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先日、民間企業が2024年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象に行った「内々定」に関するアンケート調査*の結果を発表しました。それによると、2023年3月末時点での内々定の獲得割合は全体の49.3%でした。これは前年同時期よりも14.3ポイントも高い数値です。内々定による新卒者獲得への動きが、日本の経済界で強まりつつあるといえます。
そこで今回は、内々定とは何か、内定と何が違うのかといった点について詳しく解説しましょう。
内々定とは、新卒採用ルールで定められている内定を出す時期(卒業年の前年の10月)よりも早くに、企業側が学生に採用を伝えることです。
新卒採用ルールは政府が経済団体などに要請をすることで決められています。2024年新卒者向けのルールでは、広報活動開始時期が大学3年(修士1年)の3月1日から、採用選考活動の開始が大学4年(修士2年)の6月1日から、内定を出すのが大学4年生(修士2年生)の10月1日からとされています。
つまり内々定は、正式に内定を出してもよいとされる大学4年(修士2年)の10月1日までの段階で、企業が学生に採用予定通知を行うことです。
新卒採用の現場では、より優秀な新卒予定者を採用すべく企業間で獲得競争が行われています。そのため企業としては「内々定」という形でより早期に採用通知を行うことで、採用予定者を確実に確保しようとするわけです。
内々定は正式な労働契約ではなく、法的な拘束力はありません。それでも内々定を受けた学生は、その企業に採用されたと同様の状況であるため、希望に合った就職先であればそれ以上の就職活動は控えます。
内定は、大学4年(修士2年)の10月以降に行われる正式な採用予定通知のことです。内々定よりも拘束力が強い取り決めで、内定以後は学生と企業との間で入社する約束を取り交わし、労働に関する契約が成立している状態となります。
内々定を受けていた学生は大学4年(修士2年)の10月以降に、企業側からあらためて「採用通知」と「内定承諾書」が送付されます。その内定承諾書に学生がサイン、捺印をして企業に提出すると、「内定」の状態が成立します。
採用通知には、就業開始日、就業場所、内定を取り消す場合の条件などが記されています。内定承諾書にサイン、捺印することは、採用通知の内容を承諾すること、つまり労働条件を受け入れ、就労を約束する書面を取り交わすことを意味します。一方内々定は、基本的にこうした書面による手続きなどがまだ行われていない段階、いわば口約束の段階です。
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今さら聞けない「内定」と「内々定」の違い
内々定は正式に内定している状態ではないため、学生側、企業側が取り消す意思を示しても基本的に問題はありません。学生側としては、より希望に合った企業から内々定をもらえれば、それまでにもらっていた企業からの内々定を解消しようとするでしょう。あるいは学部生であれば修士課程、修士の学生であれば博士課程に進学が決まったときも、内々定は取り消されるのが通例です。
一方で企業側としても、内々定を取り消すことは往々にしてあります。企業が新卒者の内々定を取り消すのは、以下のような場合です。
・企業の業績悪化
学生に内々定を出してから正式に内定を出すまでの数カ月の間に、急激な経済状況の悪化・業績悪化などが生じると、内々定が取り消される場合があります。たとえば2008年のリーマンショックでは、多くの企業において内定取り消しが行われましたが、同じような事態が内々定~内定時期の間に起これば、内々定を取り消す企業が相次ぐでしょう。
・学生の健康状態に問題
健康状態に変化があり、そのことを企業側に報告した場合、就業に適さないと判断されれば内々定が取り消されることがあります。
・学生が卒業・修了できない場合
内々定は早い段階で出されるので、その時点では学生が確実に卒業・修了できるかどうかは未定なこともあります。内定を受ける段階になる前に、採用年度までに卒業・修了が難しい旨を伝えれば、内々定は取り消されるのが通例です。この場合、卒業・修了できないということで、学生の側から内々定取り消しの申し出をすることも多いです。
・学生が不祥事を起こす
内々定を受けてから学生が犯罪行為をし、刑事罰を受けた場合も内々定は取り消される場合があります。ただし、刑事罰が原因で必ず取り消されるわけではなく、取り消しが合理的な判断であると認識される場合です。
たとえば、テレビで報道されるような罪を犯した場合は、刑法上の軽重に関係なく取り消されるのが一般的です。最近だと、悪ふざけのつもりで飲食店やバイト先でいたずらをする動画をSNSにアップし、問題視されています。こうした行為でマスコミに報道され、訴訟されたり逮捕されたりすれば、社会的な影響を考慮して内々定は取り消されるでしょう。
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一変した就職・採用を取り巻く環境での内定取り消し状況
転職者の場合、内々定はありません。内々定という言葉は「新卒採用ルールで定められているよりも前に、口約束で採用通知をすること」という意味をもち、「新卒採用ルール」があって初めて成立する概念です。転職者にはそのようなルールはないので、あるのは「内定」だけです。(新卒採用においても、そもそもルールといってよいのかという問題もありますが・・・)
内々定はあくまで口約束の段階ではありますが、学生の側から辞退する場合は早めに連絡することが重要です。また、メールよりも電話で直接辞退の旨を伝えるのが社会人としての礼儀といえます。一方で企業側としては、内々定を出せばそれで新卒者を確保できわけではないため、辞退されることを踏まえた採用活動を行うことも必要です。
*【調査概要】
・調査期間:2023年3月24日~2023年3月31日
・調査対象:2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生
・有効回答数:569件
・調査方法:インターネットでのアンケート調査
※各項目の数値は小数点第二位を四捨五入し小数点第一位までを表記しているため、択一式回答の合計が100.0%にならない場合あります。
■参考サイト
PR TIMES|2024卒学生の3月末時点の内々定率は<49.3%>。4月を待たずに5割に迫る。前年同時期を14.3ポイント上回り、早期化が顕著に。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
 
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