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会計事務所業界でキャリアアップする転職のコツと成功例

公開日2018/08/26 更新日2018/11/20

売り手市場を作り出した業界事情

会計事務所業界が大きな変革期に直面しているということは,各方面から聞こえてくる声です。

ITの著しい発展により,仕事の内容が一昔前と大きく変わってきただけではなく,税理士の高齢化,会計事務所業界から他業界への人材流出,税理士試験受験者の減少傾向等,この業界を語る上では外せないトピックスが満載といった状況です。

今,会計事務所業界は「圧倒的な売り手市場」になっています。少子化問題もいよいよ深刻化し,会計事務所業界に限らず,全産業において人材採用の難易度は上がってきており,特に,新卒や第二新卒に代表される20代の人材採用は困難を極めている状況です。さらに,前述の会計事務所業界離れ,若年層の税理士試験受験者の減少が重なっています。つまり,会計事務所への転職は今が旬で,キャリアアップを叶えたい方には,絶好の機会が到来しています。ぜひ,皆様には,業界を取り巻く状況を正確に把握して,この機会をものにしていただければ幸いです。

税理士業界の現状 ― 高齢化,受験者数の減少,キャリアチェンジ

業界を取り巻く状況として押さえておくべき点は3 つあります。その中でまず,税理士の高齢化について触れたいと思います。10年ごとに日本税理士会連合会によって行われている,第6 回税理士実態調査では,驚くべき結果が記されています。その報告によると,基準日の平成26年1月1日現在,税理士の人数は7 万7,007人で,その年齢別内訳は図表1 のとおりでした。ここで注目すべきは,5 割以上の税理士が60 歳以上という事実です。一方,20 代に至っては0.6 %ですので,単純計算でも462 名。税理士の高齢化と若年層の税理士離れは明確な状況となっており,大半の会計事務所でも若手層が枯渇しています。

(図表1 第6回税理士実態調査による税理士の年齢内訳)

次に,税理士試験の受験者数減少も気になります。国税庁のWEBサイトによると,直近の平成29 年度の税理士試験受験者数が3 万2,974人,平成28年度が3 万5,589人,平成27年度が3万8,175人となっており,毎年約2,600人程度ずつ受験者が減少しています。そのうち,35歳以下に関しては,平成29年度が1 万5,856人,平成28年度1 万7,749人,平成27年度が1 万9,618人と,毎年約1,900 人弱ずつ減少しています(図表2 参照)。この数字を見ると,減少している受験者数の大半が35 歳以下の若年層だといえます。つまり,若手の受験者数減少が,そのまま若年層税理士の減少につながっているのです。

さらに,会計事務所から企業の経理職にキャリアチェンジする方も増加傾向にあります。会計事務所と比較すると,一般企業は各種手当や福利厚生が優れている場合も多く,就業環境や労働条件といった点を重視している方は,企業への道を検討される傾向が強くなっています。

会計事務所での実務経験は,一般企業の経理職でも十分に活かせる場合が多く,会計事務所業界からの人材流出につながっているわけです。しかしながら,会計事務所ならではの専門的な仕事も多くありますし,組織内での部分的な業務を好まない人にはそもそも企業での就業は向いていないこともあります。自身の特性や,希望する働き方,さらには,自分の人生観もよく考えながら最適な選択をしていただきたいと思います。

(図表2  税理士試験受験者数の推移)

好転する会計事務所業界の転職事情

前述のように,会計事務所業界は色々な意味で変革期を迎えており,業界の年齢ピラミッドも昔とは大きく変わってきました。そのため,旧来の会計事務所における人材採用活動のイメージをそのまま引きずってしまうと,後悔を残す結果になるリスクがあると思います。ここでは,会計事務所業界における人材採用活動の「昔」と「今」の相違点に関して説明します。

昔の採用 ― 若手が多く,採用要件がスタンダード化

旧来の会計事務所業界においては,採用ターゲット人材の多くが,「20 代~ 35 歳位まで」,「税理士試験の簿・財のどちらかは合格していてほしい」,「欲をいえば税法も1 科目は合格してくれているとありがたい」といった要件がスタンダード化していたように思います。もちろん,「会計事務所での実務経験3 年以上」とか,「税理士有資格者」といったような要件が伴う場合もありましたが,「若くてポテンシャルの高い人材を採用したい」という一言に,会計事務所側の要望をまとめることができると思います。若くしてポテンシャルのある人材は,数年間から十数年の間,事務所で修業を積んだ後,退職して自分の事務所を開業させていくことになります。そうして会計事務所はまた,若いポテンシャルのある人材を採用し,育て,巣立ちの時を迎えるというサイクルが定着していったのです。そのため,会計事務所では「人材はいずれ退職していくもので,退職の穴は若い人材を採用して埋めればよい。」といった価値観が作られていったのではないかと思います。かつては,税理士試験受験者数は増加傾向であった時もあるでしょうから,会計事務所がターゲットとする,「若手ポテンシャル人材」は湧水のように絶えることなく量産されていたわけですが,時代の流れの変化から,全く逆の方向に事態は展開していくことになります。

現在の採用 ― 若手を確保するために採用要件の緩和

現在の会計事務所業界では,旧来のような採用方針で人材募集を行ったとしても,ターゲットにしている層が集まりません。ですので,現在,人材採用に関しては,以下の2 つのトレンドが大きなポイントとなっています。

1 つ目は,「ターゲット人材の高齢化」です。かつて,「20代~35歳位まで」だったターゲット人材が,今は「35~45歳位」になってきています。つまり,若年層の税理士試験受験者が減少しているため,科目合格者を採用したい場合は35~45歳位まで年齢幅を広げないと,そもそも採用ターゲットが市場にいなくなってきているのです。今まで年齢が高くなってくると会計事務所へのキャリアチェンジが難しかったのですが,30歳を過ぎてから税理士を目指し始めたような方にもチャンスが広がってきたということがいえます。

もう1 つの大きなトレンドが,20代を採用するなら「日商簿記2 級程度から検討可能」,「銀行や証券といった金融出身者歓迎」という流れです。かつては,税理士試験に最低1 科目以上は合格していて欲しかった若手に対する要件が,大きく緩和された形です。繰り返しているとおり,20代の税理士科目合格者は激減しているので,若手を採用する場合,資格は日商簿記2 級程度から検討されるようになったのです。そして,財務諸表が読める,コミュニケーション能力が高い,基礎能力が高いといった理由からも,金融出身者に注目が集まっています。金融機関は新卒採用数も多いため,一定数の若者が転職希望をする傾向にあります。そこに会計事務所は目をつけ,積極的な採用活動を仕掛ける事務所も出てきたのです。

かつては,会計事務所業界は一定期間で若手は辞め,若手人材が入ってくるというサイクルの上に成り立っていましたが,そのサイクルはほぼ崩壊しています。そのため,採用した人材が出て行ってしまうと事務所にとっては致命傷です。また,時代の流れの中で,「労働条件に関する法令順守」が非常に大きな関心事となっています。つまり,ある程度,整った労働条件を提示できる会計事務所でなければ,人材を採用することはさらに困難になったといえます。人材を使い捨ての駒のように考えていた事務所は,確実に淘汰されていく時代になったのです

上記のような,トレンドの根本を押さえておくことで,「自分自身を市場価値以下で安売りしない」,「内定が出ている会計事務所に働く価値が本当にあるのか判断する」ことができます。

転職成功のために知っておきたい 5つのポイント

今まで述べてきましたような理由から,今の売り手市場における転職活動で,特に重要なのは自分の売り込み方よりも,「採用事務所側が本当によい事務所なのか?」「自分にマッチした事務所なのか?」といったことを選別する方法が重要です。ここでは主に,そのような観点から押さえておくべき5 つのポイントをお伝えします。

ポイント1:代表の経歴や人柄を確認する

トップの経歴や人柄が,その事務所の業務内容や風土等のほぼ全容を示しているといっても過言ではありません。出身地・学歴・職務経歴といった情報が事務所のホームページ等に公開されている場合も多いので,ぜひ,事前に確認してみてください。

ポイント2:業務内容と顧客層を確認する

会計事務所の業務は,「どのようなお客様に」,「どのようなサービスを提供しているのか」,という切り口で見ていくと,事務所をうまく分類していくことができます。たとえば,中小企業というよりは,創業間もないベンチャー企業を主な顧客として,税務会計のみならず,経営コンサルや株式公開準備の支援をしている事務所といった具合です。なぜ,そのような展開をしていくことに至ったかを紐解いていくと,前述の代表の経歴に関連してくる場合がほとんどです。

ポイント3:どのような方々が働いているのかを確認する

勤続年数,男女比,年齢構成,有資格者や科目合格者の人数,税理士試験勉強中の人がいるかどうか,会計事務所業界以外から転職してきた人がいるかどうかといった,現在,働いている人達の情報は非常に重要です。何も聞かずに入所してみたら,高齢者ばかりで,しかも税理士試験の勉強をしている人はゼロだった…。このような環境で,モチベーション高く働いていくことは難しいでしょう。自分と似たような状況の人が1 人でもいると,職場環境にもなじみやすいですし,互いに切磋琢磨できる同志が見つかる可能性も高まります。

ポイント4:どのような理念で経営されている事務所なのか確認する

理念のない組織は遅かれ早かれ衰退していきます。コンセプトや方向性がないため,場当たり的な経営になり,環境の変化についていけなくなるからです。残念ながら,「当事務所はこのような理念で経営をしています」と,宣言しながら経営されている事務所は多くありません。また,「人が辞めたら採ればいい。人が多くなり過ぎたら辞めて貰えばいい。」そのように安易に考えている所長は一定数いると思います。このような事務所には,人材の教育方針等もありません。ですので,大切なキャリアのさらなる一歩をスタートする上で,理念がしっかりとしていて,本気で経営をされている事務所で働くということは大変重要です。

ポイント5:雇用条件をしっかりと確認する

 一般企業と比較すると,会計事務所は雇用条件が劣る傾向が強いことは,先に述べたとおりです。その中でも,特に注意をすべき点をいくつかお伝えします。

試用期間中の雇用条件
→ 正社員になる前とその後で,給与等の条件が異なる場合があります。

各種保険の加入状況
→ 社会保険等に未加入の事務所もあります。最悪,雇用保険や労災保険にすら入れない事務所もあります。

残業手当の有無
→ 違法ですが,残業手当が支給されない事務所があります。みなし残業の場合,その内訳や超過した分の残業手当が別途支給されるのかどうかを確認したほうがよいでしょう。

土日出勤の有無
→ 完全週休2 日制といいながら,繁忙期には土日出勤を義務づけている事務所もあったりしますので,休日や有給休暇の取得に関しても確認しておいたほうがよいでしょう。

会計事務所業界未経験者(日商簿記 2級合格者)の転職成功事例

26歳・男性 <地方銀行から会計事務所へのキャリアチェンジ成功事例>

これまで,数え切れない数の転職支援を行ってきましたが,本稿で述べてきたことを象徴するような1 件をご紹介します。

Aさんは大学卒業後,地方銀行に新卒として就職して法人担当営業をされていました。地方銀行に入行した理由は,「地域を支える中小企業の社長の役に立ちたい」という思いからです。しかし,本当にお金が必要な会社には融資をせず,ある程度ゆとりのある会社に追加融資の提案をしたり,不要な金融商品を売り込むことをしたりするような仕事に感じることが多くなり,当初抱いていた希望を失いかけていました。そんなときに,業務上知り合った税理士と話をする機会があり,会計事務所を通しての経営者支援業務に興味を持ち始めました。いきなり税理士試験を目指すことはハードルが高く感じられたため,まずは日商簿記2 級を取得して転職相談にいらっしゃいました。数年前だったら未経験・簿記2 級でチャレンジできる会計事務所案件は非常に少なかったのですが,結果として13事務所の求人をご紹介することができました。その中で,Aさんが応募した事務所は3 つ。書類選考を通った3 つの事務所すべてで面接をし, 2 つの事務所で内定が出ました。提示された年収は,片方は350万円,もう一方は400万円だったのですが,最終的に入所を決定したのは年収が低いほうの事務所でした。決め手になったのは,所長の人柄と,面接時にお会いした所員の方々が魅力的だったことでした。目先の給与が低かったとしても,この所長の事務所はこれからもっと伸びていくだろうし,このような仲間となら共に成長していけると強く感じたとのことでした。

市場価値の高い存在になるには今がチャンス

何度も繰り返し述べてきたとおり,会計事務所業界は大きな転換期を迎えています。税理士の仕事は,ITやAIの発展で縮小される仕事の上位にランクインされることすらある状況です。しかし,見方を変えればそこにはブルーオーシャンが広がっているといえます。若い税理士試験受験者が激減し,税理士は高齢化の一途をたどっていますが,永遠に生き延びる人間がいないことを考えると,税理士数は一気に減少するフェーズが訪れると考えられます。記帳代行をはじめとした事務代行的な業務はITやAIに代替されるかもしれませんが,人間にしかできない業務領域は必ず残ると思われます。そして,税理士は激減するのかもしれませんが,国の税収をある側面から支えている方々であることを考えると,その仕事が消滅してしまうということは考えにくいです。つまり,一度,税理士の数は大幅に減少・縮小する可能性は高いものの,消滅することはないという予測が立てられるため,今の若手税理士は将来的に大変希少性の高い人材になり得るのではないかということです。激変のときにこそ,チャンスがきっとあると思います。今こそ,若手が新しい時代を見据えた税理士像を自ら作り出していくときなのではないでしょうか。今,苦労してこの業界を支えた次世代の若者達が,10年後や20年後に,業界の重鎮になって大成功している姿を願ってやみません。


執筆者プロフィール

株式会社MS-Japan 取締役 中園 隼人
早稲田大学大学院人間科学研究科卒。平成15年,MS-Japan入社。平成25年に取締役に就任。現在に至る。
公認会計士や税理士を中心に,会計人の転職支援,人材採用支援を15年以上にわたって一貫して行っている。なお,MS-Japanでは,毎年8月に税理士試験受験者を対象にした個別相談会を大々的に開催しており,多数の就職・転職成功者を輩出している。



株式会社MS-Japan 取締役 中園 隼人
早稲田大学大学院人間科学研究科卒。平成15年,MS-Japan入社。平成25年に取締役に就任。現在に至る。
公認会計士や税理士を中心に,会計人の転職支援,人材採用支援を15年以上にわたって一貫して行っている。なお,MS-Japanでは,毎年8月に税理士試験受験者を対象にした個別相談会を大々的に開催しており,多数の就職・転職成功者を輩出している。

記事提供:「会計人コース 9月号」

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