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給与支払額にも影響する「振休と代休の違い」法定休日とその他休日との違いと賃金に関して

公開日2019/11/10 更新日2019/11/11
法定休日とは?その他休日との違いと賃金に関して

企業の休日には法定休日、所定休日、振替休日、代休など様々な休日があり、それぞれ取扱いが異なります。社員が休日労働をした際の割増賃金の率と支払い義務も異なります。人事・労務担当者はそれぞれの休日の意味と取扱いを正しく知っておく必要があります。

法定休日とは

休日は「法定休日」と「法定外休日」に大別されます。法定休日は労働基準法に定められた休日ですが、法定外休日は企業が任意に定めた休日で、「所定休日」とも呼ばれます。

法定休日とは、労働基準法第35条「労働者に毎週少なくとも1日(もしくは4週間に4日)の休日を与えなければならない」との定めに基づく休日のことです。企業はこの休日を社員に付与しなければならない義務を課せられています。

法定休日や後述の法定外休日は、社員の労働義務がない日とされています。しかし全社員一律に同一日を休日とする必要はなく、勤務表などを作成して事前に通知するなど、社員個別に休日を付与しても違法にはなりません。

なお、この法定休日に社員を労働させるには、休日労働を可能にする「36協定」の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

「振替休日」と「代休(代替休日)」

●振替休日

厚生労働省の資料「労働時間、休憩及び休日」は、振替休日とは「たとえば業務の都合により所定休日である日曜日に勤務させなければならない場合に、当該日曜日を勤務日に変更し、その代わりに勤務日である月曜日を休日とするように、所定の休日とあらかじめ他の勤務日と振り替えることをいう」と説明しています。
また、「労働基準法上の振替休日と代休の取扱いの違い」として、「振替休日はあらかじめ定められた法定休日を他の日に振り替えることなので、振替前の休日に勤務しても通常の勤務と同じ。したがって休日労働に対する 割増賃金の問題は発生しないが、振り替えた休日が週をまたがった場合、振替勤務したことにより当該週の実労働時間が週の法定労働時間を超える場合がある。この場合は時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要となる」と注釈しています。そして、休日を振り替える場合は以下の要件が必要としています。

1.就業規則に振替休日の規定を置くこと
2.振替休日を特定すること
3.振替休日は4週間に4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること
4.振替休日はその前日までに対象社員へ通知すること

上記のように、振替休日とは、企業が休日に設定していた日を事前の手続きにより労働日とし、その代わりに他の労働日を休日に設定する制度のことです。
休日を他の労働日に振り替えた場合、社員がもともと休日だった日に労働しても法律上は通常の労働日として扱われます。したがって、企業に休日労働に対する割増賃金の支払い義務は発生しません。
ただし、週をまたいで休日を振り替えたことにより、ある週の労働時間が40時間を超えた場合は、超過時間分の時間外労働に対する割増賃金を支払わなければなりません。また振替休日の設定には、以下の要件が必要です。

・就業規則に振替休日の規定があること
・振替休日を特定すること
・振替休日は4週間に4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること
・振替休日はその前日までに対象社員へ通知すること

●代休

同じく代休とは「休日に休日労働を行わせた場合、その代わりに以後の特定の勤務日または労働者が希望する任意の勤務日の労働義務を免除し、休みを与える制度のこと」と説明しています。
同じく「代休は定められた法定休日に休日労働を行わせるので、その後に代休を与えても休日労働をさせたことが帳消しにされるものではない。したがって、休日労働に対する割増賃金を支払う必要がある」と注釈しています。

代休とは、緊急措置として社員に休日労働を命じた後、その代替休日を臨時的に設定する制度のことです。休日労働の事後に代休を付与しても、休日労働をさせた事実は変わらないことから、代休の場合は休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります(法定休日の場合)。
代休の設定においては法的な要件はありません。ただし、休日労働が常態化しているような企業が代休を設定する場合は、代休設定要件や賃金規定を就業規則等に具体的に盛り込む必要があります。

休日に出社した時の賃金に関して

労働基準法第37条は「企業が時間外や休日に社員を働かせた場合、割増賃金を支払わなければならない」と定めています。割増賃金は、時間外労働(週40時間を超える労働)の場合は25%以上、法定休日労働の場合は35%以上となっています。

この割増賃金においてポイントになるのが、その休日労働が法定休日なのか法定外休日なのか、ということです。

それが法定休日の場合は、当然35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。一方、それが法定外休日の場合は「休日労働」としては扱われないので、企業に割増賃金支払い義務がありません(ただし、法定外休日に社員を働かせることにより週の労働時間が40時間を超える場合は、超過時間分に対して25%以上の割増賃金支払い義務が生じます)。

また、法定休日に社員が休日労働をしても割増賃金を支払わなくてもよいケースがあります。それは「労働基準法上の管理監督者に該当する社員」の場合です。

労働基準法において、「管理監督者」は残業や休日労働に関する規定の適用除外となっているので、管理監督者が休日労働をしても企業は割増賃金を支払う義務はありません。管理監督者とは経営者と一体的な立場で仕事をしており、出勤・退勤等の勤務時間について制約がなく、その地位にふさわしい処遇を受けている社員のことです。

ただし、社内で管理監督者に相当する地位にあっても、実務上の責任と権限、賃金等の処遇が一般社員同等の「名ばかり管理職」の場合は、労働基準法の規定は適用されず、企業は休日労働に対する割増賃金の支払い義務が生じます。

企業の中には法定休日・法定外休日、管理監督者などの区別をせず、社員の休日労働に対して一律に35%以上の割増賃金を支払っているケースが見受けられます。人事・労務担当者は自社で休日労働が発生した時は、それが「法定休日か法定外休日か」、その社員が「管理者か一般社員か」を確認し、正確に記録する注意力が求められます。この注意1つで、不要な人件費増を防止できるでしょう。

割増賃金の計算の仕方

では社員に休日労働をさせた場合は、割増賃金はどのように計算すればよいのでしょうか。実際の計算は給与計算と同じく複雑なので、これは経理担当者の仕事になります。しかし、人事・労務担当者も自分が管掌している業務の常識として、その基礎知識は身に着けておくとよいでしょう。

(1)休日労働における割増賃金の計算手順

休日労働の割増賃金の計算においては、基本的に法定休日の労働、法定外休日の労働、深夜労働と3つの要素が絡んできます。これが割増賃金計算のポイントになります。そこで休日労働の割増賃金は次の手順で計算します。

◆手順1:時給(1時間当たりの賃金)を算出する

時給制社員の場合は算出の必要がありませんが、月給制社員の場合は、

月給÷過去1年間における1カ月の平均所定労働時間

の算式で時給を算出します。

仮に月給が26万円、1カ月の平均所定労働時間が176時間の場合、時給は1477円(26万円÷176時間)になります。

◆手順2:時給に割増率を掛ける

法定休日の割増率は35%以上、法定外休日の割増率は25%以上、深夜労働の割増率は25%以上などとなります。なお、法定休日に深夜残業をした場合は、法定休日の割増率に深夜労働の割増率が加算されるので、この場合の時給割増率は60%(35%+25%)以上になります。

◆手順3:手順2に労働時間を掛ける

これで休日労働日の割増賃金を確定できます。

仮に月給26万円、1カ月の平均所定労働時間が176時間の社員が法定休日に10時間働いた場合、時給は1477円なので法定休日労働の賃金総額は1万9940円(1477円×1.35×10時間)になります(端数切り上げ)。これが法定外休日労働の場合の賃金総額は1万8463円(1477円×1.25×10時間)になります。

また、上記の設定で深夜労働を2時間していた場合、法定休日労働のケースでは深夜労働の割増率が60%以上になるので、法定休日労働の賃金総額は2万4667円([1477円×1.35×10時間]+[1477円×1.60×2時間])になります。

これが法定外休日労働なら、深夜労働の割増率が50%以上なので、その賃金総額は2万2894円([1477円×1.25×10時間]+[1477円×1.50×2時間])になります。

(2)代休を取った場合の割増賃金の計算

振替休日の場合、企業が既述の要件を満たしていれば割増賃金支払いの対象になりませんが、代休は割増賃金支払いの対象になります。

たとえば、前述の手順3のケースで法定休日労働を行った社員が代休を取らなかった場合、企業はその社員に1万9940円を支払わなければなりません。しかし、この社員が通常の労働日に代休を取ると代休日は法定休日労働日と相殺されるので、企業は法定休日労働割増分の5170円((1477円×0.35×10時間)だけ支払えばよいことになります。

労働基準法違反にならないために

休日の取扱いにおいて、企業が不本意な形で労働基準法違反を犯しやすいのが振替休日の設定と、社員の振替休日・代休の未消化です。たとえば、次のようなケースです。

●週を越える振替休日の設定

労働基準法は1日8時間・週40時間を超える法定労働時間外の残業に対して25%以上の割増賃金支払いを企業に義務付けています。この規定は振替休日にも適用されます。

このため、たとえば1日8時間・週40時間の法定労働時間を守っている企業が第1週の休日と第2週の労働日を振り替えた場合、第1週の労働時間は48時間になります。したがって、企業は振替休日を命じた社員に対し、8時間分の割増賃金25%以上を支払わなければなりません。

人事・労務担当者が「振替休日の場合は割増賃金不要」と安易に理解していると、その企業は労働基準法違反のリスクにさらされるので注意が必要です。

●社員が未消化の振替休日・代休を貯めている場合

振替休日や代休は、その休日労働の通常賃金と相殺し、割増賃金のみを支払うのが通例です。しかし、未消化の振替休日・代休を貯めている社員に対し、割増賃金のみを支払うと「まだ付与していない振替休日・代休」と相殺したことになり、「賃金支払いの全額払い」を規定している労働基準法に違反することになります。

したがってこのような社員がいる場合、人事・労務担当者は早急に休日を消化させる、あるいは休日労働賃金の支払いで未消化休日を清算するなどの措置を取る必要があります。

まとめ

休日労働が「法定休日か法定外休日か」は、休日労働を命じた社員の給与計算において非常に重要なファクターになります。したがって、たとえば土・日あるいは木・月が休日の週休2日制を採用している企業なら、日曜日あるいは月曜日が法定休日、土曜日あるいは木曜日が法定外休日と明確に定め、それを就業規則に明記しておく必要があります。

こうしておけば給与計算がスムーズかつ正確にでき、賃金を巡る社員とのトラブル発生などのリスクも防止できます。また休日に関する適正な取扱いは、休日労働による人件費増大を抑制するためにも重要です。

その意味で休日に関する知識は、人事・労務担当者の必須知識の1つともいえるでしょう。

※本記事の内容について参考にする際は、念のため専門家や関連省庁にご確認ください

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