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記事作成日(2020年7月8日)
現代の多様な働き方に合わせて、働く人が将来の展望を持てるようにという理由を背景に「働き方関連法」が次々に施行されることになりました。残業時間に関する時間外労働規制も、そんな働き方関連法のひとつです。
改正によって何が変わり、なにを対策するべきなのか、会社側で知っておくべき残業時間の法改正について解説していきます。
2019年4月1日より、法改正で残業時間の上限が法律で定められることになりました。実は、残業時間が法律によって規制されたのははじめてで、これまで上限が法律上明記されることはありませんでした。
従来からあったのは、大臣告知の上限、つまり行政指導の上限です。行政指導対象は月45時間、年360時間が上限となっていましたが、36協定は上限の対象外でした。36協定を結べば、事実上は残業時間がいくら延びても法的な罰則はなかったのです。
しかし、こうした法的規制の穴を背景に、長時間労働による問題が社会的な問題となります。過労死や過労による自殺など、深刻なケースによる訴訟がみられるようになりました。
さらに、法的にはアウトですが、いわゆるサービス残業といわれる、残業時間に対して正当な報酬を支払わない問題も起きており、訴訟にも発展しています。
こうした残業時間を巡る争いを背景に、規制により労働者の働く環境を整えようと、法改正で残業時間の規制が新たに追加されることになったのです。
まず労働時間の原則として、1日8時間、週40時間を労働時間(法定労働時間)の限度とすること、毎週少なくとも1回休日を設けることが法律で定められています。これ以上の労働時間が発生する場合は36協定を結ばなくてはなりません。
しかし、前述したように36協定を結んだあとの労働時間については労働時間の限度が決められておらず、実質上限がないというのが従来の法律でした。
法改正によって大きく変わったのが、法律で残業時間が規制されるようになったことです。2019年4月(中小企業は2020年4月)より、時間外労働は、原則月45時間、年360時間が上限になります。1日に換算すると、だいたい2時間くらいの残業時間に収めるよう規制が入りました。
ただし、臨時の特別な事情があれば、原則よりも労働時間を延長することはできます。ただし特別な場合でも、すべて以下の条件以内に収めなければならないため注意が必要です。
・年720時間以内の時間外労働
・休日労働を含む月の時間外労働100時間未満
・2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月いずれの時間外労働の平均も1月80時間以内(休日労働含む)
・時間外労働時間月45時間超になるのは年6ヶ月まで
これにより、36協定により実質見過ごされていた時間外労働時間の上限が、原則を超えた場合も設けられるようになりました。「時間外労働時間45時間超になるのは年6ヶ月まで」とあるように、時間外労働時間を上回るのはあくまで一時的なものでなければなりません。
残業時間の上限規制はこれまでにない取り組みですが、すべての企業で規制がはじまった訳ではありません。一部の企業、業種では適用除外や猶予が設けられています。
まず猶予期間が設けられているのは、中小企業全般です。上限規制自体はすでにはじまっていますが、2019年4月1日からの適用は大企業に限定されており、中小企業での規制が適用されるのは2020年4月1日からです。
そのほか、建設事業、医師、自動車運転業務、鹿児島県と沖縄県における砂糖製造業に関してはそれぞれ上限規制の猶予が設けられることになりました。
新技術・新商品などの研究開発業務に関しては、期限を設けず上限規制の法律適用外とされます。(ただし、労働安全衛生法により、一定の基準を超えた労働は医師の面接指導が罰則付きで行われる。)
2024年3月31日まで | 2024年4月1日から | |
---|---|---|
建設事業 | 上限規制なし | 災害の復旧・復興に関してのみ以下適用除外 ・月100時間未満 ・複数月平均80時間以内 |
自動車運転業務 | 上限規制なし | 以下の条件は適用除外 ・月100時間未満 ・複数月平均80時間以内 ・時間外労働月45時間超は6ヶ月まで 特別条項付き36協定の締結で時間外労働時間の上限年960時間に拡大 |
医師 | 上限規制なし | (今後規制予定) |
鹿児島県と沖縄県における砂糖製造業 | 以下の条件は適用除外 ・月100時間未満 ・複数月平均80時間以内 | 上限規制すべて適用 |
残業時間の現状が、「法改正に追いつかないかもしれない」とお悩みの企業もあるかと思います。しかし、どうにかして対策を打たないと、残業時間超過で罰則を受ける可能性があるので注意が必要です。
残業時間の規制に違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役、また30万円以下の罰金です。扱いとしては犯罪となり、厚生労働省に企業名を公表されます。
企業名が公表されるということは、取引先との契約や会社自体の信用にも影響があるということ。存続の危機に立たされる企業もあると予想されます。厳しめの罰則ですので、残業時間の上限内でいかに工夫ができるかがこれからは重要となるでしょう。
具体的にどういった対策があるのか、残業時間の上限規制を受け入れるための仕組み作りのヒントをいくつか紹介していきます。
残業時間に関連して、働き方関連法では勤怠管理についても適正化が求められるようになりました。みなし労働時間が認められていた管理職などに対しても、勤怠管理の義務化が適用されることになったのです。
こうした労働に関する法改正が度々行われますので、今後もほかの業務で適正化が求められるなど、変更される可能性があります。
法改正が行われるたびに見直しが必要な管理方法は止めて、法改正に柔軟に対応できるような方法に見直すべきです。さまざまな打刻に対応した勤怠管理システムの導入などが選択肢として挙げられます。
フレックスタイム制とは、ある期間の総労働時間をあらかじめ設定しておき、社員が自分の仕事量に合わせて働く時間をコントロールするものです。具体的には、コア時間といわれる必ず出勤する時間を定めて、残りの時間は自由に出退社ができるようにします。
フレックスタイム制のメリットは、忙しい時間は労働時間を延ばして、忙しくない時期は労働時間を短くして早く帰宅できることです。これにより、働き方改革が目指す、個人の柔軟な働き方を認め、残業時間を削減することができます。
これまでの法律ではフレックスタイム制は1ヶ月の範囲内で総労働時間を決めるようになっていましたが、3ヶ月に延長されました。従来のやり方以上に、フレックスタイム制がより柔軟に活用できるのではないでしょうか。
ただし、通常の1ヶ月を超えて清算期間を設けたフレックスタイム制を採用する場合は、労使協定、労働時間の月上限の設定が必要です。
労働時間の上限規制を超えないためには、休めるときに休む体制を整えておくことが大切です。たとえば、働き方関連法では有給休暇取得の義務化がはじまっています。
付与日から1年間以内に少なくとも5日、社員に有給休暇を取得させることが義務になりました。(※有給休暇が10日以上あるものなど対象者に限る)有給休暇の取得を推進して、総労働時間の削減を図るのも方法のひとつでしょう。
ほかにも、企業が独自に設けた、夏季休暇などの特別休暇を設定する方法があります。教育休暇やボランティア休暇などさまざまな設定が可能ですので、現状と照らし合わせながら、新たな特別休暇を設定することも良いでしょう。有給休暇と同じく、社員の総労働時間を減らすことができます。
働き方関連法では、これまで法規制や罰則がなかった残業時間について、明確に規制が設けられることになりました。大企業では2019年4月1日から、中小企業では2020年4月1日から規制がはじまります。(建設業など一部の業種は規制猶予や除外の対象です。)
新しい法律では、罰則だけでなく、厚生労働省により企業名が公表されることになりましたので、残業が上限を超えないように、企業は早急な対応が必要です。
勤怠管理システム導入による適正な管理、フレックスタイム制、有給休暇取得促進など、会社の状況に合わせて適切な手段を取り入れていきましょう。
記事提供元
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「HRソリューションラボ」
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