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コンプライアンス(法令遵守)の掛け声が一般化するにつれて、法務部の仕事が注目されています。しかし、法務部が設置されていない会社も少なくありませんし、どのような業務を行っているのか、あまり知られていないかもしれません。この記事では、法務の具体的な業務や役割について解説します。
目次【本記事の内容】
法務部は、企業活動にまつわる法律問題について解決策を考えて実行したり、社内外での活動での法令遵守を徹底したり、企業が保有する所有権や知的財産権などを活用して収益化を図ったりすることを推進するセクションです。要するに、所属する自社に関する法律問題を統括する「企業法務」を担当する部署なのです。
法務部はどの企業にも置かれているわけではなく、常設されているのは大企業が中心です。中小企業では、総務部や人事部などが、法務の役割を兼ねていることが多くなっています。
法務部の仕事は、医学になぞらえて「臨床法務」「予防法務」「戦略法務」の3段階に分かれているといわれます。
<臨床法務>
法務の源流は臨床法務です。つまり、患者の病気やケガなどの症状を検討して、医師が対症的な治療を施すように、法務部スタッフは自社が巻き込まれた法的トラブルに対する事後的な対処を行います。
トラブル解決に向けての会議で方針を検討したり、交渉の場に、顧問弁護士らとともに法務部のスタッフが同席したり意見を述べたりすることもあります。ときには裁判の当事者や証人として出廷することもありえます。
こうした臨床法務のことを「治療法務」「裁判法務」と呼ぶこともあります。
<予防法務>
ただし、トラブルが起きてから対処するのは時間も労力も費用もかかり、大変疲弊します。会社の本業に支障が生じることすらありますので、トラブルが起きないよう未然に防ぐことができるに超したことはありません。
たとえば、医師が患者の病気やケガを防ぐために、様々な生活改善などのアドバイスを送ったり、セミナーを開いて啓発したりすることがあります。それと同様に、法務部が率先して、あるいは全社的に働きかけて、会社が法的なトラブルに巻き込まれないような施策を採ることも大切な役割です。これを「予防法務」といいます。予防法務を徹底することによって、トラブル解決にかかる様々なコストを回避して、企業の収益向上に貢献することができるのです。
たとえば、契約を締結する前に、契約書の内容を法務部がくまなくチェックして、相手方に誤解を与えるような表現や、どちらかにとって一方的に不利な条文規定がないかどうか、肝心な規定が抜けていないか、などを検討し、該当部分があれば社内で話し合ったり、契約の相手方と交渉したりすることで、条項の追加や修正に臨みます。
また、労使間の内部的なトラブルを未然に防ぐため、就業規則や労働契約書にも、肝心な部分の抜けや不備がないかをチェックし、問題箇所があれば修正を働きかけます。
長時間労働の慢性化や有給休暇の未消化、残業代の未払いなど、将来的に労働者から提訴されかねない訴訟リスクを抱えないよう、会社の中で隠れている法的な問題をあぶり出して解消させることも、予防法務の一環となります。
さらに、営業スタッフが違法性のある営業活動をしたり、開発部門が他社の知的財産権を侵害したりしないよう、従業員に向けて適切なコンプライアンス教育を行うことで、違法行為の芽を摘み、会社の信頼を失墜させて業績を悪化させることのないように、随時働きかけていきます。
万が一、企業の不祥事が発覚した際に、記者会見を開いて代表取締役などの責任者が説明を行うことがあります。この際に、余計なことを口走ったり、言うべきことを言わなかったりすることで、さらなる企業の信頼失墜に繋がる場合があります。よって、記者会見の場で適切な説明を行われるようサポートを行うのも予防法務の役割です。
日本国内の企業法務ではおおよそ1990年代以降、予防法務が注目されるようになっています。この頃には大手金融機関で不祥事や倒産が相次ぎ、「社会的に信用されていたはずの企業が、じつは法令をふみにじっていた」という事例が世の中に衝撃を与えていました。コンプライアンスという言葉が普及し始めたのも1990年代ごろからです。
<戦略法務>
臨床法務・予防法務は、いわばトラブルの芽を摘むリスク回避のための法務でしたが、戦略法務は、より積極的に法律を使って企業の利益向上に直接的な貢献を図ろうとすることを指します。
たとえば、M&A(企業の買収や合併、業務提携)を行うにあたっては、相手方に法的リスクが隠れていないかをリサーチするデューデリジェンス(適性評価手続き)において、専門家をサポートする役割を果たすことがあります。
また、新製品や新サービスを開発した際には、特許権や実用新案権、著作権などのライセンスを有効活用することで、権利を使用したい企業や個人からライセンス料を徴収することで、企業の収益化を提案するのも戦略法務の一環です。この場合、ライバル他社から安易な類似品が出るリスクを事前に防ぐ予防法務とも併せて行われることになります。
ビジネスがグローバル化して国境の障壁が低くなるにつれて、世界中から戦略法務を駆使した外資系企業が日本企業に影響を及ぼしてくるようになっていますので、やはり国内企業でも戦略法務の重要性が高まっているのです。
現代の企業法務の業務内容としては、予防法務が中心となる「契約・取引法務」「コンプライアンス業務」が、中心に据えられることが多いです。
また、株主総会や取締役会の運営、子会社の設立、資本金の減少、提案変更など、会社の組織運営に対して重要な関わりを行います。これらを組織法務(コーポレートガバナンス法務)と呼ぶことがあります。
さらに、万が一の法的紛争に対処する臨床法務として、交渉の場への出席や裁判に必要な証拠収集、書類作成にも携わります。
法務に求められるのは、法律知識もさることながら、それ以上に高いコミュニケーション能力が必須であることは間違いありません。法律知識はどんなに勉強しても弁護士などの専門家には敵いません。
それよりも、自社の利益を確保するために、自社にどのような事情や課題、リスクが存在するのかを把握し、そのために法律を基準としてどのように問題を解消していくかを探り、働きかけていく能力のほうが重要です。
ときには、営業部門や開発部門などと対立することもあります。法務部がコンプライアンスを徹底することで、新製品の開発が大幅に遅れたり、余分なコストがかかったり、契約が取れそうな大型案件が受注できなくなったりするおそれがあるからです。
そうした対立をできるだけ丸く収めるため、各部門と連携し、円滑なコミュニケーションを図りながら、合意形成を目指さなければなりません。それぞれの部署とともに、その会社の利益を向上させる目的で業務を進めていますので、本来は対立構造にないはずなのです。共通の目的を忘れず、丁寧に話し合って落としどころを見いだせば、合意形成を図れます。
ときには文書やメールで、ときには外国語でコミュニケーションを採る必要がありますので、ビジネスの場面に適した文書作成能力や語学力も備わっていれば、なお法務部で力を発揮できるでしょう。
法務部には、企業内弁護士も所属する専門性の高い部署だと思われており、実際にも法律的に高度な事務処理を求められる場面が多いです。ただ、専門性を高めるだけでなく、他の部署とも連携して、無用な対立を避けながら連携を深めるコミュニケーション能力も必須です。
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