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年末調整後の実務として欠かせないのが、「給与支払報告書」の作成・提出です。
提出先が従業員の居住地ごとに分かれるため、実務では対象者の拾い漏れや提出方法で迷いやすいでしょう。
本記事では、給与支払報告書の仕組みを整理したうえで、提出対象・提出先と期限、書き方のポイント、実務上の注意点までをまとめて解説します。
給与支払報告書とは、事業者が前年中に支払った給与等の内容を市区町村へ報告し、従業員の住民税(個人住民税)額を算定してもらうための法定書類です。
給与支払報告書は、給与所得の源泉徴収票と似た形式の書類ですが、主な提出先は従業員の居住地の市区町村であり、住民税計算の根拠として使われる点が大きな特徴です。
参考:国税庁│「第2 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)」
給与支払報告書として市区町村に提出する書類は、主に「個人別明細書」と「総括表」の2種類で構成されています。
両書類は役割や記載内容が異なるため、それぞれの位置づけを理解して作成を進めることが重要です。
個人別明細書は、従業員一人ひとりの給与支給額や所得控除の内容、扶養親族の状況などを記載する書類です。
住民税の課税額を算定するための基礎資料として扱われるもので、前年中に給与の支払いがあった従業員ごとに作成します。記載項目の構成は源泉徴収票と共通する部分が多いものの、従業員本人ではなく居住地の市区町村へ提出する点が特徴です。
一方、総括表は、提出する個人別明細書の内容を事業者単位で整理する書類です。
給与支払者の名称や所在地、連絡先、提出対象人数、特別徴収と普通徴収の内訳などをまとめて記載し、提出書類全体の集計情報を示す役割を担います。
個人別明細書との人数や区分が一致しているかを確認するための資料としても重要です。
これらの書類は、紙での提出に加え、eLTAXを利用した電子提出にも対応しています。
提出人数によっては電子提出が求められる場合もあるため、提出方法についても事前に確認しておく必要があります。
給与支払報告書と源泉徴収票はいずれも年末調整後に作成され、記載内容も共通点が多い書類です。ただし、作成目的と提出先が異なる点に注意が必要です。
給与支払報告書は住民税算定のために市区町村へ提出する書類である一方、源泉徴収票は従業員に給与・所得税額を通知するための書類で、一定の場合は税務署にも提出します。
| 項目 | 給与支払報告書 | 源泉徴収票 |
|---|---|---|
| 作成目的 | 従業員の個人住民税額を 算定するため |
従業員に給与額・源泉徴収した 所得税額を通知するため |
| 主な税目 | 住民税(地方税) | 所得税(国税) |
| 提出・交付時期 | 年末調整の対象年の 翌年1月31日まで |
年末調整の対象年の 翌年1月31日まで |
| 提出・交付先 | 従業員が居住する市区町村 | 従業員本人/(一定の場合)税務署 |
| 従業員への交付 | 原則なし | あり(必須) |
参照:国税庁│「No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」
給与支払報告書の対象者は、前年中に給与等の支払いを受けた人です。雇用形態や在職状況は問われず、給与の支払い実績が判断基準となります。
給与支払報告書の提出対象となるのは、前年1月1日から12月31日までの間に、給与等の支払いを行ったすべての人です。
対象者には、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・役員など、雇用形態や役職を問わず含まれます。また、次のようなケースも提出が必要です。
・年の途中で入社し、短期間だけ給与を支払った人
・年の途中で退職した人
・一度だけ給与や賞与を支払った短期雇用者
このように、「年末時点で在職しているかどうか」に関わらず、前年中に給与の支払い実績があれば提出対象になる点が実務上の注意点です。
前年中に退職した従業員については、一定の条件を満たす場合に限り、給与支払報告書の提出が例外的に不要となることがあります。
具体的には、前年中に支払った給与の総額が30万円以下の退職者について、提出を省略できるとされる場合があります。
ただし、この取扱いはあくまで例外であり、すべての市区町村で一律に認められているわけではありません。
自治体によっては、30万円以下であっても提出を求められる場合があるため、実務上は次の点に注意が必要です。
・退職者の居住地である市区町村の取扱いを事前に確認する
・判断に迷う場合は、提出しておく方が安全
提出不要の要件に該当するかどうかは、事業者側の判断だけで完結させず、提出先自治体の運用を確認することが重要です。
給与支払報告書は、従業員ごとに提出先が異なる点が実務上の注意点です。
給与支払報告書の提出先は、従業員の居住地を基準に判断します。
在職中の従業員については、提出する年の1月1日時点で住民票がある市区町村が提出先となります。勤務先の所在地ではなく、従業員本人の居住地で判断する点がポイントです。
一方、前年中に退職した従業員については、退職時点で居住していた市区町村が提出先となります。
たとえば、会社が東京都内にあっても、従業員が神奈川県に居住している場合は、神奈川県内の市区町村へ提出する必要があります。
このように、事業所所在地と提出先が一致しないケースも多いため、従業員の住所情報は年末時点で必ず確認しておくことが重要です。
給与支払報告書の提出期限は、毎年1月31日までと定められています。
1月31日が土日や祝日にあたる場合は、翌開庁日(翌営業日)が期限となります。
この提出期限は、地方税法に基づく法定期限であり、正当な理由なく提出しなかった場合には、罰則の対象となる可能性があります。
また、提出が遅れると、従業員の住民税について特別徴収の回数が減るなど、本人に不利益が生じるおそれもあります。
そのため、年末調整が完了したら、速やかに提出準備を進め、期限内提出を前提にスケジュールを組むことが実務上の基本といえるでしょう。
給与支払報告書は、年末調整の結果をもとに作成する書類であり、事前準備と記入ルールの理解が重要です。
ここでは、作成前に確認しておきたい情報と、個人別明細書・総括表それぞれの基本的な書き方のポイントを整理します。
給与支払報告書を作成する前に、まずは年末調整で回収・確定した情報が揃っているかを確認します。
特に、次の申告書類は個人別明細書の記載内容と密接に関係するため、事前準備が欠かせません。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
これらの内容をもとに、扶養親族の状況や各種控除額を反映させていきます。
また、従業員の住所(1月1日時点)や個人番号(マイナンバー)に誤りがないかも、あわせて確認しておくことが重要です。
個人別明細書は、従業員一人ひとりの給与内容を記載する書類で、記入の考え方は源泉徴収票とほぼ共通です。
年末調整を行った場合は確定した年税額を、年末調整を行っていない場合は実際に源泉徴収した税額を記載します。
主な記載ポイントは次のとおりです。
・受給者情報の記載
住所・氏名・個人番号を記載し、事業所で受給者番号を付番している場合はその番号も記入します。
役職がない場合は、役職欄を空欄として問題ありません。
・給与・控除・税額の記載
年間の給与支給額、給与所得の金額、所得控除の合計額、源泉徴収税額を記載します。
・配偶者控除・扶養控除に関する記載
控除対象配偶者や扶養親族の人数、障害者控除の該当有無などを記入します。
該当する場合は、配偶者や扶養親族の氏名・個人番号も記載します。
・各種控除の内訳
社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除など、年末調整で適用した控除額を欄ごとに記入します。
・摘要・概要欄の活用
普通徴収とする理由がある場合や、前職分を含めて年末調整を行った場合など、個別事情がある場合は概要欄に補足記載を行います。
個人別明細書は情報量が多いため、年末調整の結果と突き合わせながら、転記ミスがないか確認することが重要なポイントです。
総括表は、給与支払報告書全体をまとめる事業者単位の一覧表です。
提出する個人別明細書の内容と整合しているかを意識して作成します。
主な記載ポイントは次のとおりです。
・給与支払者の情報
法人の場合は法人番号と会社名、個人事業主の場合は個人番号と氏名を記載します。
あわせて、給与事務を行っている事務所の所在地や代表者名も記入します。
・連絡先の記載
市区町村からの問い合わせに備え、担当者の氏名・部署・電話番号などを記載します。
税理士が関与している場合は、その情報も記入します。
・受給者総人員・報告人員
1月1日時点の給与受給者数や、実際に個人別明細書を提出する人数を区分ごとに記載します。特別徴収・普通徴収の内訳もここで整理します。
・給与の支払方法・期日
月給・週給などの支払形態や、支払日を記載します。
・指定番号の記載
すでに市区町村から特別徴収の指定番号を受けている場合は、その番号を記入します。
総括表は、提出書類全体の「表紙」にあたる重要な書類です。
個人別明細書の人数や区分とズレがないかを最終確認してから提出することが、実務上のポイントといえるでしょう。
給与支払報告書は住民税の課税・特別徴収につながる重要書類です。
作成・提出の場面では「記載事項の扱い」や「提出方法の要件」を取り違えると、自治体からの照会や再提出につながりやすいため、次の3点を押さえておきましょう。
給与支払報告書(個人別明細書)は、提出用の書類として個人番号(マイナンバー)の記載欄が設けられており、原則として記載が求められます。
一方で、従業員に交付する源泉徴収票は、交付用にはマイナンバーを記載しない運用が一般的で、提出用と交付用で取り扱いが異なる点に注意が必要です。
また、番号・氏名・住所・生年月日などの基本情報に誤りがあると、データ連携や課税処理の支障になり得るため、転記前の情報確認を徹底します。
給与支払報告書は、提出枚数が多い場合に紙提出ではなく電子提出(eLTAX等)または光ディスク等による提出が求められます。
現行では、判定は法定調書の種類ごとに行われ、前々年に税務署へ提出した「給与所得の源泉徴収票」などが100枚以上の場合、電子提出等が必要とされています。
さらに、国税庁は、令和9年(2027年)1月1日以後に提出する法定調書から、義務判定基準が「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられることを明示しています。
将来的に対象が広がるため、早めに提出枚数を見積もって準備しておくと安心です。
給与支払報告書は、原則として前年中に給与の支払い(支払確定を含む)があった人について作成・提出します。
そのため、年末時点で在籍していない退職者であっても、基本的には提出対象です(退職者は退職日時点の住所地の市区町村へ提出するのが一般的)。
なお、退職者については例外的に、退職した年の給与支払額が30万円以下の場合は提出を省略できる旨を案内している自治体もあります。
ただし、自治体によって運用・お願いベースの取扱いが記載されているケースもあるため、迷う場合は提出先自治体の案内も確認し、保守的に対応するのが無難です。
給与支払報告書は、前年に支払った給与等の情報を市区町村へ報告し、従業員の住民税額を決定するための重要書類です。対象者の拾い漏れ(退職者・短期雇用者など)や提出先の誤りを防ぎ、1月31日までに確実に提出できる体制づくりが欠かせません。
年末調整の申告書類を早めに整理し、個人別明細書と総括表の整合性をチェックすることで、自治体からの照会や再提出リスクを抑えられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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