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働き方改革に伴い、時間外労働の削減など、長時間労働是正に取り組む企業が、大企業を中心に拡大しています。ところが、中小企業には「繁忙期対応」や「短納期対応」といった、長時間労働につながる商慣行が依然として残っており、長時間労働是正には多くの課題があります。中小企業庁は、その背景にある実態を把握するための調査を実施しました。
調査結果によると、一時的に忙しくなる「繁忙期」は約7割の企業で発生しています。なかでも多く発生しているのは建設業、食料品製造業、紙・紙加工品産業、印刷産業、トラック運送業・倉庫業で、8割を超える企業で発生していることが明らかになりました。
また、「短納期受注」については、直近1年間では6割の企業で発生し、紙・紙加工品産業、印刷産業、半導体・半導体製造装置産業、電気・情報通信機器産業では、8割超の企業で発生しています。
こうした、長時間労働につながる「繁忙期」や「短納期受注」といった商慣行がなくならいのはなぜなのでしょうか。
「繁忙期」が発生する理由としては、約5割の企業が「季節的な要因」と回答し、そのうちの約4割が「取引先の繁忙期に対応するため」、約3割が「決算・年度末対応のため」となっています。
「短納期受注」については、約8割の企業が「取引先からの要望」と回答し、「自社の強みとして短納期を実施」や「決算・年度末対応」と回答した企業は約2割にとどまっています。
こうした取引先からの要望に応えるためには、長時間労働に頼らざるをえないというのが中小企業の実情のようで、それを裏付けるように、繁忙期対応によって8割、短納期受注によって6割の企業が、従業員の平均残業時間が「増加する」と回答を寄せています。
中小企業が、受発注が年末や年度末に集中することや、納期のしわ寄せ、多頻度配送・在庫負担・即日納入といった、無理な受発注方法に長時間労働で対応している裏で、取引先である大企業は、着々と残業時間の削減に取り組んでいます。
調査結果から、一部、下請け企業の生の声を抜粋してみました。
〇「取引先の大企業の時短対応のため、丸投げが増えた。建設業は、工程遅れを下請けが取り戻す構造。元請けは休むが下請けは責任施行と言われ、やることが増えた」(建設業)
〇「装置の仕様決めが遅れても納期が変わらない」(半導体・半導体製造装置産業)
〇「大手企業がリスクを負わないため、在庫を持たず、数量がある程度決まってから発注。発注後は早期の納品を迫られる。また予測数量が少なかった場合は自社の在庫負担となる」(食料品製造業)
〇「顧客満足を優先で取引先の大企業が短納期を受けるため、こちらも短納期にならざるをえない。繁忙期であっても通常期より短い納期依頼が平気である」(素形材産業)
〇「前注文なしに必要なものを必要な時にもってこいという商慣習が蔓延しており、取引先もやられているからと、当社に強要してくる」(紙・紙加工品産業)
こうして見ると、大手企業で進んでいる長時間労働の是正は、実は、中小企業の犠牲によって成り立っていると言えるのではないでしょうか。
長時間労働の是正や柔軟な働き方の拡大、さらに、年次有給休暇の取得促進、育児休業制度の活用などが、改正労働基準法(平成22年)によって、いまや“経営戦略”の一つに位置付けられるようになっています。
こうした取り組みをすることで、優秀な人材の確保や、従業員の定着率の向上、労働者の健康確保につながり、仕事のパフォーマンスも向上することから、生産性制の向上も期待されています。
しかし、ピーエムジー株式会社の調査によると、従業員50名以下の小規模企業の「働き方改革」導入率は、わずか13.9%という結果です。
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少と、育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化に対応するための、長時間労働の是正をはじめとする働き方改革ですが、中小企業では、なかなか導入することが難しいというのが実情のようです。
こうした課題を解決していくためには、「繁忙期対応」や「短納期対応」といった、長時間労働につながる商慣行を、どこまで改善していくかにかかっています。大企業と取引がある中小企業の管理部門の手腕が、大いに試されることになるのではないでしょうか。
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