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源泉所得税の勘定科目は「預り金」として処理するのが原則です。
この記事では、源泉所得税の仕組みや勘定科目、仕訳処理における実務上の注意点について詳しく解説します。
※2025年11月10日時点の情報となります。
税制は改正される可能性があるので、最新の情報は国税庁のウェブサイトでご確認ください。
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源泉所得税は、給与や報酬、配当、利息など特定の支払時に、支払者が受取人に支払う前に所得税を天引きして納付する制度です。
給与や賞与では会社が従業員の給与から徴収し、報酬や配当、利息においても同様に支払者が源泉徴収義務を負います。
これは所得税法によって定められており、会社や個人事業主が源泉徴収義務者となる場面があります。
2013年以降は、東日本大震災の復興財源確保のため、「復興特別所得税」も合わせて徴収されています。
これは源泉所得税の2.1%相当額を上乗せして納付する仕組みとなっています。
なお、当初の予定では、2037年(令和19年)12月31日までとなっていますが、2025年度税制改正大綱では防衛費財源確保のため課税期間の延長が議論されております。今後の税制改正によっては、期限が変更される可能性があります。
源泉所得税は、本質的に会社等が一時的に「預かっている」税金であり、自社の費用ではありません。
そのため、勘定科目には「預り金」を用いることが原則です。
例えば「租税公課」等を選択すると、自社負担の税金と誤認されてしまうため、正しい会計処理とはなりません。
支払い内容によって勘定科目の取扱いが若干変わることもあり、代表的な仕訳のポイントとしては下記のようになります。
従業員へ給与を支給する際、社会保険料などと同様に源泉所得税を差し引いて支給します。
この場合、差し引いた所得税は「預り金」として計上します。
具体的な仕訳例としては以下の通りです。
【給与支給時】
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 300,000円 | 預り金(源泉所得税等) | 12,000円 |
| 預り金(社会保険料) | 30,000円 | ||
| 普通預金 | 258,000円 | ||
このように、「預り金」は納付までの間、一時的に企業が預かります。
納付時には「預り金」が減少します。
還付や返金を受けた場合には、「雑収入」や「未払法人税等」、または「国税還付金」といった勘定科目を利用します。
具体的な仕訳例としては以下の通りです。
【納付時】
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税等) | 50,000円 | 現金(または普通預金) | 50,000円 |
当然ながら、修正申告や追徴課税、延滞税・加算税・不納付加算税が発生した際は「租税公課」等で処理することが多くなります。
定額減税や年末調整で源泉税の超過分を還付する場合も、同様に「国税還付金」などを補助科目として利用したり、「雑収入」として処理するケースが考えられます。
※2024年6月から実施された定額減税では、納税者本人および扶養親族1人につき所得税3万円が控除されました。
源泉徴収において控除しきれなかった金額(控除外額)がある場合は、年末調整で精算するか、確定申告で還付を受けることができます。
定額減税は2024年限りの措置であり、2025年以降の実施は未定です。
実際の会計処理ではいくつか注意点やよくある誤りが存在します。
最も多いのは、「源泉所得税(預かった税金)」を誤って「租税公課」で処理してしまうミスです。
これにより、本来経費でない部分を会社の経費に含めてしまうため、正しい課税所得計算ができなくなります。
また、「預り金」として処理した後、そのまま納付や消込を忘れると、預り金残高が未消化のまま決算を迎えてしまい、残高不整合が発生します。
預り金勘定だけが残ってしまうと、監査等で指摘やトラブルの原因となるため、納付処理や帳簿消込は必ずタイムリーに行いましょう。
源泉徴収税率の設定ミスや納期限遅延もリスクの一つです。
税率間違いや納付遅延は加算税・延滞税などの余分な負担につながるため、支払種別ごとに最新の税率や納期限を確認する必要があります。
源泉所得税の納付は、毎月の給与計算や報酬支払に連動して発生する重要な手続きです。
もし納付期限を過ぎてしまうと、「不納付加算税」や「延滞税」といったペナルティが課される可能性があります。
不納付加算税とは、源泉所得税を法定納期限までに納付しなかった場合に課されるペナルティ税で、通常は納付すべき税額の10%です。
自主的に遅延納付した場合は5%に軽減されますが、1日でも遅れると課税対象となります。
なお、納付税額が5,000円未満の場合は課されません。
延滞税は、納期限を過ぎた税金に自動的に課される税で、2025年は納期限から2カ月以内が年2.4%、2カ月超過後は年8.7%の割合です。
なお、納付税額が1,000円未満の場合は課されません。
※延滞税は日割り計算されます。
これらは法人・個人を問わず発生するため、納付遅延が続けば経理処理や資金繰りにも影響しかねません。
実際の税務調査や会計事務所とのやりとりでも、これらの勘定科目選定やミスについて指摘されることが多いので、社内マニュアル化やダブルチェック体制を整えておくことが望ましいです。
A. 源泉所得税は「預り金」として処理します。
従業員の給与や報酬から天引きした所得税を、一時的に企業が国に納めるまで預かっているため、負債科目の「預り金」に分類されます。経費ではありません。
※「未払金」は企業自身の未払費用に使う科目であり、源泉所得税には通常使用しません。
A. いいえ、経費には計上できません。
源泉所得税は従業員個人の所得税を企業が「代理で納付する」ものであり、企業自身の費用ではありません。したがって、損益計算書上の費用には含めません。
A. 会社が従業員から天引きする場合 → 「預り金(源泉所得税)」
この場合、経費にはなりません。
会社の費用と混同しないよう注意が必要です。
A. 報酬の源泉徴収税率は以下の通りです:
100万円以下の部分:10.21%(所得税10% + 復興特別所得税0.21%)
100万円を超える部分:20.42%(所得税20% + 復興特別所得税0.42%)
例:150万円の報酬の場合
100万円 × 10.21% = 102,100円
50万円 × 20.42% = 102,100円
合計:204,200円
源泉所得税は「預り金」として処理することが会計上の基本です。
納付・還付・延滞税といった会計処理も正確に反映させることで、帳簿の信頼性や実務の正確さが担保されます。
特にミスや消込漏れがないよう丁寧に取り扱うことで、経理実務におけるコンプライアンスと効率化の両立が可能です。
最新の税制や勘定科目ルールを踏まえた上で、実務対応を行うよう心掛けましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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