公開日 /-create_datetime-/
2024年4月から、事業所による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されたことをご存じでしょうか。2021年に制定された改正障害者差別解消法の施行によるもので、それまでは努力義務とされていましたが、4月からは「義務」として事業者側に課せられます。
そこで今回は、改正障害者差別解消法における合理的配慮の提供とは何か、企業が取り組むべき対策は何かについて詳しく解説します。
内閣府が発行しているリーフレットによると、障害者差別解消法が定義する障害者への合理的配慮とは以下の通りです。
・行政機関等と事業所が事務・事業を行うに当たって、障害者から社会的なバリアを取り除いてほしい旨の意思表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときに、必要かつ合理的な配慮を講ずること。
つまり「障害のある人が直面する不便さや不自由さを取り除くための柔軟な対応」を意味します。具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。
・物理的な環境への配慮・・・飲食店で車椅子のままで着席したいとの申し出に対して、店員がテーブルの椅子をどかしてスペースを確保する、など。
・意思疎通への配慮・・・筆談によるコミュニケーションをお願いしたが、弱視でもあるために文字が小さくて読みづらいとの申し出に対して、太くて大きなペンを用意し、大きな文字で筆談を行う、など。
・ルール・慣行の柔軟な変更・・・セミナー参加中、文字の読み書きに時間がかかるので、ホワイトボードに書かれている内容をノートに書き写しきれないとの申し出に対して、セミナー中にカメラでの撮影を許可する、など。
定義にもあるように、事業者側にとって負担が重すぎないことも要件として含まれています。費用や時間をかけて長期的に講じる対策ではなく、その場ですぐに実行できるような配慮・対応を講じることが、合理的配慮で想定されている内容です。
施行日直前の3月に、合理的配慮の重要性に改めて社会が注目することになった「イオンシネマ問題」が生じました。
これはテレビやYouTubeなどで活躍する車椅子インフルエンサーが、イオンシネマで映画鑑賞をした際にスタッフへの支援を求めたところ、「今後はこの劇場以外で鑑賞してもらえると、お互いにいい気分でいられると思うのですがいいでしょうか」などといわれた問題です。
この出来事をXで公表したところ、「障害者への配慮が足りない」としてイオンシネマ側を批判する投稿が殺到し、運営元であるイオンエンターテイメント側がお詫び文を発表する事態に発展しました。
イオンシネマで生じたような事態を防ぎ、企業側が合理的配慮を適切に行うために考えられる対策としては、以下の点が挙げられます。
・マニュアル・教育体制の見直し
合理的配慮は現場対応に委ねられる部分も大きいですが、マニュアルにより基本的な対応の仕方を明記しておけば、消費者に配慮しない言動・対応を生じさせることは防げます。イオンシネマ問題についても、スタッフの対応方法のマニュアル・教育が行き届いていれば、防げた事態といえます。
・募集、採用方法や就労環境の見直し
消費者だけでなく、障害のある労働者への配慮も必要です。障害者の採用・選考の際の対応方法、および職場での障害者からの要望への対応方法などが不適切であれば、合理的配慮に欠けるとの指摘が生じます。4月からの義務化に伴い、チェックの目はこれまでよりも厳しくなるとも考えられます。
なお「合理的配慮」は、働きやすい設備を整えるだけでなく、その場で柔軟に問題を解決する対応力を多分に含む概念です。企業・職場の組織文化によっては、障害者への対応に関する意識改革のための教育・研修も改めて必要かもしれません。
・「過重な負担」の基準を明確化する
改正障害者差別解消法における合理的配慮のポイントの1つは、実施にあたって「過重な負担ではないこと」が定義の中に入っている点です。つまり「どこまでやると過重なのか」を明確化しておくことも重要になってきます。事業に与える影響、実現の難易度、費用や負担の度合い、企業の財務状況、公的サポートの有無などを踏まえ、適法の基準を見極めることが必要です。
ただし、過重であり実現が難しい場合であっても、障害のある人にその点を理解してもらえるようにコミュニケーション・対話をしていくことが企業側に求められます。
2024年4月から、障害者への合理的配慮の提供が民間事業者にも義務付けられました。違反してもすぐに罰則が科されるわけではありません。しかし必要に応じて、主務大臣が事業者に対して報告を求めたり、助言・勧告を行ったりでき、違反の程度・内容によってはマスコミに報じられ、企業イメージを失墜させる恐れもあります。
なお主務大臣が求める報告をしない、虚偽の報告をする、といった事態が起こったときは、20万円以下の過料が科されます。現場での対応に問題が起きることのないよう、従業員に理解が広がる対策を準備しましょう。
■参考サイト
変わる障害者雇用制度、2024年以降の法改正とそのポイントを解説
【弁護士執筆】障害者差別解消法改正(2024年4月施行)法務対応時のポイント
「障害者雇用相談援助助成金」の詳細が公表 障がい者実習生の受け入れ・新規雇用に助成金
Web請求書の導入にあたり費用対効果を高める方法、お伝えします!
債権管理・入金消込効率化『V-ONEクラウド』導入事例 ~午前中いっぱい掛かっていた消込作業がわずか数分で完了! アデコ株式会社~
管理部門兼任の社長が行うべき本業にフォーカスする環境の構築
よくある残念な英語研修VS成果を出した英語研修の短期計画
マンガでわかる!契約業務の課題と解決策 〜解決のカギはCLMにあり〜
電子帳簿保存法におけるファイル名のつけ方とは
タレントマネジメントは発展途上?人事・総務担当者1,000人調査から見える浸透度と導入状況
企業成長の鍵となるダイバーシティ推進とそのメリット
【最新版】採用手法の全体像|求人広告・人材紹介・ダイレクトリクルーティングの最適な使い分けを解説
「割増賃金の算定基礎となる賃金」に含める賃金・含めない賃金
WEBサイト製作の業務委託契約書の作成方法と注意点
海外法人との取引を成功させる!英文契約の基礎知識
社員と会社の両方が幸せになる生活サポートとは?
雇用契約書の記載事項を知りたい方必見!必須事項や注意点を解説
契約書チェック(契約審査)の重要性とチェックを行う際のポイント
その1on1ミーティング、本当に効果がありますか?効果的な運用と事例紹介
【業務時間90%削減の実例紹介】生成AIを明日から活用できるステップを解説【セッション紹介】
管理部門・士業の採用を成功に導く、“本当に使える”ダイレクトリクルーティングサービスを徹底比較!
【管理部門・士業のビジネスケアラー実態調査】4人に1人が「介護と仕事の両立」を経験、うち8割が「働き方に影響」[MS-Japan調べ]
経理の働き方は変えられる!ワークライフバランスを整える転職のポイントと成功事例
公開日 /-create_datetime-/