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先日、大手電機通信会社のNTTグループが、「脱・年功序列」を進める方針を明らかにしました。年功序列は日本企業の三種の神器と呼ばれ、企業別労働組合、終身雇用と並び、高度経済成長を支えた日本的経営の屋台骨です。しかし、日本を代表する大企業において、その撤廃が宣言されたわけです。
今回は、年功序列とは何か、そのメリット・デメリットは何か、さらに20代でも管理職としての能力を持てるのか、について考えていきます。
目次【本記事の内容】
年功序列とは、社員の年齢や勤続年数を重視し、その年数に応じて組織内での役職や賃金を決定する人事制度のことです。年齢・勤続年数が長いほど組織内で評価され、職位・賃金が上昇します。
年功序列制度の根拠となっているのは、年齢・勤続年数が長い社員ほどスキル・知識が蓄積され、企業にとってより重要な存在になるから、という点です。
売上・利益を伸ばすには、優秀な人材が欠かせません。自社に長年勤務し、自社が属する業界に特化した知識やスキルを持つ社員は、自社に貢献できる能力もそれだけ高くなっていると予想できます。それに見合った職位と賃金を提供し、活躍してもらおうというのが、年功序列制度の目的です。
年功序列制度を採用するメリットの一つが、従業員に帰属意識を持たせることができる、という点です。帰属意識とは、自分が組織を形成する一員であるという強い意識を持つことで、会社への忠誠心とも言い変えることができます。
帰属意識が高くなれば離職率が低下するので、教育・研修にかけたコストを回収しやすくなり、企業の組織としての一体感も強まります。各社員が「自社を成長させたい」というモチベーションも持ちやすいです。
また、人材の育成計画を立案しやすいという点もメリットです。年齢・勤続年数に合わせた役割や昇進を考えればよく、長期的な視野で社員を育てることができます。
一方、デメリットとして挙げられるのが、いわゆる「事なかれ主義」のまん延です。
勤続年数さえ伸びれば賃金アップを図れるので、各従業員は無理をせずに与えられた業務をコツコツとこなすことを重視しがちです。奇抜なアイデアやイノベーションに失敗を恐れずに取り組もうとする意欲を持ちにくく、組織の停滞を招く恐れがあります。
こうした組織では、向上心が強く、すぐにでも成果を出したいと考える若い世代が離れていくことが多いです。そうした人材は組織全体からみれば少数に過ぎませんが、有能であることが多いので、長い目でみると企業にとっては大きな損失と言えます。
また、社員の平均年齢が上がるほど、人件費が増大するという点も大きなデメリットです。年功序列制度のもとで高年齢の社員が増えると、どうしても賃金総額が増大化してしまいます。
「脱・年功序列」を進めるということは、その企業においては年功序列のメリットよりもデメリットの方が大きく、その弊害をなくそうとする動きであると言えます。
年功序列を撤廃すると、年齢・勤続年数に関係なく役職・賃金が決定されます。つまり、20代、30代が管理職・高給取りとなり、40代、50代の薄給の部下を持つという状況が、一般的な事態として企業内に生じるわけです。
脱・年功序列を進めることは、年齢・勤続年数に関係なく管理職を任命されることを意味します。ここで一つ疑問として生じるのが、20代の若さで管理職は務まるのか、という点です。
一般的に管理職には係長、課長、部長などの職位があります。係長はチーフやチームリーダーとも呼ばれ、実務上の責任者であり、複数の一般社員を指揮する現場の管理職です。課長はマネージャーとも呼ばれ、複数の係(チーム・グループ)を管理する役割を果たします。そして部長はゼネラルマネージャーやディレクターとも呼ばれ、複数の課を統括する役職です。部長クラスになると、経営全体の意思決定にも影響力を持ちます。
管理職には大きく分けて、部下の健康や安全に配慮する「労務管理」、部下に数値目標などを示しつつ重要な意思決定に関与する「業務管理」、人材育成を担う「部下育成」などの役割が求められます。こうした役割を担うには、主に以下の三つの能力が必要と言われています。
●概念形成力
組織が取り組むべき課題の本質を見抜く能力です。企業経営の視点から将来の自社のあるべき姿を読み取り、外部環境分析や経営資源の配分を考察する力が求められます。
●業務遂行能力
組織としての計画・目標を立て、その達成に向けて組織をマネジメントする能力です。管理職は部下に指導する立場にもあるので、部下以上に業務内容・業界動向に関する知識・スキルを習熟している必要もあります
●対人関係能力
ここで言う対人関係能力には、リーダーとしての人間性を持つことも含みます。具体的にはリーダーシップ、コーチング、調整力などのことです。
こうした能力を20代で持つことができるのかは、個人の資質はもちろんのこと、業界によっても変わってきます。
例えば、今回「脱・年功序列」を宣言したNTTグループは、電気通信業という技術革新のサイクルが早く、市場動向が目まぐるしく変化する業界に属しています。こうした業界では、若くして企業が求める能力を身に付け、一定の成果を出している人材が輩出されやすいとも考えられます。
しかし、管理職に求められる概念形成力、業務遂行能力、対人関係能力などが、20代の段階で高い水準で身に付くのかどうかに、疑問の余地が残るのも確かです。これら能力形成が不十分な段階で管理職に就くと、組織・職場の雰囲気が悪くなる恐れもあります。
人件費抑制を狙った側面も強いとも思われますが、脱・年功序列を宣言したNTTグループの組織内で今後どのような動きが起こるのか、これからも注目を集めそうです。
すでに1990年代後半頃から、年功序列を重視する日本的経営には限界が来ているとの指摘が有識者の間から出されていました。しかし一方で、最近になって再評価する見方も強まっています。そうした中で年功序列を撤廃し、20代でも課長職・管理職を目指せるような人事制度の採用に踏み切ったNTTグループの動きには、経済界全体が注目しています。
ただ、年功序列制度には一定のメリットがあるのも事実です。各企業は「自社にとって最も合理的な方法は何か」をじっくりと考え、自社に合った人事制度を採用することが大切です。
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