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企業が海外から商品を仕入れる際には、関税が発生します。関税は、輸入品にかかる税金で、国内の産業を守り、税収を確保するために設定されています。輸入コストに直結するため、正しく理解し、適切に処理することが重要です。
特に近年は、貿易政策の影響により関税率が変動することも多く、企業のコスト管理に大きな影響を及ぼしています。本記事では、関税の基本から仕訳方法、税務リスクの回避策、最新の会計処理までを詳しく解説します。
関税とは、外国から輸入される商品に対して政府が課す税金のことです。これは、国内産業を保護し、税収を確保するために設定されています。関税の額は、輸入品の価格(課税価格)や品目ごとに決められた関税率によって決まります。
関税には主に 「従価税(価格に対して課税)」 と 「従量税(数量に対して課税)」 の2種類があり、輸入品の種類や貿易政策に応じて異なる税率が適用されます。また、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)により、特定の国や地域との間で関税が軽減・撤廃されるケースもあります。
近年では、「トランプ関税」 のような貿易政策の影響で、関税率が急に引き上げられることもあり、企業の輸入コストに大きな影響を与えています。そのため、関税の計算方法や適用ルールを理解し、適切に処理することが、企業の財務管理において重要なポイントとなります。
輸入取引では、海外から商品を仕入れて国内に持ち込むまでにいくつかのステップがあり、関税が発生するタイミングも決まっています。ここでは、輸入の基本的な流れと関税の発生時点について解説します。
輸入取引は、以下のようなプロセスを経て完了します。
1. 注文(発注)
・企業が海外の取引先(輸出者)に商品を発注
・契約内容(価格、納期、貿易条件など)の確認
2. 輸出国での商品準備・船積み
・輸出者が商品を準備し、船積みまたは航空輸送を手配
・必要な輸入書類(インボイス、パッキングリストなど)が発行される
3. 輸入通関(国内税関での手続き)
・国内の港や空港に到着後、税関で輸入申告を行う
・ここで関税が発生し、納付が必要になる
4. 商品引き取り・国内配送
・税関手続きが完了し、輸入者が商品を受け取り、国内で販売や使用へ
5. 代金支払い
・海外の輸出者へ商品代金を送金
関税が発生するのは 「輸入通関時」 です。商品が日本国内の港や空港に到着し、税関で輸入申告が行われた際に、関税を支払う必要があります。
ポイント
・関税は「輸入許可」が下りる前に納付が必要
・仕入原価に含めるため、正確な計上が求められる
輸入取引では、関税のほかにもさまざまな税金が発生します。これらの税金を適切に処理しないと、税務リスクやコスト管理の問題が生じる可能性があります。本章では、輸入時にかかる主な税金と、それぞれの勘定科目について解説します。
(1)関税
・概要:輸入品に対して政府が課す税金で、国内産業の保護や税収の確保が目的。
・計算方法:課税価格(CIF価格) × 関税率
・支払タイミング:輸入通関時
(2)輸入消費税
・概要:国内での消費税と同様に、輸入品にも消費税が課される。
・計算方法:(課税価格 + 関税)× 消費税率(10%)
・支払タイミング:輸入通関時
・会計処理:「仮払消費税」として計上(詳細は「関税と輸入消費税の会計処理の違い」で解説)
(3)地方消費税
・概要:輸入消費税の一部として、地方税の税収確保のために課される。
・計算方法:(輸入消費税 × 22/78)
・支払タイミング:輸入通関時
(4)その他の税金
・関税特別措置法に基づく税金(例:特定の品目に課される報復関税、暫定税率)
・環境関連税(例:炭素税など、特定の商品に課される場合)
輸入時の税金は、適切な勘定科目に振り分けて処理する必要があります。
税金の種類 | 適用される勘定科目 | 処理のポイント |
---|---|---|
関税 | 仕入高(または関税) | 仕入原価に含める |
輸入消費税 | 仮払消費税 | 仕入税額控除の対象(詳細は別章) |
地方消費税 | 仮払消費税 | 消費税申告時に精算 |
環境関連税等 | 租税公課 | 仕入原価に含めず費用計上 |
※ 関税は「仕入高」に含めるのが一般的ですが、企業の会計方針によって「関税」勘定を使用することもあります。
輸入時にかかる税金の中でも、関税と輸入消費税は会計処理の方法が異なります。この違いを正しく理解し、適切に仕訳を行うことが、税務リスクの回避や正確な財務管理につながります。
項目 | 関税 | 輸入消費税 |
---|---|---|
課税対象 | 商品の課税価格(CIF価格) | 課税価格 + 関税 |
税率 | 商品ごとに異なる(例:5%〜20%) | 10%(標準税率) |
会計処理 | 仕入原価に含める | 仮払消費税として計上 |
税務処理 | 仕入コストとして計上される | 消費税申告時に控除可能 |
納付タイミング | 輸入通関時 | 輸入通関時 |
このように、関税は「仕入原価」に含めるのに対し、輸入消費税は「仮払消費税」として処理し、後に仕入税額控除が可能になります。
関税は、輸入した商品の仕入原価に含めるため、通常「仕入高」勘定に計上されます。
例:関税を支払った場合の仕訳
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 | 10,000円 |
・関税は「仕入高」勘定に含める
・誤って「租税公課」として計上しないように注意
輸入消費税は、国内の消費税と同様に「仮払消費税」として処理されます。輸入取引を行う事業者は、後の消費税申告時に仕入税額控除を適用することが可能です。
例:輸入消費税を支払った場合の仕訳
(借方)仮払消費税 8,000円 | (貸方)未払金 8,000円 |
・輸入消費税は仕入原価には含めず「仮払消費税」に計上
・仕入税額控除の対象となるため、正確な処理が必要
・インボイス制度の影響も考慮する必要がある(詳細は別章)
✓ 関税は仕入原価に含め、輸入消費税は仮払消費税に計上する
✓ 仕入税額控除の適用を忘れない(インボイス制度の影響も確認)
✓ 誤って「租税公課」や「販売費」に計上しないよう注意
関税と輸入消費税の会計処理を正しく行うことで、税務調査時の指摘を防ぎ、適切な財務管理が可能になります。
この章では、関税を適切に処理するための勘定科目の選び方や具体的な仕訳方法を詳しく解説します。
関税を処理する際、企業の会計方針によって使用される勘定科目は異なります。主に以下の2つの方法があります。
勘定科目 | 使用するケース | 処理のポイント |
---|---|---|
仕入高 | 商品の仕入原価に含める | 一般的な処理方法 |
関税 | 仕入高と別に記録したい場合 | 費用計上と区別する |
※ 誤って「租税公課」などに計上しないよう注意!
(1)関税を即時払いした場合
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)普通預金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 |
(2)関税を未払計上し、後払いした場合
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 | |
(支払時)未払金 110,000円 | (貸方)普通預金 110,000円 |
(3)関税を別勘定(関税)で計上する場合
(借方)関税 10,000円 | (貸方)未払金 10,000円 |
✓「仕入原価」に含めることを忘れない(税務リスクの回避)
✓ 関税と輸入消費税の区別を明確に(仮払消費税と混同しない)
✓ 記帳タイミングに注意(輸入許可のタイミングで処理)
輸入取引では、関税や輸入消費税のほかにも、さまざまな経費が発生します。これらの経費を適切に仕訳し、仕入原価に含めるかどうかを判断することが重要です。本章では、輸入にかかる経費の種類と、それらをどのように原価計算するかを解説します。
輸入品の調達には、商品代金や関税・輸入消費税以外にも、以下のようなコストが発生します。
経費の種類 | 概要 | 仕入原価に含めるか | 勘定科目 |
---|---|---|---|
関税 | 輸入品に課される税金 | 含める | 仕入高(または関税) |
輸入消費税 | 消費税法に基づき課される税金 | 含めない(仮払消費税として処理) | 仮払消費税 |
運送費(国際送料) | 海外から日本への輸送費 | 含める | 仕入高(または運送費) |
保険料(貨物保険) | 輸送中のリスクに備えた保険 | 含める | 仕入高(または保険料) |
フォワーダー手数料 | 通関業務を委託する際の手数料 | 含める | 仕入高(または支払手数料) |
通関手数料 | 税関手続きを行うための手数料 | 含める | 仕入高(または租税公課) |
倉庫保管料 | 一時的に倉庫で保管する費用 | ケースによる(販売前なら含める) | 保管費(または仕入高) |
※ 仕入原価に含めるべきものと、販売管理費として処理するものを区別することが重要
仕入原価に含めるべき経費は、「商品を入手するために直接かかったコスト」です。一般的に以下のものは仕入原価に含める必要があります。
・関税
・運送費(輸入時の国際送料)
・貨物保険料
・通関手数料・フォワーダー手数料
・現地の輸出税(輸出国で発生する税金)
仕入原価に含めない経費(販売費・一般管理費)
以下の経費は、販売活動に関連するものと見なされ、「販売管理費」 として処理します。
・国内輸送費(倉庫から販売先への配送費用)
・事務手数料(輸入手続きにかかる社内経費など)
輸入時の経費を原価に適切に含めるためには、標準原価法 や 全部原価計算 を活用します。
(1)原価計算の基本式
仕入原価 = 商品代金 + 関税 + 運送費 + 通関手数料 + 保険料
例えば、以下の条件で商品を輸入した場合の原価計算を考えます。
項目 | 金額(円) |
---|---|
商品代金(FOB価格) | 500,000 |
運送費(国際送料) | 50,000 |
保険料 | 5,000 |
関税(5%) | 27,750 |
通関手数料 | 3,000 |
合計(仕入原価) | 585,750 |
(2)仕訳例(原価計上)
(借方)仕入高 585,750円 | (貸方)未払金 585,750円 |
・運送費や保険料を仕入原価に含めることがポイント
・関税は必ず仕入高に含める
・輸入消費税(仮払消費税)は別途処理
✓ 関税・運送費・保険料は必ず仕入原価に含める
✓ 国内で発生する費用(販売管理費)は仕入原価に含めない
✓ 仕入税額控除の適用範囲を明確にする(インボイス制度の影響も確認)
(1)関税を「租税公課」として処理してしまう
× 間違い:「租税公課」に計上
関税は、輸入時に発生する税金であるため「租税公課」として処理するケースが見られます。しかし、関税は商品を仕入れるために必要なコストであり、仕入原価に含めるべきものです。
〇 正しい処理:「仕入高」または「関税」勘定に計上
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 |
対策:「租税公課」は法人税や事業税などに使用し、関税は必ず「仕入高」に含める
(2)関税の支払いを計上し忘れる
× 間違い:関税の支払いを仕入計上時に記録せず、未払金処理を忘れる
関税は、輸入通関時に発生し、フォワーダーや通関業者を通じて支払われることが多いです。そのため、支払い処理を忘れると、財務管理上のズレが生じる可能性があります。
〇 正しい処理:「未払金」として計上し、後日支払時に仕訳
(関税発生時)
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 |
(支払時)
(借方)未払金 110,000円 | (貸方)普通預金 110,000円 |
対策:「未払金」の計上を忘れないよう、輸入通関時に記録する
(3)輸入消費税と関税を混同する
× 間違い:「関税」と「輸入消費税」をまとめて計上
関税は仕入原価に含める必要がありますが、輸入消費税は仮払消費税として処理し、後に仕入税額控除の対象となります。
〇 正しい処理:「関税」と「輸入消費税」を別々に仕訳
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 |
(輸入消費税の計上)
(借方)仮払消費税 8,000円 | (貸方)未払金 8,000円 |
対策:関税と輸入消費税を混同しないよう、請求書や通関書類を確認する
(4)関税の記帳タイミングを誤る
× 間違い:商品が届いた時点で関税を計上
関税は、輸入許可が下りた時点で発生するため、商品が到着したタイミングではなく、輸入通関時 に計上するのが正しい処理です。
〇 正しい処理:「輸入許可時」に仕訳を行う
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 |
対策:「輸入許可日」を確認し、その日に記帳する
2. 関税仕訳ミスを防ぐためのチェックリスト
✓ 関税は「仕入高」に含める(租税公課にはしない)
✓ 輸入通関時に関税を計上し、未払金処理を忘れない
✓ 輸入消費税と関税を混同せず、別々の勘定科目で処理
✓ 輸入許可のタイミングで記帳する(商品の到着日ではない)
2023年10月に導入されインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、国内取引における仕入税額控除の適用条件を厳格化しました。これにより、輸入取引の会計処理にも影響が生じるため、正しい対応が求められます。ここでは、インボイス制度が輸入仕入の会計処理に与える影響と、適切な仕訳処理について解説します。
インボイス制度では、仕入税額控除を適用するために適格請求書(インボイス)の保存が義務付けられます。ただし、輸入取引の場合は、国内取引とは異なる点がいくつかあります。
項目 | 国内取引 | 輸入取引 |
---|---|---|
インボイスの発行者 | 適格請求書発行事業者(売手) | 税関(輸入許可通知書) |
仕入税額控除の要件 | 適格請求書(インボイス)の保存 | 輸入許可通知書の保存 |
消費税の納付方法 | 売手が預かり、納税 | 輸入者が税関に直接納付 |
ポイント
輸入取引においては、通常のインボイスではなく、税関が発行する「輸入許可通知書」 を保存することで、仕入税額控除が適用されます。
輸入時に納付する消費税(輸入消費税)は、国内取引の消費税と同じく、仕入税額控除の対象 となります。そのため、適切に処理しないと、控除を受けられず税負担が増える可能性があります。
(1)仕入税額控除の適用要件
✓ 税関が発行する「輸入許可通知書」を保存すること
✓ 輸入消費税を仮払消費税として計上し、消費税申告時に控除を行うこと
(1)輸入時に関税と輸入消費税を計上
(借方)仕入高 100,000円 | (貸方)未払金 110,000円 |
(借方)関税 10,000円 | |
(借方)仮払消費税 8,000円 | (貸方)未払金 8,000円 |
・関税は仕入高に含める(租税公課ではなく、仕入原価に含める)
・輸入消費税は仮払消費税に計上する(仕入税額控除の対象)
(2)輸入消費税を納付した場合
(借方)未払金 8,000円 | (貸方)普通預金 8,000円 |
税関に輸入消費税を納付した時点で未払金を消す
(3)消費税申告時に仕入税額控除を適用
(借方)未払消費税 8,000円 | (貸方)仮払消費税 8,000円 |
輸入消費税は最終的に消費税申告で控除される
輸入消費税は最終的に消費税申告で控除される
4. インボイス制度導入後の注意点
・輸入許可通知書を保存しないと仕入税額控除が受けられない
・ 関税と輸入消費税の処理を混同しない(関税は仕入原価、消費税は仮払消費税)
・ 会計処理のタイミングを誤ると税務調査で指摘される可能性がある
対応策
・輸入許可通知書を必ず保存し、税務監査時に提出できるように管理する
・関税と輸入消費税を明確に区別し、正しい勘定科目で処理する
・仕入税額控除を適用する際、消費税申告と照らし合わせて整合性を確認する
輸入取引では、関税や輸入消費税を適切に処理することが重要です。関税は仕入原価に含め、輸入消費税は仮払消費税として処理し、仕入税額控除を活用することで適正な税務管理が可能になります。
また、仕訳ミスとして「関税を租税公課に計上する」「輸入消費税と混同する」「記帳タイミングを誤る」などが多いため、注意が必要です。さらに、インボイス制度の導入により、仕入税額控除を適用するには税関発行の輸入許可通知書を保存することが求められます。
正しい勘定科目の選定と適切な仕訳処理を行うことで、税務リスクを回避し、企業の財務健全性を維持しましょう。
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