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厚生労働省は、昨年10月から今年5月にかけて4回にわたり「過労死等防止対策推進協議会」を開催、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直し案をまとめ、変更を盛り込んで閣議決定しました。
具体的な数値目標を掲げた過労死防止対策
平成27年7月に策定した「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、「過労死等防止対策推進法」(平成26年法律第100号)に基づき、約3年を目途に、大綱に基づく対策の推進状況等を踏まえて見直すこととなっています。
新しい大綱には、過労死を防止するため、労働行政機関等において、長時間労働の削減、過重労働による健康障害防止、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス不調の防止対策に、重点的に取り組むことが盛り込まれています。
注目ポイントは、「過労死等防止対策の数値目標」の数値目標を、具体的に明記したことです。
1. 週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする。
2. 2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。
3. 年次有給休暇の取得率70%以上。
4. メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合を80%以上。
5. 仕事上の不安、悩み又はストレスについて、相談先がある労働者の割合を90%以上。
6. ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上。
大きな社会問題となった過労死
過労死は、1980年代後半から注目が集まるようになり、大きな社会問題となっています。過労死した方の遺族や弁護士、学者らによって過労死を防止する立法を目指す団体が結成され、55万人の署名が集まりました。
また、国際連合経済社会理事会会議が設立した社会権規約委員会が、長時間労働を防止するための措置を日本政府に勧告するなど立法機運が高まり、過労死防止推進法が平成26年6月に可決、同年11月施行となりました。
この過労死防止推進法に基づき、過労死対策を効果的に推進する目的でつくられたのが「過労死等の防止のための対策に関する大綱」です。
過労死につながる長時間労働の現状
ところで、これだけ過労死の問題が大きな話題となっているにもかかわらず、総務省の「労働力調査」によると、月末1週間の就業時間が40時間以上の雇用者のうち、60時間以上の雇用者の割合は、平成29年は12.1%で依然として10%を越えています。
また、長時間労働の削減や休息の確保につながる勤務間インターバル制度については、「導入している」が1.4%、「導入を予定、検討している」が5.1%、「導入予定もなく、検討もしていない」が、なんと92.9%という数字が、厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」によって明らかになっています。
年次有給休暇取得率については、平成28年で49.4%(労働条件総合調査/厚生労働省)と、5割を下回る極めて低い水準となっています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「平成23年 年次有給休暇の取得に関する調査」では、正社員の16%が年次有給休暇を1年間で1日も取得していないなど、長時間労働の実態が浮き彫りになっています。
事業主に求められる過労死防止対策への協力
政府は、この新たな大綱に基づき、関係省庁と連携しながら、過労死ゼロを目指すとともに、国民が健康に働き続けることのできる充実した社会の実現を目指すということですが、事業主にも対策への協力「過労死等防止対策推進法第4条」が求められています。
また、労働契約法第5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定され、労働安全法第3条第1項においても、「事業者は、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」とあります。
事業主は、労働者を雇用する者としての責任を持ち、また、経営幹部も、先頭に立って労働者の健康を害するような働きすぎを防ぐための対策、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策、ハラスメントの予防・解決に向けた取組みを推進していくことが必要となります。
万が一過労死が発生した場合には、原因の究明、再発防止策の徹底を図ることも、事業者には強く求められるでしょう。
働きすぎで倒れたりうつ病になったりする人が減り、過労死のニュースが日本からなくなるよう、事業主それぞれが当事者意識を持って本気で取り組んでいかねばなりません。
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