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ジョブ型雇用は「新しい社会」のスタンダードになるのか

公開日2020/08/22 更新日2020/08/23

新型コロナの感染拡大防止策としてテレワークなどの在宅勤務が推奨され、多くの企業が出社人数を減らして、テレワークやリモート会議などを積極的に導入しました。そのようななかで注目を集めているのが「ジョブ型雇用」です。

ジョブ型雇用とは社員の職務内容を明示して、その達成度合いなどに応じて報酬を支払う制度のこと。テレワークでは社員の労働時間管理が難しく、残業代を適切に算出できないため、従来の労働時間に応じた給与の仕組みを見直す必要があるというわけです。

実際、在宅勤務の広がりに合わせて、ジョブ型雇用の導入を発表する企業も増えてきました。

ジョブ型雇用は、アフターコロナ時代の新たな雇用制度として定着していくのでしょうか。

注目される「ジョブ型雇用」

ジョブ型雇用の「ジョブ」とはジョブディスクリプション(職務定義書)のことです。つまり、職務の内容を記した定義書に基づいて仕事をしてもらう雇用形態のことです。

これまで、日本では職務を明確にした採用はあまり行われていませんでした。たとえば、営業職で採用されても、配属されるまでは、どのようなクライアントを担当するかはわかりません。採用後も適性によっては違う職種に配置転換されることもあります。このような採用をメンバーシップ型といいます。

日本でメンバーシップ型の採用が続いてきたのは、大学や高校などの新卒者を一括採用し、一から職業人として教育・訓練し、定年まで働いてもらうという考え方が社会に根付いていたからでした。

これに対してジョブ型雇用では、あらかじめ職務の内容やレベルが示され、その職にふさわしい人が採用されます。この職務の内容やレベルが示されたものを職務定義書と呼びます。

ですからジョブ型雇用では、採用後、定義書で示された通りの部署に配置され、基準にあった能力の発揮を期待されます。会社側には基本的に、人材の育成や年功序列という考え方がないので、職務内容が変わらなければ報酬は変わりません。

報酬を上げるには自分の力でスキルアップし、職務のグレードをアップさせる必要があります。逆に、期待される能力や成果を出せなければ、グレードがダウンしてしまうこともあります。

日本では、法律で解雇の要件が厳しく規制されているので、ただちに解雇されることはありませんが、ジョブ型雇用が一般的な欧米では、職責が果たせないと解雇される可能性が高くなります。

ジョブ型とメンバーシップ制の違いは、雇用の方法や考え方にありますが、それは働き方そのものにも関わります。

メンバーシップ制での雇用であれば、育成と終身雇用を前提としているので、長い会社生活を前提に人事や賃金制度が構築されます。たとえば、新入社員の頃は「見習い」として給与水準が抑えられ、経験を積むに従って給与が上がっていきます。

日本ではメンバーシップ制が採用されてきたことにより、どのような成果を上げたかより、どれだけ長い時間働いたかによって給料が増える仕組みが定着しました。

一方、ジョブ型では即戦力の人材が求められ、成果が重視されます。その結果、社員の間でも報酬や待遇の格差が生じます。日本では、しばしば海外出身の社長の高額な報酬が問題視されますが、職責に見合った報酬が得られる海外では当たり前のことなのです。

この場合、会社と社員関係も日本とは違ってドライになり、会社が能力に見合った職務と報酬を用意できなければ、社員はよりよい報酬を求めて転職します。

労働時間に関していえば、短い労働時間で成果を上げたほうが評価も高くなります。

「ジョブ型雇用」は日本に定着するか

数年前から一部の企業で導入が始まったジョブ型雇用ですが、新型コロナ対策を機に注目されるようになったのには、理由があります。それは時間管理の問題です。

労働基準法では、企業に対し社員の労働時間管理を厳しく求めています。また、時間外労働については、割増賃金(残業手当)を支払うよう定められています。

ところが、自宅で行うテレワークでは、厳密な時間管理を行うことが困難です。テレワーク用の勤怠管理サービスを利用する方法もありますが、すべての企業が利用できるとはかぎりません。

社員の側からしても、臨時休校で子供も自宅にいるなか、職務に専念しろといわれても難しい状況で、子供が寝た後に仕事を片付けたという人もいるでしょう。しかし、厳密にいえば深夜の労働は深夜の割増賃金(深夜勤務手当)の対象です。

また、自宅勤務では上司が部下の指導・育成にあたることも難しく、人事評価で能力の伸長を測ることもできなくなってしまいます。

そうなると、テレワークをする社員の評価は職務の内容と成果に頼るしかなくなり、ジョブ型雇用が注目を集めるようになったというわけです。

たとえば、最近では日立製作所が今年3月、年功序列型の人事制度を「ジョブ型」に転換していくことを表明しました。これと合わせて、在宅勤務を定着させていくそうです。

富士通も今年4月から幹部社員を対象にジョブ型人事制度を導入。テレワークの拡大にも積極的で、今後、一般社員にもジョブ型人事制度を広げていくとみられます。

このように、ジョブ型雇用への流れは時代の趨勢のようにも感じられますが、日本の実情を無視したジョブ型雇用への転換に懸念の声もあります。

日本では、新卒者の一括採用と終身雇用を前提とした人事制度が長く定着したために、社会の仕組みそのものが、日本特有の雇用制度に適応してしまいました。

解雇の要件が厳しい労働基準法など労働法制がそうですし、大学教育でも社会に出て即戦力で働ける人材を育成しているとは、とてもいえません。つまり、日本では欧米型のジョブ雇用を受け入れる土壌が十分にできていないのです。

拙速なジョブ雇用の導入は、社内の混乱を招き、社員のモチベーション低下を招くかもしれません。導入にあたっては、時間をかけ、社員の理解を得ながら進めていくことが必要でしょう。

まとめ

新型コロナの流行は、私たちの生活を大きく変えるかもしれないといわれています。

もちろん、働き方にも大きな影響を与えることでしょう。従来の日本型の雇用制度が見直されるのも当然です。

しかし、欧米の制度をそのまま、今の日本に導入するのは混乱を招きかねません。また、法律の整備や教育制度の改革も不可欠です。

ジョブ型雇用が新しい雇用形態として定着するには、企業単独で進めるのではなく、国や経済界、教育界が協力して日本型のジョブ雇用制度を作り上げていく必要があるのではないでしょうか。

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