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去る7月16日、企業会計基準委員会は、第529回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。
第152回リース会計専門委員会(2024年8月1日号(№1717)情報ダイジェスト参照)に引き続き、リース会計基準の開発に関する次の審議が行われた。
⑴ 借地権の設定に係る権利金等に関する取扱い
借地権の設定に係る権利金等について残存価額の設定を認めるかという論点について、残存価額の設定を認めるが、実務上の困難さに対応するため、一定の場合に、残存価額をゼロとみなすことができる定めを置く案が示された。
委員からは賛意が聞かれた。
⑵ 単体財務諸表への適用
連結会社相互間のリースにおける借手のリース期間の決定に関する簡便的な取扱いを設けるか否かについて、特段の手当てを行わないとの事務局案が示された。
また、税法への影響に関して、個別財務諸表に対する特別の措置を設けるには至らず、公開草案の提案を変更しないとの事務局案が示された。
委員からは特段の反対意見は聞かれなかった。
⑶ 適用時期
現状の審議状況から、仮に2025年3月より前に最終化される場合、準備期間は3年には満たないが2年超の準備期間が確保できると考えられる。
原則的な適用時期については、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用する事務局案が示された。
委員からは、「公開草案に比べ1年後ろ倒しになり、準備期間が長くなった」など事務局案に賛成意見が聞かれた。一方で、「システム改修にどのくらい時間がかかるか不安」との意見も聞かれた。
金融資産の減損について、ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)に関する審議が行われた。
今回は、第221回金融商品専門委員会(2024年7月20日号(№1716)情報ダイジェスト参照)にて、ステップ4を採用することが見込まれる金融機関の代表者(全国地方銀行協会、第二地方銀行協会)より発表された、これまでに審議されてきた事務局分析や提案に関する見解や意見の説明および当日聞かれた意見の内容について報告するとともに、その代表者がオブザーバーとして出席し、質疑応答が行われた。
代表者からの主な意見は次のとおり。
⑴ 債権単位での信用リスクの著しい増大(SICR)の判定
正常先に区分される債務者に対する債権等のSICRの判定については、アプローチ2(一律にSICRが生じていたとみなす)が地域金融機関の実務とより整合的と考える。
アプローチ1(正常先を3つに区分)での運用も不可能ではないと思われるが、実務負担に配慮した運用を吟味する必要がある。
⑵ 複数シナリオの考慮を含めた結果の確率加重
最も可能性が高い中心となる将来予測シナリオ(ベースシナリオ)のみを考慮することを認める提案に賛成する。
合理的な将来予測モデルが構築できない場合において、少なくとも考慮されるべき引当水準を示すことを検討してほしい。
⑶ 実効金利法に関連する論点
現行の金融商品会計基準等における取扱いを踏襲するオプションを設ける提案に賛成する。
⑷ 貸倒実績率の利活用
現行の引当金算定手法は、貸倒実績率によるものが大半であることを踏まえると、PD(デフォルト率)の利用のみを想定する算定手法は現実的ではないため、貸倒実績率の利活用を含む算定方法の工夫を通じて実務負担軽減を図るべく議論を進めてほしい。
委員からは、代表者の実務負担に対する懸念について理解を示す意見が多く聞かれた。
去る7月24日、企業会計基準委員会は、第222回金融商品専門委員会を開催した。
第528回親委員会(2024年7月10日号(№1715)情報ダイジェスト参照)に引き続き、上場企業等が保有するベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分に係る会計上の取扱いについて審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
第528回親委員会にて、時価評価オプションを適用した組合等が連結子会社に該当する場合の会計処理について、テーマ提言を受けた状況を踏まえるとできるだけすみやかに会計基準を開発することが期待されていること等の理由から、「プロジェクトの範囲には含めず、改正後の会計基準を適用した後で実務にばらつきが生じる等の課題が実際に発生した際に追加的に開発する」との事務局提案が示されていた。
事務局案につき、委員から賛否両方の意見が聞かれていたことを受け、個別財務諸表上の時価評価を連結上において引き継ぐ方向性で進める場合について、最終的なキャッシュ・フローの予測に資する観点から有用であるため、時価評価オプションの適用範囲に、組合契約等において組合等の存続期間が定められていることを追加する方針が考えられるといった分析が示された。
この分析をもとに、事務局は、時価評価オプションを適用することとした組合等が連結子会社に該当する場合の会計処理について、本プロジェクトの範囲に含めるか否か、専門委員に意見を求めた。
専門委員からは、本プロジェクトの範囲に含めないとする案に賛同する意見が聞かれた。
これまでの議論の内容を盛り込んだ、移管指針9号「金融商品会計に関する実務指針」の改正文案が示された。
専門委員からは、特段の反対意見は聞かれなかった。
去る7月24日、財務会計基準機構内に設置されている企業会計基準諮問会議は第51回会合を開催した。
前回までに提案されたテーマ提案について、審議が行われた。
現状の対応は次のとおり。
いわゆる現物出資構成による取引に関する会計基準の開発について実務対応委員会にテーマアップの評価を依頼しているが、前回に引き続き未了である。
実務対応報告19号の改正について、時期と範囲の観点から関係者への意見聴取を行ったところ、緊急性が高いテーマではないことから、「現時点では新規テーマとして取り上げないが、将来的に繰延資産項目全体について他のプロジェクトの検討にあわせて検討を行う」ことへの賛意が聞かれた。
事務局は、当該意見に同意しつつも、社債発行費の会計処理のように他のプロジェクトと関連し得る繰延資産項目については、見直しを行う時期、順序および範囲に関して基準開発を効果的かつ効率的に進める余地があるとして、本件をASBJの新規テーマとして提言することを提案した。なお、繰延資産の見直しに関してASBJの新規テーマとする時期、順序および範囲についてはASBJに委ねるとした。
委員からは反対意見は聞かれなかった。
バーチャルPPA(電力購入契約の一種)の会計処理について、前回会議にて指摘されていた「会計実務に多様性が生じているかについては必ずしも明らかではない」とされる点について追加調査を行い、会計処理にさほど多様性はない点が明らかにされたことを除き、新たな情報はないとした。
この結果を踏まえ、前回会議にて賛意が聞かれた「需要家の観点から優先度の高い論点に範囲を限定するアプローチ」について検討を進めることを、ASBJの新規テーマとして提言してはどうかと提案した。
委員からは賛意が聞かれた。
ASBJが6月21日に公表した「継続企業及び後発事象に関する調査研究」に関連して、ASBJで「継続企業」および「後発事象」に関する会計基準の開発をテーマとすることについて、ASBJの依頼に基づき本諮問会議委員に意見が求められた。
なお、事務局は、テーマ除外されていた「継続企業」に関する会計基準をあらためてASBJの新規テーマとして提言し、審議が停止していた「後発事象」に関する会計基準の開発についても再開する事務局案を示した。
委員からは、おおむね賛意が聞かれた一方で、「継続企業の再提言や後発事象の再開について本当に分析が十分なされているのか」などの意見が聞かれた。
事務局は賛成意見が多数を占めたため、それぞれ事務局案を提言することとした。
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