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今回は、法人向けソフトウェアを開発・提供している株式会社ハンモックで、取締役CFOとしてご活躍中の冨來 美穂子氏にお話を伺いました。
本インタビューでは、冨來氏のこれまでのキャリアのなかでのターニングポイントや仕事に対する価値観、現職の事業および同社の魅力などを伺いました。
経営管理の領域で活躍する冨來氏の考えに触れることで、読者の皆さんのキャリア形成に役立つヒントを得られるかもしれません。
ぜひ、ご一読ください。
冨來 美穂子(とみき みほこ)
株式会社ハンモック 取締役CFO 兼 管理本部長兼総務人事部長/公認会計士
お茶の水女子大学理学部物理学科卒。
1988年4月、新卒で株式会社リクルートに入社。
同社を1995年12月に退職し、公認会計士の試験勉強を始める。
2000年10月に公認会計士2次試験に合格し、当時の朝日監査法人(現・あずさ監査法人)に入所。
2003年12月に同法人を退職し、その後は一般事業会社に数社転職。
2013年7月に株式会社エスエルディーに入社し、経理部長として上場準備に携わる。
同社は2015年3月にJASDAQ上場を果たした。
上場後、同社の取締役に就任。
その後に2回の転職を経て、2021年9月に株式会社ハンモックに入社し、取締役CFO兼管理本部長に就任。
2024年4月、東京証券取引所グロース市場に上場。
<会社紹介>
株式会社ハンモック
1994年4月創業。
法人向けに「IT資産管理・セキュリティ対策」「営業支援・名刺管理」「AIによる文字認識を活用したデータエントリー」に関する業務支援システムおよびクラウドサービスを開発・提供している。
公式サイト:https://www.hammock.jp/
――まずは冨來さんのご経歴をお教えください。
出身は石川県の金沢で、大学入学のために上京しました。
お茶の水女子大学の理学部物理学科に入り、大学に入ってから始めたバンド活動に熱中していました。
就職活動は、同級生が一流企業に行くなかで、私も一通りの業界を会社訪問してみましたが、どこも自分にはしっくりこないと感じていたときに、縁があってリクルートに入社することになりました。
リクルート時代は計8年間、さまざまな部署に配属されましたが、システム開発関連の業務がメインのキャリアで、業務分析からプログラミングまでやっていました。
リクルートは従業員一人ひとりと向き合って大切にしてくれる会社で、がむしゃらに頑張るとともに、成長を実感でき、とにかく楽しい8年間でした。
ただ、幅広い経験が積める一方で、専門性を身に着けたいという気持ちも強くなり、「その資格で仕事ができるか」「自分が挑戦できそうか」と考え、資格取得を検討しました。
そして、「どうせ挑戦するなら難関資格に挑もう」と決意し、30歳のタイミングで公認会計士を目指しました。
当時は、経理職の経験はもちろん、会計の知識も全くない一からの挑戦だったので、本腰を入れて受験するためにリクルートを退職し、勉強を始めましたが、苦労しました。
結局、試験合格までには4年間かかりましたね。
――30歳で一から会計を学び公認会計士に挑戦するのは、一大決心ですね。
私が受験した頃の公認会計士試験は合格率が6~7%で、現在よりも厳しかったんですね。
だから、周りでも仕事しながら受験勉強している人はほぼいなかったです。
そのため、リクルートを退職して受験勉強に専念しました。
最初は、1日の時間を全て自分のために使えるということが大変贅沢に感じられ楽しかったですが、無職での受験生活はやはり辛かったです。
4年かけてようやく試験に合格し、2000年に朝日監査法人(現・あずさ監査法人)に入所しました。
主に法定監査に従事し、大手上場企業の会計処理や内部統制などを学ぶことができ、会計士としての基礎を勉強できました。
――監査法人をご退職後は、どのようなキャリアを積まれたのですか?
事業会社は生き物だと思っています。
組織に入って、当事者として仕事をするのが好きなので、監査法人を退職し、事業会社に転職しました。
その会社を理解した上で経営に携わっていきたいという思いもありましたね。
監査法人退職後最初に入った企業は中小企業だったのですが、子会社が8社もあり、私はそのなかで3~4社分の経理を決算まで対応していました。
監査法人にいたものの、経理業務は経験していなかったため、この会社で経理をしっかり勉強させて頂いたことがのちに役立ったので、本当に感謝していますね。
どちらかというと、私は計画的にキャリアを想定して進んできたというより、そのときに自分が「やりたいこと」「興味があること」を考えて、挑戦するなら、とことんやるという感じでキャリアを作ってきました。
いま、採用担当もしているのですが、新卒採用の面接をするたびに、学生の皆さんはご自身のキャリアをしっかり思い描いているなと感心しています。
一方で、「若いうちはいろいろ考えているより、まずはがむしゃらに働くのも大切だよ。やってみないとわからない。」とも思っています。
――そのときどきのご自身の状況に応じて、柔軟にキャリアを積まれたということですね。事業会社でのキャリアはどのようなものでしたか?
そうですね。
前々職の飲食サービス関連の会社でIPOを目指していたので、上場準備から上場するまでは経理部長として携わることができ、上場後に取締役に就任しました。
取締役になる前は、決算を如何に早く正確に締めるか、内部統制をきちんと構築するかなど自分の業務領域の範囲の目線で働いていたのですが、それが、取締役に就任してからは「会社をどうやって成長させるか」という目線に大きく変わりました。
IPOはとても大変でしたが、達成感はとても大きく、本当に良い経験でしたね。
ここからIPOという領域で、そして取締役という新たな役職についてキャリアを進めていくことになります。
――現職のハンモックさんにご入社されたきっかけを教えてください。
飲食サービス関連の会社に上場前から上場後まで約5年間勤務し、次にデジタルデザインのサービスを展開する会社に転職しました。
この会社は、事業設計などからつくり上げていくとても面白い事業でした。
約3年勤務した頃から、私はIPOをもう一度経験したいと思うようになっていました。
同じタイミングで知人が「ハンモックという会社がIPOを目指しているけれど、どうですか?」と声をかけてくださったんです。
入社した直後は、上場に向けて課題が山積みで、まずは、課題をひとつひとつ解決し、上場に耐えうる体制にすることが必要でした。
そのために、まず行ったことは、入社後1か月ほどで大量の課題リストを作成です。
そして、会長と社長と私の常勤取締役3人で毎週経営会議を開催し、組織課題、資本政策、内部管理体制などの課題を一つ一つ解決し、それと同時に、経理システムや勤怠システムの入れ替えなど、同時並行的に課題をどんどん解決していきました。
それと、自分の人脈を使って、役員クラスの採用もしました。
さらに、全社の管理職全員と1on1の面談をさせて頂きました。
これは会社を知るために非常によかったです。
その時の、私の最大の役割は「IPOを成功させる」ことでしたが、毎日、解決しても次々と新たに生じる課題と格闘しながら、決めたスケジュールどおりに遂行するためにとても大変でしたが、上場してやり遂げたときの達成感は大変大きかったですね。
――冨來さんが仕事や職場を選ばれる際に、常に大事にしていたことやこだわりなどはありますか?
そうですね。
その(新しい)会社で自分が今まで経験してきたことの何が役に立つか、自分のキャリアをどう生かせるか、そして、どう会社に貢献できるのかというのがいちばん大切にしてきたことだと思います。
あとは、何がやりたいのかという自分の欲求です。
私の場合は、公認会計士の資格を取ってから監査法人と一般事業会社で働き、「経営に役立つ経理」について関心を持つようになったので、それが実現できる会社で働こうと思いました。
IPOに関わるようになって、上場企業の取締役に就任してからは、「この会社は世の中に何のために存在しているのか?」ということを強く考えるようになり、社会に貢献している企業で働き、その企業を成長させたいという思いを常に抱くようになりました。
ただ、弊社に転職したときの動機としては「もう一度IPO案件に携わりたい」という気持ちが最も強かったですね。
――現職に就くまでのなかで、仕事上の礎になっているものはありますか?
やはり、公認会計士の資格を取得したことですね。
受験科目も多岐に渡り、受験に向けてかなりの量の勉強をするので、法律も大まかに読めるようになりますし、経済学も経営学もひと通り勉強して幅広い知識を得られました。
その知識は働くうえで強い武器になっています。
あとは、新卒で入社したリクルートでの経験が社会人として働くということの考え方のベースになっています。
仕事をする際に、何のためにそれをするのか、そのためには何をすればよいのか、当事者意識をもって仕事をすることが当たり前の世界にいて、それが身についたことが大きかったです。
あとは、監査法人退職後、最初に入った事業会社で経理の実務、飲食サービスの会社で上場企業の取締役になったことも大きな転機でした。
――改めて御社のことをもっと知りたいので、事業内容をお教えください。
まず、事業は大きく「ネットワークソリューション」「セールスDXソリューション」「AIデータエントリーソリューション」の3つに分かれています。
「ネットワークソリューション」は統合型IT運用管理に関するサービスを展開している事業で、IT資産の管理や情報漏洩・ウイルス対策、個人情報対策などをする製品「AssetViewシリーズ」を開発、販売しています。
「セールスDXソリューション」は法人営業支援を展開しており、名刺管理・営業支援ツールの「ホットプロファイル」というクラウドサービスを開発・販売しています。
「AIデータエントリーソリューション」はデータ入力支援に関する事業で、AI OCR(光学文字認識。紙に書かれた文字を認識してデジタル化する技術のこと)の製品を開発・販売しています。
弊社は2025年で創業32年目を迎えました。
約20年間は「AssetViewシリーズ」で、堅調に伸びてきました。
そして、今から約10年前に「ホットプロファイル」の開発・販売を始めて成長率が高まり、その後は続々と製品を出して成長してきました。
顧客としては、中堅中小企業から大手企業まで幅広く提供しています。
――管理部門の皆さんで共有されている価値観はありますか?
弊社の管理部門のミッションとして「会社の成長に資するための付加価値を提供していくこと」です。
ただタスクや業務をこなすのではなく、価値ある管理部門になるために、企業成長に役立つ価値を提供できるようにするためにはどうすべきなのかを常に考えるようにしています。
人手不足の時代で従業員のエンゲージメントを高めたり、定着率や生産性を上げたりするためには、経営側が持っているビジョンやミッションを全従業員に共有することが大事です。
そのために、今年の4月に新たにパーパスを策定しました。
――従業員が会社のビジョンやミッションに共感できる環境が理想的ですよね。一方で、それに伴った評価制度も重要と思いますが、特に管理部門について、何か工夫されていることやポイントがありましたらお教えください。
管理部門の評価は、本当に難しいですよね。
人事評価は、納得感が非常に重要だと思います。
従業員自身の評価と評価者の評価にギャップがでると、そして評価者の評価のほうが低かった場合、そこからの納得感はなかなか得られず、従業員のモチベーションを上げるのは難しくなります。
評価にギャップがでる要因は目標設定の仕方にあると考えています。
管理部門においては、従業員に対して、目標を設定し、そのために何をしなければならず、どこまで達成できたら“A”と自分で付けられるのか、従業員自ら設定した「A」「B」「C」の基準を、目標設定時に明確にし、評価者と合意するようにしています。
ただし、時間がたつと環境の変化などにより設定目標を変える必要がでてくることがあります。
そのため、中間面談をして目標設定を見直すことはあります。
とにかく一緒に考え、目標設定時に合意しておくことが大切だと考えています。
――これまでのキャリアを振り返ってみて、冨來さんご自身がそのときにやっておいて良かったこと、もうちょっとやっておけば良かったことがありましたらお教えください。
そうですね、わりと、その場その場で「やりたいこと」を軸に生きてきているので(笑)。
計画も大切だと思いますが、長い仕事人生において、計画を通りに進めることもそう簡単ではありませんし、計画通りにいかないことも多くあります。
人との出会いや予期せぬ出来事によって、計画は変わるものですが、そこにこそキャリアの楽しさがあると思います。
私自身が若かったころは、やりたいこと、楽しそうなこと、という感覚的なもので、まずは、それに臆せずチャレンジしてみる、という感じでした。
人生は、今この時点から未来しかなく、ある意味今が一番若いのです。
「自分の可能性を疑わずにチャレンジすること」が大切だと私は思っています。
公認会計士の資格を目指したときも、親にはすごく反対されました。
でも、一番やりたいこと、それに対して自分を信じてトライすることが重要だと、自分の経験を通して学びました。
そして、これからは公認会計士の資格にもとらわれず、次にやりたいことを見つけたいと考えています。
――自己研鑽として、現在やっていらっしゃることなどはありますか?
自己研鑽というよりインスピレーションですが、私は手書きすることがすごく多いです。
もちろんパソコンでも作業しますが、分厚いノートを常に持っていて、仕事上の課題や考えたいこと、マインドマップのようなものを、ノートに手で書いてみるんです。
書くと思考が整理され視野が広がるし、やるべきことも見えてくるんですよね。
――私もノートに手書きして思考を整理することがよくあります。では最後に、Manegy読者の方がすぐに実践できることとして、CFOの皆さんにおすすめの書籍を伺っています。
すでにベストセラーですが、「ビジョナリーカンパニーZERO」(ジム・コリンズ、ビル・ラジアー[著]、土方奈美[訳]、発行元:日経BP)は、大変共感することが多かったです。
会社を作るうえで「優先すべきは事業より人材だ」という考え方には、本当に共感しました。
どんな事業をやるかを考えるより先に、人材が大切です。
「人材さえあれば、事業はできる」というメッセージがすごく響きました。
――今日はたくさんのお話をお聞かせくださり、本当にありがとうございました!
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 株式会社MS-Japan マーケティングDivision / 執行役員
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