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企業が従業員の福利厚生目的で導入している制度としては、健康診断など健康管理に関するものや各種休暇制度などがあります。今回の相談者は、その中の「慶弔休暇制度」の取り扱いについてです。専門家の回答は、どのようなものでしょうか。
社内規定を見直しており、慶弔休暇の取り扱いについてご意見を頂きたく思います。
ざっくりとした説明にはなってしまいますが、(本人の)結婚は5日まで、(2親等以内の)葬儀は3日までという規定になっています。
どこから聞いたかわかりませんが、役員の中には慶弔休暇を設けない企業も最近増えていると、有休で対応するようにしてもいいのではという意見が出て、取り扱いに悩んでいます。
慶弔休暇を設けないデメリットは何ですか?
また、設けるとしたら日数はどれくらいが妥当なのですか?
貴社にとって、慶弔休暇を廃止する場合は、労働条件の不利益変更に当たる可能性があります。
年次有給休暇は、「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、
ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨」(平成21年の厚労省の通達)で付与されます。
慶弔休暇とは、目的が違います。
年休5日取得義務化も有り、弊所ではお客様に次のようなアドバイスをしています。「年休保有日数が10日以上の場合は、慶弔休暇は利用できない」旨の規定化です。
ご理解いただけた会社様には社内説明会等を行っています。
「慶弔休暇」は、本人をはじめ近親者の慶事(結婚・出産)や弔事(葬式)のときに使える休暇のことですが、労働基準法で定められた休暇ではなく、会社が独自の判断で設定する休暇で“法定外休暇”、または“特別休暇”とも呼ばれています。
一方、法で定められているのを“法定休暇”といい、有給休暇や育児休暇、介護休暇、産前産後休暇などがあります。
それぞれの会社の独自判断による休暇ですから、休暇日数も会社によって違いますし、慶弔休暇制度を設けていない会社もあります。
慶弔休暇制度を設けていない会社では、相談者の会社の役員がいうように、有給休暇を使っていたようですが、それは一昔前のことのようで、有給休暇の取得が義務付けられた今の時代にはそぐわないといえるでしょう。
厚生労働省が平成30年に実施したアンケート調査(12,000社・54,000人)によると、慶弔休暇制度を設けている企業は90.7%で、慶弔見舞金制度も86.5%の企業が導入しているようです。
多くの企業が従業員の福利厚生の一つとして慶弔休暇制度を設け、働く者の多くが、結婚式や出産などの祝い事、あるいは葬儀のときに使えると受け止めているのではないでしょうか。
ですから、既にある慶弔休暇制度を廃止することは、時代に逆行するものでもありますし、社員の期待を大きく裏切ることにもなりかねません。
また、桑野真浩先生が指摘するように、「労働条件の不利益変更に当たる可能性」があり、変更するには然るべき手続きが必要となり簡単ではないため、推奨できるものではないように思われます。
ちなみに、2017年の労務行政研究所の調査によると、慶弔休暇の平均日数は、本人の結婚が5.3日、配偶者の死亡が5~6日となっています。相談者の会社では、本人の結婚については5日と定めているようなので、標準的な日数を設定しているようです。
慶弔休暇制度を設けることは、福利厚生の一環として内容を充実させることこそ、これからの企業に求められるものではないでしょうか。福利厚生が充実している会社は“社員を大切にしている”、また、仕事とプライベートの両立に理解のある“ワークライフバランスを重視する企業”という、対外的な評価にもつながると思われます。
慶弔に関する出来事は、従業員の在社中に何度もあるものではありません。従業員にとっても、会社にとってもプラスになるような制度であってほしいものです。役員を説得するなど、担当者の奮起を期待します。
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