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従業員満足度(ES)を向上させるために出来る事は?

公開日2020/02/04 更新日2020/02/05
従業員満足度(ES)を向上させるために出来る事は?

従業員満足度(ES)を向上させるために出来る事は?

人事総務担当者の共通の悩みの一つが離職者の増加と言われています。実際、総務省統計局の『労働力調査 平成30年』を見ても、過去1年間に離職した転職者数は2010年以降年々増加しており、2010年に283万人だった転職者数は2018年には329万人に増加。この9年間で転職者数は16%も増加しています。少子高齢化進行を背景に人材は売り手市場となっています。新規採用が年々厳しくなる中、企業にとって「優秀な人材の離職防止」は今や重要経営課題の一つです。いかにして「自社の離職率を下げるか」。そのために近年、重要性が高まっているのが「従業員満足度の向上」になっています。

そんな中、人事総務担当者は、どうすれば自社の従業員満足度を向上させられるのでしょうか。

従業員満足度(ES)とは

「従業員満足度(ESː Employee Satisfaction)」とは「自社に対する社員の満足度の度合 」を示す指標のことを指します。自社の処遇、労働条件、職場環境、企業文化など様々な要因に対する満足度を数値で定期・定量的に測定することで、社員の能力の活用度を評価できるとされています。

一般に「従業員満足度の高い企業ほど労働生産性や業績が高く、離職率が低い」と言われています。

従業員満足度を高める意味

従業員満足度を高めることにより、企業は次の可能性が高まると言われています。

(1) モチベーションの向上

人材マネジメント、労働条件、職場環境などの満足度が高いと「もっと仕事に励みたい」、「もっと業績を上げたい」など、社員のモチベーションは高まります。

(2)労働生産性の向上

モチベーションが高い社員は、どうすればもっと仕事に集中できるか、業績を上げられるかなどを主体的に考えます。その結果、業務の無駄をなくす、段取りを考えて仕事を効率的にこなす、自分の業務スキルを磨くなどの努力を積極的に行います。この努力がその社員の労働生産性を高めます。

(3)離職率の低下、優秀な人材の定着

従業員満足度の高さは、自社に対する社員の愛着心の強さに通じます。愛着心の強さは離職率の低下と優秀な人材の定着につながります。加えて、そうした企業は求職者にとっても魅力的な企業となり、求人の際も優秀な人材を採用しやすくなります。

(4)顧客満足度の向上

モチベーションが高く、自社への愛着心が強い社員は、自社商品に対する愛着心も強く、「どうすればもっと良い商品に改善できるか」を常に考えます。そのために顧客の声に謙虚に耳を傾け、顧客と同じ視点で改善策を模索します。その結果、顧客満足度の高い商品が出来上がります。

従業員満足度が高まる根拠

「なぜ従業員満足度が高まるのか」。その根拠がアブラハム・ハロルド・マズローの「自己実現理論(欲求5段階説)」と、フレデリック・ハーズバーグの「二要因理論(衛生要因・動機付け要因)」とされています。

(1) 自己実現理論

    この理論は人間の欲求を「生理的欲求」、「安全欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現欲求」の5段階に分けて解明しています。このうち、生理的欲求から社会的欲求までの3段階を「低次の欲求」、承認欲求と自己実現欲求の2段階を「高次の欲求」に位置付けています。

    ●生理的欲求

    生理的欲求は、人間が生命を維持するために欠かせない食欲、睡眠欲などであり、従業員満足度においては、給与水準の満足度に通じます。したがって企業は、現在の給与設定が社員の業務実態に照らして適正か否かを検証し、必要に応じて改定する必要があります。

    ●安全欲求

    安全欲求は、不安を感じることなく過ごしたい欲求のことです。従業員満足度においては、人事評価制度、企業文化・風土などへの満足度に通じます。したがって、企業は事業運営に関するあらゆる情報を明文化・公開し、社員の行動基準を明確化する必要があります。

    ●社会的欲求

    社会的欲求は、人とつながりを持ちたい欲求のことであり、社会的存在である人間の本能とも言える欲求です。従業員満足度においては、社内コミュニケーションの満足度に通じます。社内コミュニケーションの活性化は、従業員満足度の向上に限らず、あらゆる施策や戦略の成否を握る鍵になります。このため部門内・部門間、社員・部門長間、社員・経営者間などあらゆる職域・階層間で自由闊達に議論できる風通しの良い社風作りが重要です。

    ●承認欲求

    承認欲求は、「自分を価値ある存在として周囲に認めてもらいたい」という欲求のことです。従業員満足度においては、「自分の能力を正しく評価して欲しい」欲求に通じます。この欲求は向上心の裏返しと言われています。したがって企業は、社員の向上心を刺激するための適材適所配置、ミッション付与などが重要になります。

    ●自己実現欲求

    自己実現欲求は、人間の物質的欲求が充足された後に発現する欲求で、自分の能力や可能性を最大限発揮し、「自分が成り得る者にならなければいけない」とする欲求のことです。平たく言えば「より一層自分らしく生きたい欲求」のことで、人間のすべての行動の動機がこの欲求に帰結するとされています。従業員満足度においては、「自分の能力にふさわしい地位・権限・給与・職場環境が欲しい」欲求に通じます。企業が社員のこの欲求を満たすには、社員が求めるキャリア形成や資格取得を支援するなど、その才能開発意欲を尊重する姿勢が重要です。

    (2)二要因理論

    こちらは、従業員満足度をもたらす要因を「衛生要因」と「動機付け要因」に分け、「満足をもたらす要因」と「不満足をもたらす要因」は別物と言う理論です。

    「衛生要因」

    衛生要因は、自己実現理論の「低次の欲求」に相当する要因で、従業員満足度において不満足をもたらす要因を指します。具体的には、次の要因とされています。

     ・経営ビジョンや経営理念

     ・職場の人間関係:部門長、同僚などとの人間関係

     ・労働条件:雇用形態、労働時間、休暇、福利厚生制度など

     ・給与水準

     ・私生活の充実度:家計の経済的余裕度、家族との人間関係、自分の趣味に費やせる金銭的・時間的自由度など

    「動機付け要因」

    動機付け要因は、自己実現理論の「高次の欲求」に相当する要因で、従業員満足度において満足をもたらす要因を指します。具体的には、次の要因とされています。

     ・目標の達成感:業務上の目標達成感があること

     ・成果に対する評価:業務上の成果を適正に評価してくれているとの実感があること

     ・業務内容:充実感や満足感が得られる業務に就いていること

     ・責任感:業務における責任と権限が与えられていること

     ・昇進:社内の地位が上がること

     ・成長:自身の能力が伸びていると実感すること

    従業員満足度の調査方法

    自社の従業員満足度を高めるためには、社内アンケート調査を行い、その結果を定量的に分析し問題点を数値で可視化、それを改善策に反映する取り組みが必要です。

    このアンケート調査は、基本的に次の手順で行います。

    (1)調査目的の明確化

    調査を実施する前に、何のために調査をするのか、その目的を明確化します。目的が曖昧だと調査票の設計や質問事項の設定が曖昧になり、従業員満足度向上に有効なデータが得られないからです。

    (2)調査対象者の選定

    調査目的が決まれば、社内のどんな社員層に調査をすれば良いのかが明らかになります。例えば全社的な課題なら全社員を対象に、処遇に関する課題なら若手・中堅社員を対象にと言った具合です。

    (3)調査票の設計

    調査目的により想定した仮説に基づき調査項目を検討し、その結果により適切な調査票設計と調査項目設定を行います。

    (4)アンケート調査の依頼

    調査票を作成したら、調査対象者に調査票を配布し、回答を依頼します。この場合、事前に対象者へ調査の目的を説明しておくのが、回答率を上げるコツです。

    (5)調査結果の集計

    回答が集まったら、回答結果の集計と分析をします。まずは、回答数の中で「満足」の回答数が○○%、「不満」の回答数が○○%などの単純集計により全体的な満足度傾向を分析します。次に年齢、性別、勤続年数、担当業務、役職など属性のクロス集計で属性別の満足度傾向を分析します。

    最後に、「どのような項目の満足度が高いか」などの質問項目間の相関関係を分析する場合は相関係数集計を行います。この集計で、社員は従業員満足度のどんな項目を重視しているのかを分析できます。

    (6)調査結果を各種施策に反映

    分析結果を満足度向上の諸施策に反映させます。

    また、分析結果の社内フィードバックも重要です。調査の結果、何が判明し、どんな課題を解決しなければならないかの情報を全社員へ公開し、会社は社員と一体となって従業員満足度向上のための課題解決に邁進する姿勢をアピールしましょう。この姿勢が、社員のモチベーションや自社愛着心をさらに高める要因となるでしょう。

    従業員満足度は、自社の仕事に対する満足要因と不満要因が複雑に絡み合っています。これらの要因は5項目に集約できます。そこで前述(3)の調査票の設計に際しては、次の5項目を調査項目設定の目安にすると良いでしょう。

    ①仕事に関する満足度項目

     仕事のやりがいへの満足度 / 仕事を通じた自分の成長感 / 個人目標の納得感 など

    ②処遇に関する満足度項目

     評価・処遇の納得感 / 評価制度の納得感 / 給与や手当の納得感 / 昇進に対する公平感 / 福利厚生制度の充実感 / 教育訓練・キャリア開発制度の充実感 など

    ③上司に関する満足度項目

     上司の指導に対する納得感 / 上司への尊敬度 / 上司の業務遂行能力評価 / 上司・部下間の認識ギャップの有無 / 上司と部下のコミュニケーション密度 など

    ④職場に関する満足度項目

     上司と部下、同僚との人間関係の満足度 / 社内の風通しの良さの満足度 / 助け合いや思いやりの企業風土の有無 / セクシャルハラスメント・パワーハラスメントの有無 など

    ➄会社に関する満足度項目

     会社の経営理念やビジョンに対する共感度 / 企業風土に対する満足度 / 会社の将来性に対する評価 / CSR活動に対する評価 など

    従業員満足度が高い企業の特徴は

    従業員満足度が高い企業の社員には、次の共通性が見られます。

    ●自社の経営ビジョンを体得している

    従業員満足度の高い企業の社員は、自社の経営ビジョンや経営理念への共感度が高く、経営トップの情報発信を真摯に受け止め、それを自分の業務に反映しようとする特徴が見られます。このため、経営ビジョンや経営理念がスローガン化せず、社員の行動基準になっています。必然的に経営ビジョンや経営理念の実現に向け、社内が一体化する社風が醸成されています。

    ●社内コミュニケーションが活発

    従業員満足度が高い企業は、社内の一体感が強いので、自ずと社内コミュニケーションも活発です。上司・部下の分け隔てなく、様々な場面で議論が真剣に展開されています。また、社内コミュニケーションが活発だと、社員がサポートし合う風土も根付いており、トラブルやミスが少ない業務運営ができています。

    ●当事者意識が強い

    従業員満足度が高い企業の社員は当事者意識が強く、自律的に業務遂行をしています。サポートし合う風土と相まって一人何役もこなすマルチタレント社員も多く、一人当たりの労働生産性が業界平均より格段に高いのが特徴です。

    ●無駄な業務が少ない

    従業員満足度の高い企業の社員は、当事者意識が強いので常に自分の業務効率を考えて業遂行しています。必然的に無駄な会議や業務が少ないのが特徴です。

    まとめ

    従業員満足度を高める施策は、その企業を取り巻く市場環境や投入できる経営資源により千差万別です。「こうすれば従業員満足度を高められる」というセオリーはありません。各企業が、できる範囲内の施策を試行錯誤的に実施し、PDCA回しで一歩ずつ改善してゆくのが従業員満足度向上に向けた真の取り組みと言えるでしょう。まずはアンケート調査等で従業員満足度に対する自社の現状把握を行うのが重要です。そこから自社の課題を見つけ出し、その課題解決に取り組む姿勢を見せるだけでも社員のモチベーションは変わり、離職率が低下するでしょう。人事総務担当者の知恵が期待されます。

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