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『産業と技術革新の基盤をつくろう』は、国際連合が策定しているSDGsの「目標9」とされるものです。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。地球のかけがえのない資源や人々の基本的人権が、資本主義や文明によって侵食されすぎるあまり、不可逆的な崩壊、文明滅亡に繋がっていかないよう、今のうちに侵食を食い止めるため国連で掲げられた、17の目標の総称がSDGsなのです。
SDGsの目標9は、「強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る」と日本語で訳されています。
インフラとは「社会基盤」の意味で、それがなければ住民の現代的な生活が成り立たないほど重要な人工設備のことです。
具体的には、水道(上下水道、ダムや浄水場)、電気(発電所や電線網)、ガス(ガス管、ガスタンク)、通信ネットワーク(電話回線、テレビやラジオの公共電波、インターネット接続設備)のほか、道路、鉄道、港湾、空港などといった公共交通機関を含んだ設備を指します。
大きな自然災害の後には、深刻な停電や断水などが起きたり、道路や鉄道などが崩壊したりしますが、いわゆる発展途上といわれる国々ではなかなか復旧させることができない現状があります。住民はなかなか通常の暮らしを取り戻すことができず、心身の健康を害したり、経済活動の停止によってさらに生活が厳しくなったりしています。
そこで、強靭なインフラを整備するだけでなく、インフラが災害や事故で断たれたとしても、世界中の技術支援により速やかに復旧させることができる態勢を整えることが、SDGsで達成すべき目標のひとつとされているのです。
従来から、CSR(企業の社会的責任)を果たす一環として、SDGsの各目標をクリアすることを目指した外部向けのPRを行っている企業が増えています。
また、近年注目を集めているESG投資(社会的責任を果たしている企業への投資)においても、SDGsを達成しようと積極的に取り組んでいる企業が、適切な投資先と見なされる傾向があるようです。今後は、SDGsの達成に取り組んでいる企業の商品やサービスを多くの消費者が選択するケースも増え、中長期的には収益向上に繋がるものと考えられているからです。
実際に、SDGsの「目標9」を達成するため、具体的な取り組みを行っている企業の事例をご紹介します。
<プノンペンの奇跡(北九州市海外水ビジネス推進協議会)>
かつて、原始回帰の極端な共産主義政策を採ったポル・ポト政権(クメールルージュ)下において、1970年代から続いていたカンボジアの内戦では、電力や上下水道といった基本的なインフラが各地で破壊されたため、内戦の終結後も復旧が遅れた地域がありました。
そこで、日本国として整備を進めたカンボジア水道事業のマスタープランに沿って、1999年に福岡県北九州市の上下水道局が、現地のプノンペン水道公社に、インフラ技術支援を始めました。水道管の敷設だけでなく、その維持方法、さらに「漏水」や「盗水」など緊急時の対処法まで、公社の職員に指導したのです。
内戦終結時(1993年)、カンボジアの首都プノンペンですら、水道普及率は約25%にとどまっていましたが、2010年代には90%を優に超えるようになっています。さらに、蛇口から直接飲むことができる日本クオリティの安全で美味しい水道水の一般化に貢献し、徴収漏れのほとんどない確実な水道料金徴収体系も整いました。
これは「プノンペンの奇跡」と高く評価され、カンボジア政府から北九州市長や同市水道局職員に向けて、正式に友好勲章が贈られています。カンボジア人に親日家が多い状況にも一役買っている事業といえるでしょう。
2010年に発足した「北九州市海外水ビジネス推進協議会」は、北九州ウォーターサービスや西日本鉄道といった現地企業から、三菱電機や明電舎などの全国区の企業まで、約140社から組織されています。カンボジア支援で培った日本の水道技術の海外輸出事業につき、他国を対象にしても本格的に取り組んでいます。
<インフラ施工現場のIoT化(日立建機など)>
現場で動く建設機械やダンプトラックそれぞれに、GPSなどのモバイル機器端末を搭載し、機器と人の位置関係をリアルタイムで俯瞰することで、進捗管理や危機回避がスムーズに進み、インフラ施工の効率化、ひいては生産性向上に繋げる取り組みも、日立建機をはじめとする企業で行われています。
2018年からは国内向けの技術提供が行われていますが、将来的には海外のインフラ技術支援でも活躍するものと期待されています。
SDGsは、国際規模の非常に壮大な目標のように見えます。しかし、各企業がそれぞれの持ち場で、自らの強みを開発途上国の産業化のために貢献させることができ、そのムーブメントが世界に広まれば、達成困難な目標ではないでしょう。
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