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パワハラ防止法により、企業にはパワハラ防止措置が義務化されたが、なかなか職場からハラスメントがなくならないのが実情だ。
パーソル総合研究所が全国2万8,135人の男女(20~69歳の就業者)に実施した「職場のハラスメントに関する調査」*によると、2021年にハラスメントが理由で離職した人数(簡易推計)は、約86.5万人にのぼることがわかった。
人手不足により人材確保が難しくなっているなかで、企業はハラスメントに起因するこの離職者数を、どのように受け止めるべきなのだろうか。
しかも、深刻なのは約86.5万人のうち半数以上の57.3万人が、会社にハラスメントが退職の理由であることを伝えられずに退職していることである。
つまり、ハラスメントの実態が見えにくくなっているということだ。
宿泊業や飲食サービス業など、人材確保に苦悩する業種でハラスメントに起因する離職者が多い傾向にあるが、全就業者の34.6%が過去にハラスメントを受けた経験があると回答している。
ハラスメントの内容でもっとも多いのが、業務についての批判や言葉による攻撃である。職場では、ささいなミスに対しても乱暴な言葉遣いでの命令や叱責が常態化しているようだ。
では、こうしたハラスメントが疑われるケースについて、会社側はどのような対応をしているのだろうか。
対応したのはわずか17.6%という結果で、残りの82.4%は対応していないようだ。パワハラ防止法に罰則はないものの、会社がパワハラ防止措置の対策をしなければ、場合によっては損害賠償責任を問われる可能性もある。
調査時点では、パワハラ防止措置についてまだまだ進んでいないことがうかがえるが、2022年4月から中小企業にも適用となったことで、会社側のパワハラ対応が拡大していくのか気になるところだ。
職場からハラスメントを撲滅するためには、ハラスメントへの理解が重要だが、ハラスメント加害者となりやすい上司は、部下を飲み会やランチになるべく誘わない、ミスをしてもあまり厳しく叱責しないなど、部下と距離をとっていることも明らかになった。
しかし、このように部下と距離を置きながら、ハラスメント回避行動をとる上司と部下の信頼関係はどうなるのだろうか。上司との距離を感じている部下ほど、過去1年間の「成長実感を得られていない」という結果も出ている。
ハラスメントを防止するためには、対応措置を講ずるだけでなく、職場での対話的コミュニケーションを促すマネジメントの訓練や、部下の育成方法についても考え直す必要がありそうだ。
*【調査概要】
調査対象:全国の就業者 20~69歳男女 28135s
うち、① 5年以内ハラスメント被害経験者 n=3000s
② 5年以内ハラスメント目撃経験者 n=1000s
③ ハラスメント非経験・非目撃者 n=1000s
・いずれも性別×年代別に均等割付。また、①の業種(20分類)×雇用形態(正規・非正規)に合わせて、②③は割付。
・いずれもライスケール1問正答者 ※男性20代のみ16名の誤答者を含む
調査時期:2022年 8月30日~9月5日
調査方法:インターネット
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