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家族を介護するために仕事を辞めざるをえない「介護離職」が社会問題になっています。離職する人は収入の不安も付きまといますし、従業員に介護離職された会社にとっては、優秀な人材を失ってしまう悩みもあるでしょう。このページでは、介護離職を防止するために、企業の立場でできる対策についてご紹介します。
介護離職とは、家族や身近な人の介護を理由として、仕事を辞めること全般をいいます。多くの場合は、企業に勤める会社員が離職する場合を指します。仕事と介護を両立するだけの時間的余裕や精神的肉体的な余力がない場合に、家族などの介護を優先する選択を行うときに、介護離職が起きます。
しかし、介護離職は離職者のQOL(生活の質)を低下させてしまうリスクを内包しています。離職によって収入の途が断たれるケースが多いからです。
たしかに、離職後であっても収入を確保する方法はあります。たとえば、インターネットによる在宅副業の方法、あるいはフリーランスとして仕事を請け負って在宅で仕事を行う方法もあります。ただ、今までに経験がない領域にチャレンジする場合、ほとんどの場合はかけた時間のわりに満足な収入が得られず、やはり介護との両立が難しくなるのです。
投資に慣れている人であれば、株式やFX、不動産などで介護をしながらでも一定の収入を確保できるかもしれません。しかし、家族が突然、病気や怪我などで介護を要する状態になった場合には、その後に投資を覚えようとしても無理があります。よって、他の家族や親族の全面的な協力を得られない限り、多くの場合は経済的に困窮するリスクを抱えてしまうのです。
また、今まで長年にわたって培ってきたキャリアも、家族の介護をきっかけとして喪失されてしまうおそれがあります。キャリアの積み上げが収入にも直結している場合があります。もし、介護を余儀なくされる事情が解消された後に、元の職場に戻ろうとしても、復職に際して、元の部署に元の給与水準で戻れることが法律的に保障されていない日本では、復職後の配置転換や給与削減などがまかり通りかねない事情があります。
よって、このようなキャリア分断が生じうる事情も、介護離職に伴うリスクのひとつとなります。
収入源が断たれて、今まで積み上げてきた社会人経験もリセットされかねない介護離職では、家族を介護しながらも自分の今後の人生に対して不安を抱えやすく、精神疾患などで「共倒れ」になりかねない危険性も指摘されています。
よって「介護離職をしてはならない」という方向性が、社会の共通認識としなければならないといわれているのです。
総務省の統計によれば、2017年に家族・親族などの介護・看護を目的として、仕事を辞めている「介護離職者」は、年間約10万人(99,100人)にのぼることがわかっています。
この統計調査は5年に1度行われており、前回の2012年の統計では10万1100人で大台を超えていました。その点に注目すれば、介護離職の人数は統計上、わずかに減っている傾向にあります。
また、離職をする人々全体の約2%が、介護を理由としていることからすれば、離職全体に占める割合は小さいように見えます。それでも、年間約10万人という、地方都市の人口にも匹敵する数の社会人が介護離職を余儀なくされている事実には間違いありません。介護離職者という、いわば「QOL低下予備軍」が存在し続けること自体が、この国にとって無視できない社会的損失といえるのです。
しかも、いったん介護離職をした後に、元の職場に復帰できる人は、約4人に1人にすぎず、中でも女性の復職が難しくなっている傾向にあります。
介護離職をしなければならない原因の一つとして「ひとりでピンチを抱え込んでしまう」ことが挙げられます。通常の心理状態であれば、他の家族や親族、友人などに助けを求められるところ、自己肯定感が下がっている状態では、助けを求めている自分が惨めに感じられやすいのです。よって、SOSを外へ発信できず、要介護者と共に内向きに閉じこもってしまいがちになります。
親や配偶者を介護するために離職する場合には、その要介護者に対して負い目を感じているケースが多いです。たとえば、日頃から親孝行が足りない、あるいは家庭を顧みずに仕事や趣味に奔走していたり、「過去にいろいろと迷惑をかけてしまった」との認識を持っていると、「借り」をつくっているように感じてしまうのです。
すると、親や配偶者が疾病や怪我、老衰などによって、いざ介護を要する状態になったとき、「せめて自分が介護しなければ、申し訳が立たない」との心理状態に陥りがちになります。この場合も、他人に素直に助けを求められずに収入源が立たれたまま、ひとりで介護を抱え込みがちで、経済的にも困窮しやすくなります。経済的に困窮すれば、介護の質も下がってしまう悪循環ともなりやすいでしょう。
両親ともに生きていれば、二人合わせて年金の額も十分ですが、片親になれば受け取れる年金額もほぼ半減となります。さらに要介護状態になれば、子どもの介護離職によって、2人で1人分の年金で生活を賄うことになり、とたんに困窮状態に陥ってしまう可能性が高くなります。
まずは、「介護離職をする必要がない」と、会社が従業員に周知する啓蒙の努力と、解決策の提示が求められます。
代表的な解決策は、介護サービスの積極活用と、介護保険の利用です。必要な介護の一部または全部をプロに任せることによって、他の家族の負担は大幅に軽くなり、仕事を犠牲にする必要もなくなります。
このことを知らないままで、慌てて介護離職をしてしまう人がいます。せめて、会社が定期的に周知するようにして、離職を申し出た従業員については、必ず理由を確認するようにしましょう。この場合も、本当の理由を隠さずに申告してもらえるよう、従業員と会社との円満な信頼関係を構築しておく必要があります。
介護保険を利用しても、一定の自己負担額が生じます。介護離職をしてしまうと、この自己負担ができなくなる危険性が高まるのです。よって、介護保険の自己負担分を問題なく支払えるだけの収入源は、必ず確保しておかなければなりません。
より高額の介護サービスが必要となる状況では、この自己負担分も高額になります。たとえ、親不孝の感覚を覚えていたり、顧みなかった家庭に負い目を感じたりしていても、これを単独で抱え込んではなりません。他の家族・親族と分担して、負担軽減に努めるようにしましょう。
また、どうしても自らの手で、一時的に家族を介護しなければならない状況に陥ったときには、「時短勤務(短時間勤務制度)」「フレックスタイム」「時差出勤」などのしくみを採用することで、平日(勤務日)であっても介護と仕事の両立を図れるような施策を採るようにしましょう。
さらに、企業は、各従業員に法律上認められている「介護休業」「介護休暇」を有効に活用できるようにすべきです。そして、介護休業ないし介護休暇を取得した従業員に対して、復職後も含めて、不利な扱いをしないように他の従業員にも周知徹底しておかなければなりません。
介護離職が社会問題になっていますが、その背景には、超高齢化社会の問題だけでなく「独身で働き盛りの中年社会人が増えていること」があると考えられます。介護離職者の約半数が、身近な人にも相談せずに決断しているとのことですので、介護離職の可能性が頭をよぎっている単身者も気軽に相談できる窓口づくりが求められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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