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河野太郎行政改革担当大臣が各省庁に対し押印の廃止を求め、できない場合はその理由について回答を求めたことが話題になりました。また菅義偉首相も、規制改革推進会議の席上で各省庁の行政手続きにおいて、書面・押印・対面主義を見直し、「脱ハンコ」化を強く求めました。
こうした「脱ハンコ」の動きは、今後政府のみならず、地方自治体さらには民間企業においても加速するものと思われます。では、なぜ「脱ハンコ」が今注目を集めているのでしょうか。ここでは「脱ハンコ」を行うメリットに焦点を当て、解説します。
目次【本記事の内容】
実際のメリットを紹介する前に、そもそもなぜ私たちはハンコを使っているのかを考えてみましょう。
それには2つの理由があります。
1つは慣例にしたがって、なんとなく使い続けているというもの。もう1つは、ハンコを押した書類でなければ法律で認められないという誤解に基づくものです。一部の文書を除けば、契約書、見積書、請求書などの文書にハンコが押されていなかったとしても、本人が作成したものであれば法的な効力があるとされています。
それでも、なぜハンコを押しているのかというと、それは「署名捺印」「記名押印」というように、氏名とともに本人であることを証拠として残し、偽造されにくくするためです。
つまり法的には不要でも、商習慣として相手に求められれば断ることが難しく、そのまま維持されてきたというのが、日本のハンコ文化だといえるでしょう。
日本においては2001年4月1日に「電子署名法」が施行され、デジタル文書においても電子署名を付与することで、手書きの署名や押印と同様に通用することが法的に認められるようになりました。
つまり、改ざんやセキュリティの不安をといった面において脱ハンコの条件は整っているのです。
そうやって続いてきたハンコ文化ですが、新型コロナウイルス感染症の広がりとともに、多くの企業ではオフィスワークを中心にテレワーク化が進みました。このような状況にあって、テレワークをしたくてもハンコを押す必要があるという理由だけで、出社を余儀なくされた人も多かったといわれます。
もし、電子署名や電子印鑑など、従来のハンコに代わる手段があれば、わざわざ出社する必要はありませんし、移動にかかる時間やコストが不要といったテレワークのメリットは増大するはずです。
また、電子署名はスマートフォンでも利用できるため、クラウドサービスとの連携によって時間や場所に制限されることなく、いつでもどこでも利用することが可能です。
ちなみに政府が推進するマイナンバーカードにも電子署名技術が導入されており、オンラインで確定申告ができたり、コンビニエンスストアで住民票の写しや課税証明書などを取得できたりするようになっています。
長年日本では、脱ハンコとともにペーパーレス化が叫ばれてきました。インターネットの普及によって、PDFで文書をやりとりする機会も増えています。
その一方、社内ではさまざまな申請書や稟議書といった紙の文書にハンコを押して回覧したり、決済したりすることがいまだに多く行われています。
欧米に比べて生産性が劣っているとされる日本ですが、そのようなハンコ文化が根強く残っていることもその一因として挙げられます。
スピーディな意思決定が求められる現代のビジネス社会では、一枚の紙の文書に役職者のハンコが並ぶようなスタイルを脱することが必要不可欠です。
ハンコとともに紙の文書の移動をなくし、オンラインによる書類の回覧や決済を行うシステムを整えることができれば、経営のスピードも上がり、他社に打ち勝つための競争力や国際的な競争力を獲得するうえでも「脱ハンコ」は有効な手段であり、大きなメリットが生まれるといっても過言ではありません。
日本アドビシステムズが行った「中小企業経営者に聞いた判子の利用実態調査」によると、ハンコの影響については「生産性をとても下げていると思う」と「生産性を下げていると思う」を合わせると72.6%に上りました。また、74%がハンコ撤廃を支持し、50.1%は「撤廃は難しい」と回答しています。その阻害要因として51.4%と一番多かったのが「取引先の契約方法に従う必要がある」、続いて「法的有効性」「セキュリティ」というものでした。
この結果から多くの経営者が脱ハンコにメリットを感じてはいるものの、自社だけで脱ハンコは完結しないという実態がわかります。
新型コロナウイルスは、私たちの生活様式やビジネススタイルを一変させました。経済的不況を引き起こしつつ、これまで見過ごしてきたさまざまな課題が浮き彫りになったともいえます。
コロナ危機をチャンスに変えて経済を復興させるためには、デジタル技術を駆使して「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を加速させることが求められています。「脱ハンコ」もその一環であり、取引先の理解を得ながら電子署名技術などを導入して、業務の効率化や生産性向上を図っていく必要があります。
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