公開日 /-create_datetime-/

2023年は、「物価が上がっているのに給料は上がらない」という不満の声が上がった年でした。そんな中、民間の調査会社4社が「冬のボーナスの支給額は3年連続で前年増になる」と予測したことに注目が集まっています。 今回は、冬のボーナスが増加の予想と、その要因について解説します。
民間企業の冬のボーナスの平均支給額は2.1~2.5%ほど増えると民間の調査会社4社が予測を立てました。インバウンド需要の回復や、円安による製造業の収益アップ、また今年の春闘で基本給を引き上げる動きが広まったことや、人材不足に苦しむ企業が多いことが要因と考えられています。
また、一般財団法人労務行政研究所が10月に発表した「東証プライム上場企業の2023年年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査」によると、全産業ベースの東証プライム上場企業(187社)の冬のボーナスは、単純平均で80万28円、対前年同期比で1.5%増となる見込みです。80万円台は、1970年の調査開始以来初めてのことだといいます。
金額自体は伸びが期待できる2023年の冬のボーナスですが、配慮する必要があるのは物価の上昇です。もし物価の上昇度合いがボーナスの上昇度合いを上回っていれば、ボーナスの額面額が増えても、実質的には恩恵はないことになります。
みずほリサーチ&テクノロジーズの「2023年冬季ボーナス予測」では、物価上昇を勘案した実質ベースで見た場合、今冬のボーナスは前年比マイナスになる見込みになると指摘されています。計算式は「民間企業一人当たりボーナス支給額対前年比-生鮮食品を除く総合消費者物価前年比」であり、試算によると実質ボーナスは前年比マイナス0.2%です。
冬のボーナスが上昇した背景には、先述の「社会の賃上げ圧力」「物価上昇分の価格転嫁」に加えて、円安の影響が大きいと考えられます。円安と聞くと、消費者の立場からすると「物価が上がる原因」として捉えられることも多いでしょう。しかし、企業側、とくに製品を作って海外に輸出している国内の製造業にとって、円安はかなり有利な状況なのです。
円安であるということは、海外で製品を販売して獲得した外貨を、より多くの日本円に交換できることを意味します。たとえば、海外での販売価格1万ドルの製品を売り上げた場合、1ドル=100円であれば100万円の売り上げになりますが、1ドル=150円というより円安の状況になれば、150万円の売り上げになります。単純に売上増・収益増が生じるわけです。
製造業は自動車、家電、電子部品といった日本が得意とする分野であり、経済産業省の『2023年版ものづくり白書』によると、2021年度の日本のGDPは547.4兆円で、そのうち製造業は112.5兆円、20.6%を占めています(なお、サービス業は169.4兆円で30.9%、卸売・小売業は74.9兆円で13.7%、不動産業は65.6兆円で12.0%、建設業は30.2兆円で5.5%、その他は94.9兆円で17.3%です)。
実際、円安が進展した2022年度の国内製造業における営業利益の総額は19.0兆円で、この金額は過去10年で最も大きな金額です。製造業が円安の恩恵を受けていることが、国内全体のボーナス平均支給額の押し上げに貢献する、と考えられています。
非製造業も、コロナ禍の鎮静化および円安の後押しを受けてインバウンド需要が回復し、業績が好転している企業が多いようです。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、2023年7~9月期の訪日外国人の総旅行消費額(宿泊費、飲食費、交通費、娯楽サービス費、買い物代など)は1兆3,904億円で、コロナ前の2019年と比べても同期比17.7%増となっています。
訪日外国人が日本旅行でお金を使おうとする背景にあるのは円安です。たとえば、アメリカ人が日本で1万円の商品を買う場合、1ドル=100円であれば100ドルを用意する必要がありますが、1ドル150円という円安状況だと、67ドルほどで済みます。円安は外国人にとって、日本旅行をする絶好の機会となるわけです。
宿泊業や観光業など訪日外国人向けのサービスを展開している企業にとっては、円安により顧客が増えれば業績アップにつながります。この点も、今冬のボーナス増をもたらしている一要因と考えられるでしょう。
冬のボーナスは3年連続で前年を上回る見通しです。労働者の視点からすると、支給額が増えるのは端的に喜ばしい事態ではありますが、物価上昇分を換算した実質ベースで見ると今冬のボーナス額は前年比マイナスになるとの試算もあります。やはり望ましいのは、実質ベースで確実にプラスとなるようなボーナスアップです。
また、ボーナスを増やせるほど企業の業績が好調であることの背景には、物価高の要因でもある円安が大きく影響しています。日用品は輸入物が多いので、円安はどうしても身近な物の物価高をもたらしますが、一方で輸出やインバウンドに支えられる企業にとっては円安が業績アップをもたらし、結果としてボーナス増につながっている面もあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
 
 契約書チェック(契約審査)の重要性とチェックを行う際のポイント
 
 債権管理・入金消込効率化『Victory-ONE/G4』導入事例 ~30時間かかっていた入金消込がほんの数十秒に! 伊藤忠エネクス株式会社~
 
 【新卒エンジニア採用】内定承諾の決め手・辞退の本音
 
 サーベイツールを徹底比較!
 
 工事請負契約書とは?作成時の注意点などを解説!
 
 紙文化から抜け出せない経理へ──今すぐ始める「電子化」のススメ【セッション紹介】
 
 新リース会計基準による税効果会計への影響 第1回 新リース会計基準の税務への影響
 
 旬刊『経理情報』2025年10月20日号(通巻No.1757)情報ダイジェスト
 
 統合報告書と中期経営計画の関係性とは?
 
 いまの経理業務に限界を感じたら——再構築で見えてくる最適な経理体制とは【セッション紹介】
 
 家賃補助と社宅・社員寮、自社に最適な住宅補助制度の選び方
 
 経理・人事・法務のスキルと年収相関の完全ガイド【MS-Japan】
 
 ~質の高い母集団形成と採用活動改善へ~内定辞退者ネットワークサービス資料
 
 世界No.1の電子署名で業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化を実現
 
 上場企業・IPO準備企業必見!! 内部統制・監査の妨げになるアナログな入金消込とは
 
 旬刊『経理情報』2025年11月1日号(通巻No.1758)情報ダイジェスト①
 
 毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報など|10月13日~10月19日官公庁お知らせまとめ
 
 第2回(最終回) 事業所税の基本的な仕組み(その2)
 
 「BCP」企業の49.9%が策定意向、伸び率は1%台 形骸化の懸念も、人材とノウハウ不足への支援が急務
 
 事業所税の基礎知識 第1回 事業所税の基本的な仕組み(その1)
公開日 /-create_datetime-/