サービスロゴ

学ぶ

Learn

サービスロゴ

もらえる!

Present!

企業再生のプロが選んだ新天地 四期連続赤字を4カ月で黒字に変えたCFOが挑む、まさにエキサイティングな事業改革【CFOインタビュー エキサイトホールディングス株式会社 取締役CFO 石井 雅也氏】

公開日2022/10/27 更新日2023/06/05

ネット広告や通信サービスの老舗企業だったエキサイト株式会社は、四期連続赤字と業績が低迷し、先が見えない状況の中で2018年10月のTOBによりXTechHP株式会社の傘下に入り、事業再生を図ることになりました。経営陣を刷新して積極的な組織改革と事業再編を断行し、TOB後わずか1年で黒字化に成功。

今回のインタビューでは、老舗ネット系企業の短期間での再生、そして「デジタルネイティブ発想で心躍る未来を創る。」というミッションのもと、積極的に新規事業開発に取組むエキサイトホールディングス株式会社の取締役CFOである、石井雅也氏をゲストに迎えお話しを伺いました。

企業再生の中での豊富なエピソードや、CFOとしての具体的な業務の進め方、これからの人材に求めることなどを、株式会社MS-Japanの執行役員清水悠太が、さまざまな角度からうかがいました。


<プロフィール>

⽯井 雅也 (いしい まさや)/ エキサイトホールディングス株式会社 取締役CFO

⼤⼿重⼯メーカー、コンサルティング会社を経て、2004年に㈱サイバーエージェント⼊社。
財務経理部⾨の責任者として決算・開⽰・税務等の業務に従事。
2019年2⽉エキサイト㈱⼊社。
2019年6⽉取締役CFO兼執⾏役員に就任、コーポレート部⾨を管掌。
2020年10⽉エキサイトホールディングス株式会社、取締役CFOに就任、コーポレート部⾨を管掌


新卒就職後、常に頭の中にあったのは社会の変化に対する興味

――最初にご職歴について伺っていきたいのですが、新卒では大手重工メーカーに就職されたんですね。現在の石井さんからすると意外です。そのあたりの経緯から教えていただけますか?

就職活動をしていた1997年当時は、ベンチャー企業やインターネット業界を選択するということが一般的ではなく、多くの学生が大企業を目指すという考えだったと思います。
私自身も業界や仕事内容などをあまり深く考えずに、大手企業だからという理由で選び、経理を2年、営業を2年経験しました。

でも、働き始めて仕事へのやりがいを感じることができず、歯がゆい気持ちでいました。そのような中、東証マザーズ市場(現在の東証グロース市場)の開設を契機に2000年頃からベンチャー企業が上場し始め、若い人がどんどん活躍している姿を見て、自分もベンチャー企業に身を置き、会社や社会を変えていけるような人材になっていきたいと思うようになり、転職することを決めました。
その時の転職先は、ベンチャーキャピタルから資金調達したばかりのISOコンサルティング会社でした。地方拠点の立ち上げや人材採用を担当していましたが、事業拡大は軌道に乗らず、次第に業績不振に陥っていきました。
資金がどんどん減っていく中で、管理部門の責任者を任されることになりました。経験もない中で事業再生プランを作成し、どうにか黒字化し、資金調達をすることができました。今思うと企業再生のヒントをこの頃につかんだような気がします。

――(清水)他の人とは違う一歩を踏み出したのは、石井さんのキャリアにとって大きいですね。次にサイバーエージェントに転職していますね。黎明期のインターネット業界を選んだ背景を教えてください。

結果的に企業再生という貴重な経験を得ることができましたが、ベンチャー企業本来の目的である新たなサービスやビジネスに挑戦し、世の中を変えていくような会社で働きたいと思いました。
2000年代前半でもインターネットは私たちの生活を変えつつあったので、インターネット業界で急成長し、広告事業やメディア事業など様々なビジネスを展開していたサイバーエージェントに入社しました。

サイバーエージェントで決算早期化などを推進

私が入社した当時のサイバーエージェントは、会社や事業の成長スピードに管理体制が追いついていない状況でした。決算業務に時間がかかり、事業へのサポートも十分にできていなかったため、管理部門である自分たちが事業の成長を止めてしまうのではないかという恐怖がありました。

決算は、過去の活動の集計でしかないため、過去のことに使う時間を減らし、事業の未来のために時間を使うということを心がけ、システム化・仕組み化を推進し、決算の早期化に着手していきました。
結果的に、変化が激しくスピードが重要なネット関連企業の中で、最も決算発表が早い会社となりました。

――(清水)この頃から、ご自身の担当業務や所属部門に囚われず、経営視点で仕事をされていたようですね。石井さんご自身としては、自分の仕事をどのように捉えていましたか?

そうですね、経理、経営企画、資金調達等の財務、投資、システム構築、M&Aと幅広い業務を横断的に対応していて、何でも屋でしたね。当時は、CFOを目指したり、望んで幅広い業務をやったりしていたわけではなく、会社にとって必要なことをその時々でやっていたという感じです。そもそも私の場合、仕事は特定の仕事や専門性にこだわりはありませんでした。

急成長するベンチャーに在籍していること自体が刺激的で、その中でやるべきこと、自分が貢献できることは何でもやる気持ちでいました。結果的に、会社や事業の成長を支え、未来を見据えた経営数値を扱うという仕事がとにかく楽しかったと記憶しています。

もう一度どこかで勝負したい、次の狙いはTOB直後のエキサイト

――会社としても、石井さんご自身としても、これからというタイミングで、現職のエキサイトに転職されていますが、どのような背景があったんですか?

サイバーエージェントでの仕事は非常に面白かったですし、自分自身が貢献できている実感もありました。恵まれた環境で仕事をさせてもらっていたので、これから更に成長するサイバーエージェントに務め続けるというのも一つでした。
一方で、厳しい環境に身を置くことで成長できると思っていたので、もう一度、企業再生という修羅場を経験したいという気持ちが強くなっていました。そこで、大型の資金調達を終えた時点を一区切りとして退職しました。

――(清水)知見を活かして再生をやるという意味では、確かに2018年のTOB直後で経営が不安的な状況のエキサイトはまさにベストマッチですね。実際にエキサイトの再生はどのように進めましたか?

エキサイトは長年に渡り減収・赤字が続いていたので、成長余地のある事業があるのか不安だったのですが、入社してみると伸びしろのありそうな事業が残っていたのと、優秀な人材も在籍していたので、コスト構造や会社の仕組みを変えれば再生できそうだと感じました。
その一方でコストと組織階層が肥大化しており、それが原因で収益を圧迫し、意思決定や実行のスピードが出ない組織になっていました。

――(清水)その状況で、まずどこから再生を始められたのでしょうか?

最初にCEOの西條を含めた役員全員で、全社員との個別面談を行いました。外から入った私たちが、会社を立て直すのですから、まずはエキサイトのことを隅々まで把握する必要がありました。そのためには、実際にエキサイトで働いてきた人に話しを聞くのが一番です。

そのヒアリングで得た課題を考慮しつつ、部門別損益などの定量的なデータを突き合わせて本質的な問題点を探り、コスト構造の転換と事業の整理を進めました。ただし、事業の整理は行いましたが人員削減や給与カットといったことは一切行わずに進めていきました。

個別面談を通じて、会社へのロイヤリティの高さや人柄の良さといった社員の質の高さを強く実感することができました。事業は厳しくても、良い人材がいることは救いでした。そこで、私がエキサイトの再生のテーマとしたのは、「アーリー・ビッグ・サクセス(早い段階での大きな成功)」でした。じっくり時間をかけるのではなく、良い人材がおり、やる気があるうちに、短期的にあらゆる分野で同時に改革を行い、今いるメンバーで成功体験を積むことが必要と考えました。

そこからは、様々な改革を矢継ぎ早に進めました。外部パートナーとの取引や契約内容の見直し、不採算事業からの撤退などの業績改善を進めるとともに、中長期での再成長に必要な土台を作るために、組織階層をシンプル化する組織改革や昇給・評価制度の見直しなどの会社の仕組みを再構築していきました。

結果的には、4カ月目で黒字化し、新しい事業に大きく投資できるほどに利益を出せるようになりました。4期連続の赤字を、短期間で黒字決算にできたのは徹底的な改革を全社で実行できたためです。エキサイトは、本当に良いメンバーに恵まれていると思います。

企業にとって重要なのは再生よりも再成長

――(清水)短期間でエキサイトの再生を成功できた秘訣は、スバリ何でしょうか?

長年ネット業界にいて、様々な会社・事業を見てきたので、会社の適正な生産性や事業ごとの収益性などを肌感覚として持てていたのが大きかったと思います。

こういった肌感覚があったので、このコストを削減しても売上は減らないだろうとか、この事業にもっと投資をすれば伸びるだろうとか、そういった判断を入社した当初から行うことができました。

企業の再生は、そこから先、成長する段階まで軌道に乗せることが重要です。ですので、まだ成功したとは言い切れません。むしろこれからが始まりです。再生だけに終わらず、継続的な成長を実現できる会社をメンバーと一緒に作っていきたいと思います。

エキサイトの再上場、そして新しい成長事業を作り出す

――(清水)石井さんにとっては、これからが始まりというわけですね。では、今後のエキサイトはどんな成長をイメージされていますか?

再上場することが、再成長へのスタートラインに立つことだと思っているので、まずは再上場を目指しています。これも元に戻すことが目的ではなく、改めて成長性のある企業として認めてもらって上場することを目指しています。
既に着手している新しい事業として、クラウド経営管理ソフト「KUROTEN.(クロテン)」というサービスに力を入れています。これはエキサイトの再生で培った経営改善及び経営管理のノウハウを、プロダクトにするという発想で生まれました。
私自身の経験とノウハウをサービスに反映し、コンサルティングサービスも提供しています。

――(清水)再上場も新規サービスも非常にこれからが楽しみですね。これまでは、今いる人材を活かすフェーズだったと思いますが、これからは新しい人材の採用も進め得る段階ですか?

そうですね、成長フェーズの軌道に乗せる一つの取り組みとして新規事業の開発には非常に積極的です。それに伴い新しいメンバーも必要と考えています。特に新しいことに興味があり、壁にぶつかっても突破できる力を付けたい人に来て欲しいですね。

これからCFOを目指す人たちに対して

――(清水)最後に、これからCFOを目指す皆さんや、経営者として企業再生に取り組む皆さんにアドバイスをお願いします。

CFOにはファイナンス等の専門性や、経営判断を行うための自分なりの判断軸を持っていないといけないと思います。一方で、矛盾するようですが、会社の成長のために仕事は選ばずに会社にとって必要なことは何でもやることも重要です。

会社で起きていること全てを自分事化して、誰よりも課題の発見と解決に積極的に取り組むことがCFOを目指すなら必要だと思います。中長期的な戦略を考えることと、目下の課題に解決策を出すことを同時にやり続けることが重要だと思います。
それが出来ると、大変ですが成長も実感できますし、仕事がとても楽しくなってくるはずです。

――以上になります。本日はありがとうございました。今後のご活躍を期待しております。

まとめ

数字とデータを扱うことに強みを持つ石井さんですが、エキサイトの再生では社員との個人面談を通じて今いる人材を活かすことに尽力されました。それは、単純に適材適所に人員を配置するだけではなく、このメンバーと一緒に成功体験を積み、そして企業を再び成長フェーズに乗せるためだと語る姿に、冷静さと熱っぽい人情味が両立した独特の魅力を感じることができました。

CFOとして再上場に向けた取り組みだけではなく、今のエキサイトに必要な新サービス「KUROTEN(クロテン)」の立上げにも尽力する姿に、経営陣のあるべき姿をみることができました。
エキサイトという老舗ネット系企業の再生そして再成長に、これからも注目していきたいと思います。



インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員

2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。


その他のCFOインタビューはこちら



CFOインタビュー掲載ご希望の方は、下記フォームよりお問い合わせください。

ニュースを読んでポイントGET!(公開日の翌日13時前限定で取得可能)

おすすめコンテンツ

関連ニュース

人気記事ランキング

キャリア記事ランキング

新着動画

関連情報