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最低賃金とは最低賃金法に基づいて定められる最低限度の賃金額のことで、雇用者にはその額を上回る賃金を労働者に支払う義務があります。しかし最低賃金額は毎年変更されるため、就労期間が数年にわたる場合、知らない間に自分の賃金がそれを下回るということも生じるかもしれません。
では、自分の給与が最低賃金を下回っていないかどうかを、どのようにしてチェックすればよいのでしょうか?
今回は、月給制、年俸制それぞれの場合における確認方法について紹介します。
最低賃金には大きく分けて「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があり、まずは自分の賃金がどちらのタイプに分類されるかを確認することが大切です。
地域別最低賃金は都道府県ごとに設定され、年齢や雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用されます。例えば時間給換算で北海道だと835円、東京だと985円、大阪だと936円、福岡だと814円です(2018年10月時点)。
一方、特定最低賃金とは、各都道府県で「特定産業」に認定されている産業で働いている人における最低賃金で、関係労使が地域別最低賃金よりも高額にすべき必要があると認める産業で働く人に適用されます。
例えば、愛知県だと自動車(新車)小売業、岡山県だと鉄鋼業、愛媛県だと各種商品小売業などです。2018年10月時点において、全国で232の特定最低賃金が設定されています。
なお、派遣労働者の場合、派遣元ではなく派遣先の都道府県における最低賃金を適用するのが基本です。派遣元の会社が埼玉県にある場合でも、勤務先となる派遣先が東京都にあれば、最低賃金は埼玉県の898円ではなく東京都の985円で考えます。
また、派遣元の都道府県で特定最低賃金が適用されていない産業でも、派遣先の都道府県で適用されていれば、所定の特定最低賃金に基づいて最低賃金額が決まるので、最低賃金を計算する場合は注意しましょう。
月給制の場合は、基本的には「月給÷1カ月あたりの平均所定労働時間」で計算される時間給を、最低賃金額と比較します。
所定の最低賃金は基本的に時間給換算で提示されるので、まず自分が貰っている月給を時間給に換算する必要があります。ただ、この場合の月給は、基本給と職務手当などで構成される「所定労働時間」で計算され、それ以外の通勤手当などの諸手当は対象外です。会社員や公務員が貰う給料には、通勤手当や住宅手当、皆勤手当てなど、様々な手当てが加えられていることが多いですが、最低賃金を計算するときは職務関連以外の手当を除外して考える必要があります。
例えば、基本給14万円、職務手当3万円、通勤手当1万円を毎月支払われているとすると、月給は「18万円-1万円=17万円」で計算され、仮に1カ月あたりの平均労働時間を160時間だとすると時給換算では「17万円÷160=1062円」。最低賃金が最も高い東京都であっても985円(2018年10月時点)ですから、それを上回ることになるわけです。
最近では、給与金額を1年単位で決める年俸制を採用している企業も増えています。最低賃金は時間給で表記されているので、年俸制の場合、「自分の給与を時給換算するといくらになるか」という視点から計算していくのが基本です。
そのため年俸額を12で割って月当たりの基本給、職務手当などを算出し、その値を1カ月あたりの平均労働時間で割って時間給に換算。その数値が地域別最低賃金(特定施設の産業であるときは特定最低賃金)を下回っていないか確認しましょう。
例えば年俸額が216万円で、1カ月あたりの平均労働時間を160時間だとすると、給与の月額である「216万円÷12=18万円」を計算し、「18万円÷160=1125円」です。1125円であれば、東京都であっても最低賃金を上回っています。
政府の「働き方改革実現会議」において2017年(平成29年)3月に定められた「働き方改革実行計画」では、最低賃金を名目GDPの成長率に配慮しながら年率で3%ほどを引き上げていき、全国加重平均で1000円になることを目指す、という内容が盛り込まれました。これを実現するために、厚生労働省は中小企業や小規模事業者に対して、生産性の向上等の支援を行うとしており、最低賃金は年々上昇傾向にありますが、引き続きこの傾向は続いていくと考えられます。
そのため、現在規定されている最低賃金よりもかろうじて自分の給料が上回っているという方でも、そのまま賃金が上がらなければ、今後それを下回るということも起こり得ます。最低賃金は毎年度10月に改定されるので、最低基準ぎりぎりという場合は、こまめにチェックする必要があるでしょう。
最低賃金は、正社員はもちろん、パートや学生アルバイトなど、働くすべての人に賃金の最低額を保障している制度です。「自分は非正規だから」、「短期バイトだから」ということに関係なく、最低賃金を請求する権利があります。
また、仮に最低賃金よりも低い賃金で雇用者と雇用契約を行っていた場合でも、最低賃金法に基づいてそのような契約は無効とされ、「最低賃金を支払う」のと同様の取り決めをしたものとみなされるのが原則です。そのため、もし自分の給料が最低基準に足りていないことが分かったら、すぐに雇用主にその点を指摘しましょう。
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