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ビジネスパーソンにビジネス文書の作成は付き物です。しかし「文章を書くのは苦手」というビジネスパーソンが少なくありません。苦手意識があるから上達意欲が湧かず、上司から「もう少し分かりやすく書けないのかね」の繰返しになってしまいます。どうすれば苦手意識を克服し、「分かりやすい文章」を書けるようになるのでしょうか。
文章力とは、要するに「誰が読んでもすぐ理解できる、分かりやすい文章を書くスキル」に尽きます。
そしてビジネス文書における「良い文章」も、「誰が読んでもすぐ理解できる、分かりやすい文章」に他なりません。具体的には、文書作成者が伝えたいメッセージを相手に正確に伝え、ときには納得させ、あるいは行動させる文章です。なぜなら、ビジネス文書の目的は、相手に行動を促すためのコミュニケーションであり、ビジネス文書の文章とはそのためのツールだからです。
ビジネス文書には、社内での報告、連絡などのために作成する「社内文書」と、取引、社交・儀礼などのために作成する「社外文書」があります。もう1つ、社内外を問わず、口頭だけでは正確性を欠くので、後々のトラブル発生要因になるのを避けるため、記録して保存するために作成する議事録、レジュメ、覚書などがあります。
このため、ビジネス文書においては「用件や要件を正確に、分かりやすく、簡潔に伝える文章で作成されていること」が基本となります。
これさえ分かっていれば、文章を書くのが苦手というビジネスパーソンでも、ことビジネス文書の作成に関してはそれほど苦労しないでしょう。さらにビジネス文書の場合、大半の企業に社内所定の文書フォーマットがあります。それに沿って必要事項を記入すればビジネス文書が作成できる仕組みになっています。
ただし、「所定のフォーマットに沿って」といっても、そこには自ずと「文章作りのルール」があります。
「文書作成者のメッセージが伝わらない文章」の原因は、「長い、回りくどい、抽象的で曖昧」の3つとされています。
| 長い | センテンス(書き出しから句点まで)の長い文章は、読み手の神経を疲れさせ、ストレスを与えます。その結果、「何が書いてあったの?」となります。「1センテンス60字以内」の短い文章が「読んで疲れない文章」とされています。 |
| 回りくどい | 「1センテンスの中に同じ言葉が2回も3回も出てくる」、「1段落(書き出しから改行まで)の中に同じ言葉や文言が何度も出てくる」など重複や繰返しのある文章もNGです。読み手は「結局何を言いたいのか」が分かりにくくなるからです。 |
| 抽象的・曖昧 | 日頃、職場の会話で何気なく使っている「長年」、「大きい」、「凄い」などの表現もビジネス文書では「NG表現」です。これらは抽象的表現であり、認識を共有している相手ならまだしも、そうでない相手は、 弊社は長年○○を手掛け――それは5年なのか10年なのか こんな大きい工作機械は――どの工作機械と比べて? 縦横奥行きの寸法は? ○○を凌駕する性能で――スペックは?特徴は? となり、文書作成者の表現をイメージできないからです。 |
また、「てにをは」の間違いや主語と述語がねじれている文章もメッセージが曖昧になり、伝えたいことを正確に伝えられなくなります。
「分かりやすい文章」とはこれらと逆の文章。すなわち次の「文章3要件」を満たした文章です。
| 一文一義 | 「1センテンス60字以内」であると同時に「一文一義(1センテンスで伝える内容は1つだけ)」が分かりやすい文章の要件Ⅰです。 |
| 簡潔 | 「てにをは」を正確に使うのが要件Ⅱです。例えば、 ●「業務改善は順調に進んで」と「業務改善が順調に進んで」 ●「試作品はこれで良い」と「試作品はこれが良い」 とでは、後に続く文章のニュアンスや意味がまったく異なります。例文の場合なら、前社は肯定になり、後者は強調になるからです。「てにをは」を正確に使うことで伝えたいメッセージが明確化し、重複や繰返しのある回りくどい文章もなくせます。 |
| 具体的 | 具体的な表現が要件Ⅲです。何かを表現する場合は「大きい、小さい」の形容詞ではなく、数字、事例などで表現すると、読み手は何を伝えたいのかをすぐイメージできます。 |
「文章を書くのが苦手」というビジネスパーソンでも、文章力を着実に鍛えられるトレーニング法があります。それはビジネス文書作成の「経験演習と訓練」です。具体的には次のようなトレーニングです。
(1)生産型読書習慣を身に着ける
通勤中、移動中、寝る前などに「本を読む」読書習慣は、ビジネス文書作成の経験を積む演習になります。ただ、そのための本は小説でも雑誌でも何でも良いというものではありません。読書にも消費型と生産型があります。例えば「一般小説」や「一般雑誌」を読むのは消費型読書といえます。対して、「ビジネス小説」や「ビジネス雑誌」を読むのは生産型読書といえます。
後者はビジネスパーソンにとって身近なテーマを扱った書物なので、興味が湧きやすく、ビジネス文書作成に必要な語彙やシーンもよく出てきます。したがって、読んでいる過程で無意識のうちに経験演習をしていることになるでしょう。
(2)コミュニケーション文で文章を書く訓練をする
メール、社内SNS、伝言メモなどのコミュニケーション文は積極的に書くと同時に、それをビジネス文書作成のための訓練と心得ましょう。
常に文章3要件を意識してコミュニケーション文を書いているうちにそれが習慣化し、自然と「分かりやすい文章」が書けるようになるでしょう。
(3)分からない用語や語彙はその場で調べる
もうひとつ重要な訓練は、分からない、あるいは使い方が曖昧な用語や語彙は「その場で調べる」を習慣化することです。
辞書ツールなどで自ら調べた用語や語彙は、手間暇をかけた分記憶に残りやすくなります。正しい用語や語彙でビジネス文書を書くことで文章表現が豊かになり、メッセージが読み手に伝わりやすくなります。その経験が自信となり、「もっと上手な文章を書きたい」モチベーションになるでしょう。
「文章力を鍛える方法」には、上述以外に「プレップ法」の原則、5W3Hの原則、言葉遣いと文体の統一、正しい敬語使い、ワンベストの原則など様々なものがあります。しかし、これらの方法を学ぶ前に重要なことは「習うより慣れよ」です。まずは本稿で解説したトレーニング法で文章力の基本を身に着ければ、文章に対する苦手意識は自然消滅するでしょう。後は学習で文章力に磨きをかけるだけです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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