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最高裁の差し戻しで注目があつまる、再雇用時の基本給減訴訟のポイントを解説

公開日2023/08/31 更新日2023/08/31 ブックマーク数1

最高裁の差し戻しで注目があつまる、再雇用時の基本給減訴訟のポイントを解説

定年になった人が再び雇用された際の基本給が大幅に減額されたことについて、自動車学校の元職員が訴訟を起こしました。一審・二審の判決においては、自動車学校側に約600万円の支払いが命じられましたが、最高裁判所は「基本給の性質や支給の目的を踏まえた審理が不十分である」として、審理を高裁に差し戻しました。


今回は、上記の訴訟の経過をたどりながら、正社員・非正規社員の基本給格差について考えてみます。


裁判のポイント

この訴訟は、自動車学校の元職員が定年退職後に嘱託社員として再雇用された際に基本給の大幅に減額されたことが不当かを争うものです。元職員2人は、定年前の基本給が「約16万~18万円」から、「約7万~8万円」に減額されたことが不合理であると主張しました。


名古屋地方裁判所による一審判決では、「定年を迎える前と同じ仕事内容にもかかわらず、基本給が正社員時代の60%に減少し、新入正社員よりも低いレベルであった」という事実を強調しています。この不合理な給与差に基づき、自動車学校に対して約600万円の支払いを命じました。


二審判決では、名古屋高等裁判所も一審の結論を肯定し、同様に600万円以上の支払いを指示しています。


しかし、最高裁判所の上告審判決においては、再雇用された社員が役職に就くことが想定されていないという事実が注目されました。「再雇用された社員の基本給は、正社員のものとは異なる性格・支給の目的をもっていると考えられる」との見解を示し、二審での基本給の性質に関する議論が不足していたと指摘し、審査をやり直すよう命じました。


つまり、正規雇用者と非正規雇用者(再雇用の嘱託社員)の基本給が異なるからといって、ただちに問題になるとは限らないという見解です。

「同一労働同一賃金」の根拠となる法令

最高裁判所の判決で引用されていたのは、「旧労働契約法第20条」です。旧労働契約法第20条は、日本の労働契約法において、正規社員と非正規社員との間の不合理な待遇差別を禁止する規定でした。


具体的には、労働者が同一の業務を行う場合、労働契約の形態(正規・非正規など)によって、「賃金」「労働時間」「休暇」などの待遇に不合理な差をつけてはならないとしていました。


旧労働契約法第20条は、非正規労働者の増加とともに、その保護を強化するためのルールです。非正規労働者が正規労働者と同様の業務を行いながらも、雇止めなどを受けるケースが増えたため、このような不合理な格差を是正する目的がありました。


しかし、どの程度の待遇差が「不合理」とみなされるかなどの基準が曖昧であるという問題もありました。現在は、労働契約法の改正に伴い、パートタイム・有期雇用労働法第8条に統合される形となっています。

まとめ

今回の判決は、単なる個別の労働訴訟を超えて、日本の労働市場全体に影響を与える可能性があります。再雇用のルール作りや正規・非正規の待遇格差の再評価、労働契約の透明性の確保など、企業には制度設計の見直しが求められるかもしれません。


最高裁で差し戻しになった訴訟は、通常、下級審(今回のケースでは名古屋高等裁判所)に戻され再審理が行われます。最終判決が下されるまで、引き続き注目が集まるでしょう。


■参考サイト
厚生労働省|Ⅲ 不合理な労働条件の禁止(第20条)


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