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一つの企業が持つ経済的な価値を指す「企業価値」。MBAなど経営学の分野ではもちろん、投資や企業買収の場面でよく使われるようになりました。
最近は、企業価値の意味も時代の変化とともに広がっていて、単に経済活動の結果や金融資本といったミクロな視点だけで語られるものから、企業が果たす社会的役割から、コミュニティや国家、世界全体への企業による貢献まで、多様なアプローチで判断されるようになっています。
ここでは、企業価値を内部と外部という二つの方向性から見つめながら、企業価値を高めるための一般的なポイントをまとめていきます。
「企業価値」とはもともと、M&Aや投資の分野でよく耳にする用語で、企業の経営陣にとって非常に重要な意味を持つ概念です。具体的に企業価値が問題となるのは、M&Aや事業投資または設備投資において、企業にその価値があるかを見極めるシーンです。
投資家から見て投資に値する価値を持つ企業なのか、株主から見てその企業の株式投資の価値はどのくらいなのかなどを議論するのに用いられていました。
つまり、本来企業価値とはその企業の価値を正確に判断して、投資において出来る限り利潤を追求したい投資家側に大きな意味を持つ言葉でした。
しかし近年、企業内部から企業価値を把握する大切さが叫ばれるようになっており、企業の経営陣や管理職はもちろん、一般社員にも企業価値をどう捉えて、どう高めていくかといった意識の共有が求められる時代に変化しています。
ただ、企業価値の評価で難しいのは、評価方法がさまざまで、利用する指標や見方によって同じ企業であっても企業価値の高低は千差万別だということです。
企業価値を判断する上で、よく引き合いに出されるものに時価総額があります。
時価総額は、企業の発行する株式の価値を現時点の市場から見たもので、たしかに投資家から見た企業価値を見極めるのに大きな材料になるのは間違いありません。しかし、時価総額は刻一刻と変化し続けるものです。企業の業績発表によって株価が急上昇した次の瞬間、スキャンダラスなニュースによって一気に株価が下落することがあります。相場が低迷することも珍しくありません。
企業価値と時価総額とは相関関係があるように見えますが、時価総額は、株式投資において利益を出そうと活動する投資家の視点が、より多く反映されているものといえるでしょう。
企業の経営陣から見た自社の企業価値とは、業績の伸びを永続的に出しつつけること、金融資本を多く確保して基盤の強い経営にしていくこと、企業として利潤を追求していくことなどがイメージされるでしょう。
一方、従業員にとっての企業価値となると、投資家や経営陣から見たものとは異なります。いくら企業の業績がよくて時価総額が上がり続けていたとしても、内部留保ばかりで従業員に還元されなければ、従業員にとってその会社は、価値が高いとは言えないかもしれません。また、人材不足で個人の負担が大きいなど、働き方改革に対応できてい企業も同様でしょう。
誇りを持ってその企業で働き続けられるかどうか、ワーク・ライフ・バランスの維持ができるかなど、従業員一人ひとりが企業人生をベストに生きられるかといった視点が、従業員から見た企業価値といえるでしょう。
資本の増大、時価総額のアップという狭義の企業価値の向上と合わせて、社員全員が共有する企業価値を高める会社づくりが求められていますが、この二つを通して企業にもたらされるメリットは主に次の二つです。
① キャッシュフローが高まる
外部からの評価の向上、業績アップ、社内効率化など、いくつものアプローチで企業価値を高めると、金融機関からの評価も高まるため、業務拡大や設備投資などにおける融資を受けやすくなります。運転資金も潤沢になるため、キャッスフローが高まります。
② 投資において有利な交渉ができる
高い企業価値を持つ企業ほど、市場からの株式投資や融資を呼び込むのはもちろん、吸収合併などM&Aを行う場合にも、株式交換比率を強気で交渉できる可能性が高まります。また、足腰の強い企業体質へと全社を挙げて目指していくことで、株主総会を有利に進められたり、敵対的買収から自衛したりといったメリットも手に入れられます。
投資家からの評価や金融資本といった視点の企業価値で一企業を判断する時代から、もっと広義な意味での価値を重視する時代へと、移り変わっています。
企業価値を高めるためには、単に資産や業績といった数字のみの評価を考えるだけでなく、社会的な役割を果たしているか、従業員にとっての働きやすい空間となっているかなどの視点が大切になっているといえるでしょう。
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