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内部統制を実施することで業務の効率性や財務状況の明確化など、企業存続へのメリットがいくつも生じます。今回は、内部統制とはなにかを理解するために、定義をはじめ目的や構築に必要な要素、メリットについて解説します。
●内部統制の定義
内部統制とは、企業目的を適正かつ有効、効率的に達成するための、社内体制や仕組みの整備プロセスを指す用語です。
金融庁により示された【財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準】では、内部統制は次のように定義されています。
“内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。”
●内部統制が求められる理由
内部統制が求められる背景には、1980年代の米国における粉飾決済や不正経理等による、経営破綻が相次いだことが関係しています。
日本でも、企業が内部統制を整備することで健全経営に結び付けたいとして、2009年3月期以降、すべての上場企業に対し「内部統制報告書」の提出が義務づけられました。
上場企業以外への義務づけはありませんが、内部統制の実施はPDCAサイクルの整備にも直結するため、企業規模や分野、ビジネス形態を問わず、企業経営の健全化や発展に欠かせないものでもあります。
●内部統制に問題があったら罰則対象になる?
上場企業に求められる内部統制報告書の評価結果に問題があったとしても、いきなり上場廃止や金融商品取引違反の対象になることはありません。
ただし、内部統制報告書の重要な事項について虚偽の記載があった場合は、金融商品取引法197条の2によって罰則の対象となります。
次の章からは、内部統制の4つの目的と6つの基本的要素について解説しますので、理解を深めていきましょう。
内部統制を達成するためには、正社員をはじめパートやアルバイト、派遣社員など組織に関わるすべての従業員に対し、当事者としての認識と理解を持たせる必要があります。
金融庁が掲げる、内部統制の4つの目的を把握しておきましょう。
●業務の有効性及び効率性
「人・モノ・コスト・時間」が無駄なく効率よく行われているかをチェックすることで、業務の有効性や効率化を目的とします。
●財務報告の信頼性
法令に則った財務報告(決算書)を作成することで、財務情報の信頼性の確保を目的とします。結果として、投資家や銀行からの信頼を得ることにつながります。
●事業活動に関わる法令などの遵守
法律を遵守するとともに、社内ルールやモラルを守ることで、企業の社会的信用を保つことを目的とします。
●資産の保全
資産の取得や使用、処分などにおいて適切に管理し、有効活用することを目的とします。結果として、利益の維持・増大につながります。
金融庁では、内部統制の目的達成の構築にあたり、6つの基本的要素を掲げています。
PDCAサイクルにあてはめると、リスクの評価と対応は「P(プラン)」、統制活動は「D(実行)」、モニタリングは「C(チェック)」となります。残る「A(アクション)」は、6つの要素から導き出された、リスク対応策・改善案の実施です。
●統制環境
内部統制実施に対し、組織全体の意識を高めます。例えば、経営者の意向や経営方針、戦略、組織構造、慣行などに対し、従業員全員が認識・実施できるよう環境を整備します。
●リスクの評価と対応
内部統制の目的を実施する際にリスクとなる要因を分析・評価し、リスクマネジメントを行います。
●統制活動
経営者の命令及び指示がすべての従業員において遂行されるよう、それぞれの職務が果たすべき責任や権限などを明確にし、役割を適切に整理・配分・改善します。
●情報と伝達
内部統制の実施にあたり、適切な情報を組織内外及び関係者に正しく伝えます。不正行為防止や情報漏洩のリスク低減に有益です。
●モニタリング(監視活動)
内部統制が有効に機能しているかを継続的に評価するプロセスを行い、適宜見直して是正します。
●IT(情報技術)への対応
内部統制の目的達成に向け、業務実施における組織内外のIT環境や適切な戦略を行います。アクセス管理やシステムの保守・整備、システムダウン時の対応策などを定めます。
適切なルール作りや従業員の認識と理解といった内部統制を徹底することで、企業が得られるメリットの例を挙げます。
●財務状況の透明化による信頼性の確保
内部統制により財務状況の透明化をすることで、正確な経営状況の把握や経営判断に役立つのはもちろんのこと、投資家や銀行からの信頼性の確保につながります。
●ITマネジメントの強化
内部統制を実施することで、経営陣とシステム担当部門とのコミュニケーションが円滑となり、より一層のITマネジメント強化につながります。
●情報漏洩による信頼失墜の防止
内部統制の4つの目的を達成することで、事務やIT部門、営業など各業務の属人化による個人情報や企業情報の漏洩行為を抑制し、企業の社会的信頼の失墜を防げます。
●従業員のモチベーション・業績の向上
引継ぎ時の業務フローや権限の明確化、従業員が担う役割など、内部統制が実施されることで、ムダの排除や属人化によるパワハラなども抑制できます。結果として、従業員同士の協力体制が生まれ、モチベーションの向上や離職率の低下、業績の向上につながります。
内部統制とは、企業目的を適正かつ有効、効率的に達成するための、社内体制や仕組みの整備プロセスを指す用語です。上場企業に提出が義務づけられた内部統制評価報告書は、PDCAサイクルが適切に回っているか、粉飾決済がされていないかなどの意義を持ちます。
中小企業など義務づけがなされていない企業にとっても、内部統制の目的を遂げることで多くのメリットが生じるので、企業存続のためにも可能な範囲で取り組みましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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