民負担率はその国の社会保障の充実度を示すものでもあります。負担率が高ければ、それに見合うだけの福祉サービスを受けているともいえるのです。
社会保障をめぐって、よく「高負担・高福祉」「低負担・低福祉」が議論となりますが、日本は「低負担・中福祉」とされています。しかし、国民負担率48%というのは、はたして“低負担”と呼べるのかどうかは、大いなる疑問ではないでしょうか。
過去最大となる日本の国民負担率ですが、諸外国と比較するとそれほど“高い”というわけでもありません。たとえば2018年度の各国の負担率を見ていくと、フランスが68.3%、スウェーデンが58.8%、ドイツが54.9%、イギリスが47.8%、アメリカが31.8%です。
数字だけを見ていくと、高福祉で知られる北欧と同程度の負担率となりますが、受けられる福祉サービスの内容に大きな差があることは明らかです。そのカラクリは、少子高齢化で膨らむ社会保障費の負担を、日本は将来世代へ先送りしているから、と指摘されています。
そのため、財政赤字が膨らんでいますが、その赤字を負担することになるのが若い世代です。財政赤字額を含めた「潜在的国民負担率」は56.9%になることも、しっかりと押さえておく必要があります。
赤字を埋めるのは、税金です。つまり、増税で賄うという構図です。たとえば東日本大震災の復興のために復興特別所得税や復興特別法人税ができたように、新型コロナウイルスからの復興のための財源を税金で賄う可能性もきわめて高いのではないでしょうか。
増税、さらには原油価格高騰による食料品や日用品の値上げラッシュが続いています。それに見合うだけの賃上げとなればいいのですが、そう期待通りにはいかないようです。このまま、国民負担率の上昇が続けば、実際に手にする収入は確実に減ることになります。それに備えた対策を見直すことも必要となりそうです。
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